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幕間 侍女の憂鬱
「なるべくあの上着から意識を離せ」
無茶な指示を耳元で囁きながらカイウス殿下は階下のご令嬢達の元へ降りていきました。
黙礼のみでお返事を返しながら、お嬢様のご様子を見ると、やっと少し緊張が解けたようでございました。
第二騎士団団長様の上着をすでに手に取ってらっしゃるのを見て慌ててお声がけを致しました。
殿下の命令を聞くつもりはございませんが、
これ以上好奇の目にお嬢様を晒すことも耐えられません。
貴族達からの質問攻めにあって、お嬢様が傷つくことは避けねばなりません。
もうしばらく頑張っていただかなければ。
「お嬢様、もうしばらくで結構ですのでそのままで。お寒いのでしたらショールをお持ちしますわ。汚してしまっては、いけませんのでしょう?」
「あ……そう……ですね…………」
あぁお可哀想なお嬢様。




