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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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後記 王家の謝罪とリリの奮闘3

「お嬢様、お疲れ様でございました。今からは叙勲(じょくん)の儀でございますから、半刻ほど御休憩にいたしましょう」 


私専用の控室でケイトさんがお茶を入れて待っていてくれた。 

シェイド様は勲章の授与があるそうで、絶対ここからでるなと言いおいて、行ってしまった。(私もシェイド様が叙勲されてる所みたかったのに!)


「はい!もう緊張で喉カラカラです!」


「ご立派でしたよ。頑張ると仰ったのはこの事だったんですねぇ」

ケイトさんはニコニコだ。


「リリ!今日は来てくれてありがとう!!」


水色の髪のこの国のお姫様が天幕に飛び込んできて、笑ってしまう。


「エルのためだもん」


「とか言って、してやられたわ。あれでお父様、もうリリに手が出せなくなったもの。この後アスラン兄様を連れてもう退出なさるそうよ!」


「私、今までこういう事、言えなかったの。——自分の人生なのに」


「うん?」


「いつも周りが私の人生を決めていくって卑屈になっていたけど、それは違ったんだよ。————私が自分の意見をちゃんと主張してなかっただけってことにきづいて……」


「そう……頑張ったのね」


「足が震えちゃったけどね。これからもシェイド様に守られてばっかりなのも変わらないし」


「そんな事ないわ?これでシェイド兄様、ずいぶん動きやすくなったはずよ」 


「そうだといいな。シェイド様のために私ができることが無さすぎて、辛いもの。私は出来ないことばかりなのに、シェイド様は何でも簡単にこなしちゃうでしょ?スペックが違いすぎてへこむよ」


「たしかにシェイド兄様は何をやらせても上手くこなすわね。だからカイウス兄様はシェイド兄様に嫉妬したんだわ」


「嫉妬?」


「カイウス兄様もわりと何でもこなす様に見えて、あの人は努力型よ?人よりも何倍も努力してたの。けどどんなに努力しても天才肌のシェイド兄様には勉学も、剣術も、魔法も全然敵わなかったから……唯一圧勝できるはずの顔で、リリを落とせなかった事におかしくなってしまったんだわ」


「顔だけで好きになるわけじゃないけど……この世界でシェイド様以外にかっこいいと思った人はいないよ」


「最初から負け戦だったのよカイウス兄様は。今は憑き物が落ちた様よ。辺境はまだ魔獣も沢山でるから、余計な事はもう考える暇もないはずよ」


「うん、良かった」


「リリのおかげよ?今日はパーティーを楽しんで行ってよね。って言っても、それどころじゃないかもだけど。ここからは戦場だから」


「パーティーで戦うの?」


「主にシェイド兄様がね。王家が引いたことで、高位の貴族がリリ獲得に躍起になるはずだわ。大きなライバルが一つ減ったんですもの」


「うへぇ……パーティーデートを楽しみたいのに!」


「さあ、音楽がはじまったから私も行かなくちゃ。主催者は馬鹿みたいに忙しいのよ。もう後は堅苦しいのは無いから、リリもせいぜい楽しみなさい。約束の物、渡しておくわね」


大きな箱を、ケイトさんに渡して去っていった。あとで一人でじっくり見よう!今日のご褒美に!!



「リリ?入るぞ」


「シェイド様!!!」


「足、大丈夫か?ダンスは無理しなくていいぞ」


「シェイド様と踊りたい。初めてのダンス」


「グッ……………………分かった。痛くなったらちゃんと言えよ」





◇◆◇





「シェイドさま、みんな、シェイドさまを見てます。シェイド様がかっこ良すぎるから……」


「っは!お前を見てんだよ、リリ」


「シェイド様がかっこいいのがバレたんじゃ……」


「…………ほら、ダンスに集中しろ。踊りたかったんだろ?頑なに俺を練習相手にしなかった理由は何だ?リリ」


「う゛っ!だって、初めてはシェイド様がいい、から……」


「…………誘導しといて自爆した……対俺の兵器の威力がすげぇ」


「意地悪言わないで下さい。ステップ、忘れちゃう……」


「はぁ。俺の妖精が俺を殺しにかかる」


「シェイド様はおしゃべりしてても余裕かもですけど!私は運動音痴なんです!」


それでも、シェイドさまのリードが柔らかくて優しくて、いつもより断然踊りやすい。

相手が違うだけで、こんなにも踊りやすいなんて知らなかった。

琥珀色の瞳に見つめてもらえる時間が幸せすぎる。ダンス最高!!




◇◆◇





最高な時間はあっという間に終わって、シェイド様は近くの休憩スペースの長椅子に私を座らせると少し真剣なお顔になった。


「リリ、こっからは男どもがダンスを申し込みに押しかけるはずだ」


「押しかけるって、大袈裟な」


「言葉の通りだ」


「?断ってもいいんですよね?」


「いいけどな。婚約者がいない者は基本的には別の男とも踊るのは普通の事だから、しつこく誘って来るはずだ」


「…………」


「あまりにしつこければ俺が眠らせるから安心しろ、三日はおきねぇかもしれんが」


「リリ様、私どもも控えております故」


「クリストフさん!アラン君も!」


「団長が殺人者になりかねませんので、監視役です。睡眠魔法で眠らされた者を救護室に運ぶ係としてアランもすぐ後ろに控えております」


「わぁ、物騒!」


「高位の令息さえ何とかできれば、後は私とセカンドダンスを踊っていただければ、残りの時間は団長との自由時間でございますよ」


「クリストフさんと?」


「はい、私は子爵位ですので、一番にお誘いには行けないのですよ。他のご令嬢ならいざ知らず、リリ嬢は落ち人様ですから」


「二回踊れば、あとは俺が全部断れるからな。めんどくせぇ、やっぱ全員眠らせるか」


「団長が言うと、死を意味する言葉に聞こえますね……僕、死体を運ぶ事になるんでしょうか……」

青い顔をしたアラン君が恐怖に慄いている。


「ケイトさん、籠を貸してくれる?」


「はい、お嬢様、ここに」


「ありがとう。シェイド様!私、()()()()()()()!」




シェイド「よし!全部殺そう!」


アラン(さも良いこと思いついたみたいに……)



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