後記 王家の謝罪とリリの奮闘4
「リリ様、お美しい貴方にずっと恋焦がれている哀れな男にお慈悲を頂けますか?」
「いや、ぜひ私と。貴方に全てを捧げると誓いましょう」
「輝くような美しさですね、神々しいとはまさにことの事。地上の天使、どうぞお手を」
三人の令息が私の前で跪いてダンスに誘う。
この人達は公爵家の御令息だ。
挨拶の最初の方の方達だったからよく覚えてる。
シェイド様のグラセン公爵家が筆頭公爵家で、他にも三つの公爵家がある。
このうちの誰かが、令嬢シスターズのレナさんのお兄さんだな。
面の皮厚すぎない?
公爵令息のうしろにもワラワラと男の人がいて、本当に取り囲まれている。
長椅子の横に控えてくれているシェイド様が既に怒りのオーラを出していて、ちょっぴり嬉しい。
〝神の庭で、またお会いできましたら……″
そう言って断るのがダンスをお断りするマナーなんだって。
運命的にまた会えたら、次回は踊りましょうって意味らしい。
次回もその次も、私の踊りたい人は一人しかいないのに。
——だから私は、頑張るのだ!
籠からシェイド様ベアを取り出して抱きしめる。
琥珀色のおめめのふわふわの黒いシェイド様ベア。すっごく恥ずかしいけど小道具と割り切るのだ!!小道具!これは小道具!!
————「お誘い、ありがとうございます……けれど私、事件のせいでグラセン公爵様以外の殿方が……怖くなってしまって……」
————「グラセン公爵様でないと、だめなんです……ごめんなさい」
くまちゃんをぎゅっと抱きしめて、でも皆さんにちゃんとシェイド様ベアが見えるように!!小道具、大事!!
上目遣いで小首を傾げて、できるだけ可愛く見えるように!がんばれ私!
——————『シェイドさまぁ、他の子を見ないで?お膝に乗せて下さい……一緒にいてくれないと、嫌なの』
ピシャーーーーーーン!!とシェイド様と周りの令息達全員が固まった。
——————『ダメですか? さっきは結婚してくれるって言ってくださったのに……どうしたらシェイド様の婚約者になれますか?』
「……………………………くまが……婚や……?」
あ、だめだ石化が解けない。
『 シェイドさま?助けて? 』
両手を広げて抱っこをせがんでみる。
めっっっっっちゃ恥ずかしい!!!
が、が、頑張るのだ私!!!
助けて、の言葉に石化が解けたシェイド様が私を抱き上げて離れた長椅子に座り直してくれた。
令息達は全員まだ石化中。
クリストフさんは石化した令息を足で纏てる。
アラン君は何故か鼻血を吹き出して倒れてるし、ケイトさんはニッコニコでアラン君にハンカチを渡してる。
よし、マルっと見なかった事にしよう!
シェイド様は、わたしをお膝に抱いて座ったまま何かと葛藤している。
「シェイド、さま?」
「っまてまてまてまて!何言って…!?俺の妖精は小悪魔だったか!?」
たっぷりの間の後に放ったセリフに愛しさがこみあげる。
「嘘はいってないです……よ?」
普段は意地悪なのに私が甘えると慌てるこの人が好き。
意地悪なのに、優しいこの人が好き。
「耳まで真っ赤だぞ」
「シェイド様が意地悪言うからです」
「へぇ?キスしていいか?」
「みんな見てます」
「ほっとけ」
その後は、至る所にキスの嵐が降ってきて、髪を優しくすかれての甘々シェイド様が爆誕してしまった。
それは私がのぼせてダウンするまでずっと続けられて、気づいた時にはパーティーは終わっていた。
私たちの周りに衝立や布で目隠しがなされていたのでめちゃめちゃに恥ずかしかった。
◇◆◇
「はぁ、俺の妖精が可愛すぎてつらい。主に俺の理性が」
「リリ嬢の甘え勝ちですね。男の妄想を具現化した凄まじい攻撃でした。アランを含め数人が鼻血を出して卒倒しました。泡を吹いた者まで出る始末です。国家を揺るがす兵器になり得ます。対抗策がありません」
「リリが恥ずかしがって無かった事にする前に婚約するぞ」
「こんな求婚がこの世に存在するとは……」
「手に入るなら何でもいい。俺のもんだ」
公爵家に帰る途中、シェイド様の腕の中でお二人の会話を聞いたけど、恥ずかしすぎて、まだのぼせたふりをしておいたのは内緒だ。
◇◆◇
「リリあんた、やりたい放題やったわね」
「ゔっ…………思い出させないで!!恥ずかしいんだから!」
恒例になった公爵邸のお茶会会場のお庭は、モネミの花が色とりどりに咲いていて、可愛いらしい庭園になっている。
「まぁよかったじゃない。シェイド兄様、光の速さで婚約を認めさせてたわ。周りの貴族の悔しそうな顔、なんだかもう可哀想だったわよ」
「だって、婚約者ってどうやってなるのか分かんないし、お願いするしかないじゃん!シェイド様、あんなにかっこいいんだよ!?ぜったい誰かに取られちゃう!!」
「殿下、ハーブティーでございます。濃い目でお送りしております」
「分かってるわねケイト、ありがとう。助かるわ」
「あのクマの玩具。社交界で今大人気よ?悔しいけど私も買ったわ!!お気に入りよ!!!」
そう言ってみせてくれたのは金色の大きなテディベアで、お目目に薄いブルーのツルッとした宝石がはまっていて可愛らしい。
うんうん、クリストフさん色だねぇ。隊服色のリボンまでちゃんとある。
「シェイド様色のベアは絶対に制作禁止にしておけばよかった!!!」
「殿下、こちら血圧を下げる薬膳クッキーでございます」
「…………ケイトあなた、私の侍女に引き抜きたいわ」
「恐縮でございます。しかしながら私、公爵家に骨を埋める所存でございますれば」
やっぱり二人が仲よくてずるい。
テディベアが売れる事で私の資産が鰻登りに増えているなんて、この時は知りもしなかった。
「シェイド様!なんと第1章終わりました!ここまで読んでいただき、皆様ありがとうございました!!!!!!次回第二章、暇つぶしにどうぞ!シェイド様へのタジタジ攻撃フルパワーでいきます!!!」
「はぁっ!?」
「あそこまで恥ずかしい事するともう開き直りました!シェイド様はそのままでいいです!私が頑張るので!」
「団長、あきらめた方がよろしいかと」
「……………………」
「第2章、シェイド様への攻撃力が増します!!タジタジ地獄です!!」
「お、おぅ……?」




