王家1
「姫様っ!!」
王城に着いて、疲れと安堵で気を失っ——って無いです。不貞寝しました。昼間から。
相当疲れていた様で、次の日の朝部屋に飛び込んできたテオ君の声で目が覚めた。
「テオ君!良かった、怒られたりしなかった!?」
テオ君を抱きしめながら体を確認する。
あざがないか、腫れてはいないか。
「はい、猊下が……魔王の様でした。シスター達への怒りで、僕の事は目にも入っていないご様子で……昨夜カイウス殿下に連れてきて頂きました!」
キラキラ王子、ちゃんと仕事した!良かった!
「姫様、カイウス殿下ができれば朝食をご一緒にと。僕もお手伝いしますので、準備しましょう!」
◇◆◇
テオ君が私の荷物を全て持ってきてくれたので、街で買った簡素な若草色のワンピースに着替えて、髪はねじって留めるだけのハーフアップにした。
その間にテオ君がデスクの引き出しに私の宝物達を入れて———鍵をかけてくれた。
もう大丈夫なはずなのに、その事にひどく安心した自分に動揺してしまう。
「わぁ、姫様、そのお召し物とても似合います!妖精姫です!」
大変な思いをさせたのにこちらを気遣ってくれる私の天使が今日も可愛い!!
「さぁ、行きましょう!今日だけは僕がエスコートしておいでって、カイウス殿下が言ってくれたんです!」
「ふふふ、じゃあ、手を繋いでいこうか」
気がきくな、キラキラ王子。
「はい!」
◇◆◇
豪華な絨毯の廊下を通って朝食会場に着くと、両開きの重厚な扉を左右に立った騎士が開けてくれた。
明るい広い部屋に大きな縦長テーブルがおいてある。奥の席に座っていたカイウス殿下がすぐに立ち上がって駆け寄って来てくれた。
「やぁ、リリちゃん、体調はどう?昨日は大変だったし、まだ疲れているだろうから朝から侍女を付けたかったんだけど……君の小さな騎士君が、しっかりした顔合わせの後にしてほしいって言うもんだからね」
テオ君がギュッと私の手をにぎったので、嬉しくなってしゃがんで抱きしめる。
「カイウス殿下、昨日は何も言わずに助けて頂いて、感謝申し上げます」
突然のリリちゃん呼びはスルーするけど、ちゃんとお礼をいいたい。
「気にしないで。君は我が国の宝なんだから」
「テオ君も、ごめんね。私のわがままで、また移動になってしまって。あなたは教会の子なのに」
「僕は姫様の従者です!どこにでも一緒にまいります!……それに、兄さんと同じ職場です!!!!」
手を繋いだままテオ君がぴょんぴょんするので笑ってしまった。
「いい侍従を持っているみたいだね」
「はい。あとでアラン君に挨拶にいこうね」
「さぁ、元気をつけるために朝ごはんにしようか」
食事の間は気を使ってか、昨日の話はしないでくれたので、久しぶりの暖かい朝食をゆっくり食べる事ができた。
カイウス殿下はニコニコ笑っていて捉えどころがない方だけれど、とても気遣ってくれているのが分かる。先回りして心地よさを提供しようとしてくれる。
「急だけど、この後父上との謁見があるからね。疲れているのにごめんね」
「突然来てしまったのはこちらですし、ちゃんとご挨拶したかったので大丈夫です」
匿う形で助けてもらって挨拶もできていないまま不貞寝してしまったので、気になっていた。
朝食後にそのまま謁見へと向かう。
テオ君は入れないということで部屋に戻っていてもらった。
重厚な扉が開かれて、王座のある大きな広間に到着すると足がすくんでしまう。
中には大勢人がいて、左右に分かれて頭を下げている。
座っているのは王陛下だけで、隣の皇后様も、一段下にいた王太子らしき方も皆んな頭を下げて微動だにしない。
「っつ…………!」
左右に分かれて頭を下げている人の中にシェイド様がいて、足が止まってしまった。
「大丈夫だよ、ここにいるのは王族と高位の貴族だけだから。僕につかまって。リラックス、リラックス」
「はい…………」
あぁ、会いたかったんだなあ私。会えただけで泣きそうだ。
テオ「虫くん達全部逃してきました!!カイウス殿下は虫苦手みたいです!どんどん離れていかれました!可愛いのに……」




