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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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買い出し1

「兄さんは教会の裏庭の外で待ってるはずです。教会の裏に聖都の孤児院があって、大人の通れない庭からの抜け道があるんです!姫様はお身体が細いですし、抜けられると思います!」


あれからすぐにアラン君に相談に行ってくれて、次の日に約束を取り付けてきてくれた。

テオ君、優秀。


聖衣に着替えた私はどこからどう見てもシスターだ。髪が隠れているので目立たない。


「この格好で街中歩いていて目立たない?」


「大丈夫だと思います。街にお使いに行ったりする者も多いですし、住み込みではなく、通いでお勤めする者も多くおりますので」


「なら良かった!じゃ、行こう!夕方までには帰らないとね、令嬢シスターズにバレちゃう!」


「はい、いきましょう!兄さんが待ってます!姫様はお可愛らしいので、目立たない様なるべく下を向いて僕についてきて下さい!」


あぁ!うちの天使が!!可愛い!!!


テオ君について後ろを歩いていくと、すぐに庭に出た。表の教会の中庭の様なしっかりとデザインされた庭園ではなく、必要最低限の手入れしかしてない林という感じだ。 


わざと人混みを避けた道を選んで来たのか、他の人にはほとんど会わずに来れた。


「この裏庭を抜けます。道が整備されてないので足元に気をつけてくださいね」


テオ君が小声で教えてくれる。


「うん、ありがとう」


ご丁寧にグレーのパンプスまで用意されていたから楽勝だ。令嬢シスターズはどこまでも私を同じ格好にしたいらしい。

めっちゃ助かります!!!ありがとう!!!

バーカ!!!


よしよし、負けてない。心が負けたら終わり。私は私の心を折らせない。


十五分ほどあるいて、(めっちゃ敷地広い)はぁはぁいい始めた頃、レンガ作りの(へい)に出た。


「ここです。この下に」


テオ君が指先して、茂みを掻き分けると、

子供が一人通れる程の穴が空いていて、ちょっと笑ってしまった。


テオ君がコンコンと、塀をノックすると、コンコンコンと返事が返ってきた。アラン君だ。


「さ、姫様、少し狭いですが向こうで兄さんが待ってます」


「う、うん」


屈んで向こう側を見ると、男の人の手が差し出されて、優しく私を引っ張ってくれた。


「今日はありがとう、アラン君、お休みの日にごめんね」


「姫様…………テオから事情は聞きました。こんなところを見られてもまずいので、お話は後ほど」


今日のアラン君は私服だ。 サッパリとした白いシャツに、動きやすそうなズボンの裾がブーツにインされていて、カジュアルなのに、帯剣はしっかりしている。


「うん、よろしくお願いします」


アラン君が用意してくれたシンプルな馬車にエスコートされると、タタっと後からテオ君が入ってきてドアを閉めた。


「姫様、まずは第一関門突破ですね!冒険みたいで楽しいです!」


「うん、そうだね!」


馬車はゆっくりと走り出す。御者席には誰も居なかったからアラン君が御者も兼ねてくれているみたい。

初めてこちらの世界でのお買い物にワクワクする。


「姫様、あの、本当によろしかったのですか、それ」


テオ君が私の手元の小さな布袋を見て言う。


「うん、いいんだよ。私の持っているものは、これだけだから」


公爵家から頂いた琥珀のネックレス。

ピアスと一緒に出立の日にばあやが付けてくれた。

ネックレスの方はとても豪華で、琥珀以外の宝石もずいぶん付いていた。

これなら幾分か生活費に出来そうだ。


琥珀だけで出来た花のピアスの方は、手がつけられそうもない。


まだまだ、失恋の傷は癒えてない。


「兄さんが何でも買ってくれると言っていました。兄さん、騎士団に入ってまだニ年ですが、騎士団はもともと高級取りなんですよ!心配いらないです」


「いいの。ちゃんと自分で払いたいの」


セフィロス様からのプレゼントで盗られていない物もちゃんとある。

私が一度セフィロス様の前で付けたものは直ぐに盗られてしまうから、まだ付けたことのない新しいプレゼントだ。

彼女らは自分の欲しいもので私を着飾る。

そして次の日にはなくなっているのだ。

入っては消えていくので、私のクローゼットは来た時よりもがらんとしている。


残っているものはこれから使うものだ。

手を付けるわけにはいかない。

直ぐに無くなるけれど。


特に不便は感じていないのでそのままにしている。

理由も分からずいきなり嫌われる時は九十パーセント以上が嫉妬だ。


レネさんのあの眼はそれを物語る。

本来自分が着るべきドレス。

身に纏うべきアクセサリー。

高級な化粧品達。

毎日贈られるプレゼント。

美しく彩られた豪華な食事。

エスコートされるべきなのは自分。

受け取るべきは、自分。


残りの二人も同じなのだろう。

三人とも、本来高位の貴族令嬢なのだから。

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