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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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お買い物3

「ほんじゃ、冬毛樹の黒と琥珀色の絹の刺繍糸でいいか?本当に黒でいいのか?銀にも白にも染められるぜ?」


「黒!!黒でお願いします!!」


「ふぉっふぉっふぉっ」


「まぁ、そっちがいいなら、いいけどよ。じゃあいくぜ」


商人さんの両手から小さな魔法陣が沢山出現し、その中から針や糸、ハサミなんかの道具まで出てきた。

銀の軌跡を残しながら彼の腕の中で沢山の道具が交差する。

魔法陣を使う魔法を初めて見て大興奮だ!

手はあんまり動かさないみたいだけれど、ちょっとだけお手玉をしてるみたいに見える。


あっという間にデザインしたとおりの可愛いテディ・ベアが出来上がっていく。ちょっぴりクタッとしていて、つぶらな瞳がキュートだ。


「わぁ!!すごい!!可愛い!!」


「あいよ!できたぜ!これ、いいな。色変えて、ウチでも置いていいか?」


「え?うん、いいですよ?でも、玩具としての文化があまり無いなら、置き物として特化した方が良いのかな?それならもっとしっかり綿を入れて、お座りできるようにして、目はイミテーションでもいいので宝石とかガラスとか使ってあげたらいいのかも」


「お、おぅ!」


「御店主殿、契約の話し合いは後日グラセン公爵家にてわたくしが承りますので」


「?」


契約?何が?


「お嬢様は何も心配なさらなくとも大丈夫でございますよ。じいやにお任せくださいまし」


「う、うん」


「チッ、しっかりしてやがんな!さっすが公爵家。ついでに俺の話し方の不敬も許してくれるとありがたいんだが」


「構いません、私はただの執事でございますし、主はそもそもそんな事気にする様なお方ではございませんので」


「ありがたい!じゃあな!嬢ちゃん、ありがとうよ!」


「はい!ありがとうございました!」


嬉しい!シェイド様ベア!推しのグッズを推しに買っていただく不敬は見なかった事にして頂きたい!!


「お嬢様、これに」


ケイトさんがつる籠を渡してくれたのでシェイド様ベアを中に入れてハンカチをかける。

あっぶない、シェイド様に見られたら恥ずか死ねる!!


その後は手芸屋さんで深い紺色のリボンもかった。

シェイド様ベアの首に結ぶ用。

家宝のボタンを通してリボン結びにする。


「坊ちゃまの隊服のお色ですねぇ」


とじいやがサラッと言うので、これもバレバレだった様だ。


じいやとケイトさんが始終ニコニコしているのでいたたまれない……。


沢山のお店がありすぎて、全部見てはいられないのでウィンドーショッピングをきめこむ。


最後のブースまで来て足が止まった。


「写真を織ってる…………??」


「おや、お嬢様の世界では 移糸(いし)をシャシンというのですか?」


「あ、うん。あれ、絵……なのかな実物みたいだね」


「肖像画ですから、絵の部類でしょうね。 移糸(いし)という魔法技術を使うのだそうですよ」


1人の職人が、目の前のご婦人の肖像画を描いて…………というより作り出している。

右手から多色の色の糸を、左手から無地のキャンパスを作る糸を魔法でだして、頭上で機織り機のように織っていく。

私のしってる機織り技術よりも、魔法技術の方がもっと目が細かいのか、出来上がりが写真そのもので感動する。


「わぁっ!!すっごいね!」


移糸(いし)の技術が高い職人だと、ここにいない人の肖像画も描ける様ですよ。行ってみましょうか。時間もまだありますし、冷やかしだけでも」


「あ、うん、じゃあ、ちょっとだけ」


「失礼いたします。お嬢様に少し見学させてもらってもよろしいでしょうか」


「あっ!はい、大丈夫ですよ。ちょうど今終わったばかりなので、出来上がりの作品を見学されますか?物がおおきいので、後日のお届けになるんです。ですので今日の作品はまだ全てここに並んでいるんです」


はにかんで笑う職人さんは糸目のタレ目さんで、私より年下な若い男の子だ。高校生くらいに見える。このタイプがこの世界でモテるのかどうかもはや私には判別がつかない。


「あの、ここにいない人も描けるって本当ですか?」


「えぇ、描けますよ。僕と、あ、今あっちで接客中の親方なら。やってみますか?記憶を読み取るのです。お嬢様のお手伝いも少し……必要なのですが、簡単な思い出し作業なだけですので!」


「ちゃんと……思い出せるのか、不安です」


「こちらからもお手伝い致しますので、大丈夫ですよ。怖かったり無理だと思ったらすぐに中止しましょう」


「それなら……やってみます」


商売上手だなぁ。

しっかりしてる。


「それではこちらへどうぞ。少なからずプライバシーに踏み込む形になりますので、簡易的ですが個室をよういしてありますので!あ、おつきの方一名までなら入れますよ。狭いので沢山はいらず、申し訳ないです」


「お嬢様、わたくしはここでお待ちしておりますわ。スラン様、お嬢様をよろしくお願い致します」


「承りました。さ、お嬢様、行ってみましょう」


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