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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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VS シスターズ


「痛っ……!」


次の日から怒涛の嫌がらせラッシュが始まった。

初日の着替えボイコットは思わずやってしまったって感じだったけれど、気が弱くてセフィロス様には言えないと判断された後はエスカレートした。


ニ日目の朝食のサラダに石が入っていて、思いっきり噛んでしまった。 


「あらぁ、どうしました?」と言ってシスターズはニヤニヤしていた。


石ならまだ可愛いもんだけれど、毒とか虫とか入れられたら流石にこわいので、この日から運ばれてくる食事に手をつけなくなったら、五日目にしてとうとう運んですら来なくなった。


でも私、わりと食事抜くの慣れてるんだよね。親戚の家にいた頃は、お弁当なんて作ってもらえなかったし、当然お小遣いも無いわけで。

虐待を受けていたというより、皆んな私に関心が無かったと言った方が正しい気がする。目の前にいれば、特に意地悪する事なく食事が出された。親族一家と揃って食べる食事とバイト先の賄いが私の唯一の食事だった。


何度も猊下に相談しましょうと言うテオ君を宥めている。


「姫様、僕のご飯で申し訳ないですが、少しでも食べてください。

ここは教会ですので、一般の司祭やシスターの食事の戒律が厳しいんです。一人の量が決められていて……僕は大丈夫ですから、姫様に少しでも食べて欲しいです……」


初日にテオ君が食堂から自分の分を持ってきたので慌てて止めた。成長期、大事!ねばるテオ君を頑張って宥めて、最後はあーんでお口に入れて食べさせた。可愛かった。


グスッと鼻をすするテオ君にじ~んと胸が熱くなる。こんな小さい子に心配かけちゃだめだ!


セフィロス様の行動は把握しているらしく、彼が訪ねてくる時だけは事前に現れてテキパキとアラを探して潰していく。

リネン類の交換がなされたり、着替えの手伝いも。

夕ご飯前の着替えは初日の様な事はなく、キッチリやっていく。

セフィロス様にバレない様に一貫している。

逆にいない時は完全に放置が多い。


一人になれて、それはそれで楽なのでちょうど良いと思っている。


ここは教会だからか、部屋付きのメイドさんらしき人はいないので、全て彼女たちの修行に含まれるようだ。

毎日夕方に一度クリーニングに来る人扱いだ。何それちょうど良い!とさえ感じていたけれど、日に日にテオ君が憔悴していくのでそこだけは何とかしなくては。


「ねぇ、テオ君、私って自由に外出していいの?」


「えぇっと、猊下に申請すれば、護衛と馬車を用意くださると思うんですが、その場合、その……シスター達も同道なさるかと」


「うーん、それじゃあ意味がないんだよねぇ…………どうにか内緒で出られないかな?」


「ここから出る事は……何とか可能だと思いますが、街中は必ず護衛が必要です。僕一人じゃ、まだ…………」


「そっかー、必要なもの、お買い物できたら良かったんだけど……」


「お買い物ですか?でしたらいつでも商人を呼ぶ様、猊下から言われておりますよ!僕、お使い出来ます!」


うーん、欲しいのは下着と食料なんだよね。

下着類は、初日はあったのに、次の日には綺麗さっぱり無くなっていた。地味に刺さる嫌がらせだ。

今あるのは公爵家から持たせてもらった物数枚だけ。

あとは日持ちする食料が手に入ればいいんだけど。


「そうじゃなくて、テオ君とニ人で買いに行きたいの。前に美味しいお菓子屋さんにいってみたいねって言っていたでしょう?」


「あ!でしたら、兄さんに護衛を頼むのはどうでしょうか。兄さんのお休みの日に!それなら、安心です!」


アラン君の前で下着が買えるか分からないけれど、食料は買えるよね!良さそう!


「うん!お願い!」


「でしたら僕、兄さんの休憩時間に相談にいってまいりますね!」


あとはどうやって抜け出すか考えるだけだな。けどこれは案外楽そうだ。

クローゼットの中のドレスが何枚も減って、初日には無かったシスターのグレーの聖衣がかけられていた。ご丁寧に何着も。


〝あんたもこれを着なさいよ“と言う無言のメッセージだろうと思う。 


見つけた時は萎えたけど、ありがとう令嬢シスターズ!!

シスターに紛れ込めば、自由に出入りできるんじゃない!?


プレゼントで頂いたチョコレートをつまみながらワクワクと思案する。


セフィロス様からは毎日プレゼントが届く。セフィロス様の部下の方が届けてくださるので、私の元に届くには届くが、夕食の間や席をはずしている間になくなっている事が多い。


宝石やドレスに興味は無いから構わないけれど、お菓子だった時だけは死守してる。

我慢はできるけれど、お腹はすくんですよ!


公爵家から持ってきた大切なものはデスクの鍵のかかる引き出しにつめこんでいる。

下着も、アクセサリーも、化粧品も、シェイド様の隊服も……もう他のものを入れるスペースがない事が口惜しい。


鍵のかかるカチッとした音が私に安心をくれる。

けれどテオ君はその音を聞くといつも辛そうな顔をする。

それが一番つらい。

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