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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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シスターズ2


「はぁ~気持ちよかった!」


テオ君がとても不安そうな、探る様な目をしてくるので努めて明るい声を出す。

うちの天使にこんな顔させるなんて、令嬢シスターズ許すまじ。


クローゼット部屋に入り圧巻の量のドレスを吟味していく。


「一人で着られる物、なんかないかな?」


沢山のシルエットのドレスが並んでいるけれどこっちの世界にファスナーがないからか、せなかで紐を編み込んで縛る物が主流で、ほとんどが無理そう。


「テオくん、被って着られるゆったりしたタイプのドレスを一緒にさがしてくれる?ボタンタイプの」


「はい!」


小さな背で背伸びしながら探すテオくんが可愛い。


ほとんどがコルセットのいりそうな物ばかりで辟易する。

ばあやがコルセットなしで着せてくれた時は、綿素材のブラトップみたいなものを用意してくれたけど、今はそれもないしね。


「姫様、これなんてどうですか?」


フレルヴェで着たドレスに似たたっぷりのギャザーが胸元から入ったワンピースを見せてくれる。

薄い黄色地に銀のシルク刺繍が美しい。


今回のは長袖で、こちらもギャザーが入ってふんわりとした袖が可愛い。

背中は重ねスリットになっていて、スタンドカラーのリボンで結ぶだけなので何とかなりそうだ。


「良さそう!じゃあ着替えちゃうね!」


「僕は御髪を乾かす準備をしてますね!」


気が利きすぎてもはや私の七歳のイメージが崩壊しつつある。


後ろのリボンに四苦八苦したけれど、なんとか綺麗なリボンの形にできたと思う。動くたびにシュルシュルと衣擦れの音が心地よい。


あとは髪とお化粧だ!別に今までずっと一人でやってたからノーダメージ!!

ふははは。馬鹿め!!


魔毒が抜けてきていて本当に良かった。

ポジティブに物事を考えられるようになってきた。



私はちゃんと、いつもの私でいたい。




◇◆◇




セフィロス様が来る少し前にまた三人が来て、ニヤニヤクスクスしながら扉付近に控えている。


テオくんが何かいいたげだったのを目で制して止めた。


相手は高位貴族だ。庶民のテオくんがたてついていい相手じゃないことぐらい私でも分かる。 


ノックの音がして、令嬢シスターズが姿勢を正したのが分かった。

赤目のレネさんが中から扉を開けてくれた。


セフィロス様の前では仕事をしてくれるらしい。へ~。


「美しいあなたのエスコートを得る名誉をいただけますか?」


歯の浮く様なセリフだけど、セフィロス様がいうとサマになるから不思議だ。

落ち着いた声と大人の雰囲気のせいかな。

ヘーゼルの瞳が優しげに揺れる。


「ふふふ、はい、お願いします」


ここからはシスターズもテオくんもついてこない。セフィロス様とニ人だ。


一瞬後ろを振り返るとレネさんがすごい顔でこっちを睨んでいた。



◇◆◇




「本当にお可愛らしいですね。その、女神の……様です」


セフィロスさまが珍しくタジタジしているので笑ってしまう。

良かった。編み込みなんて自分じゃできないから、ガッツリ高い位置でポニーテールにしてゴム部分は自分の髪を巻きつけて隠しただけのお手軽ヘアーだけど、不敬じゃなかったみたい。


ちなみに化粧品一式が全くなかったので、ばあやが揃えてくれた物が役に立った。


「ふふ、セフィロス様らしくないですね。いつもはもっと、大人なのに」


「いぇ、自分の屋敷にあなたがいるということが、こんなにも——いえ、やめましょう。私の負けです」


夜の中庭で静かな時間が流れる。

中庭中央の泉は四角く切った石で囲われていて、ライトアップされている。


「お部屋はお気に召しましたか?何か、不便なことがあれば何でも私に……といいたいところですが……。

旅の時とは違って、私はここでは仕事がありますので、テオか、侍女に何なりとお申し付け下さい。いつも私がご一緒出来れば良いのですが、ままならないものですね」


「聖主のお仕事は、お忙しいのですか?その……お祈りとか?」


セフィロス様はにっこり笑う。

くしゃっと笑う時と、にっこり笑う時の笑顔の差がある人だ。にっこりの時、目が笑ってなくて少し怖い。笑顔を作りながら頭の中では別の事を考えている様な、台詞(せりふ)をかんがえている様な。


「聖主など、教会にとっては地位ばかり高い、ただのお飾りですよ。実際は書類仕事ばかりです」


「どこの教会でもセフィロス様が慕われているのが分かりました。セフィロス様はいい上司なのでしょうね」


セフィロス様はその質問には答えずにニコニコと私を見返す。

テーブルの周りにいくつもの小さなランタンが魔法でフワフワ浮いていて、仄明(ほのあ)かりが幻想的にエルフの様なお顔を照らす。

 

「私はいつ、王城へ行くんでしょうか」


不意に思い立って聞いてみる。

今度もにっこり笑って、返事を返してくれる。


「まずはお身体を休ませましょう。魔毒の熱が抜け切ったのが確実になるまでは」


「私はこの国で何をしたら良いのでしょう。何か、仕事や役目があるのですか?」


「まずは……そうですね、毎日私と夕食を共にして頂けますか?その、もしよろしければ」


破顔するセフィロス様が可愛らしい。この笑い方の時はまるで少年の様に見える。心から笑った顔。


「はい、よろしくお願いします。」

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