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旅路2

「テオと仲良くして頂けているようですね」


朝食会場にエスコートしてくれながらセフィロス様が言う。

お庭に入っていくけど、ピクニックでもするつもりかな?


「あ、はい……可愛いくて…………」


「あなたの方がお可愛らしいですよ。

それではテオを聖都に連れていきましょう。リリ様付きとして」


「えぇ!?それはテオ君に悪いです!」


「いえ、元よりテオは聖都に行きたがっておりましたので喜ぶとかと思いますよ」


「私は、嬉しいですけど…………」


「今日はテオが一日中跳ね回りそうです、さぁ着きましたよ」


小道を抜けると小さな湖があり、湖畔に銀色のガゼボが立っている。


「うわぁ……綺麗!」


朝の柔らかい日差しが湖面にあたり、キラキラと美しい。


繊細な彫刻でできたガゼボに入ると、テーブルセットにズラリと朝食がのっている。


「すごいっ!!」


スープとサラダ、パンやスコーン、フルーツまで綺麗にテーブルセットされていた。


神官さんが一人給仕についてくれている。


「はは、やはり魔毒の影響が抜けていく度に、明るいお心ばえがみえてきますね。

この分でしたら、魔毒が完全に抜けるのもすぐかと。

さぁ、お預けにされていたデートの続きをさせて頂いても?姫君」


「あまり甘やかさないでください。駄目な子になりそうです」


「これは失礼、甘やかしていたつもりはございませんよ、年甲斐もなく、浮かれているだけで」


セフィロス様は破顔する。

元々垂れ目の目が柔和に下がって、目元のほくろが涼やかだ。


教会のシスター達がセフィロス様が通るだけでキャアキャア言っているのを知っているもの。

エルフみたいな綺麗なお顔に金色の髪、ヘーゼルの瞳。

わりとガッチリした体をしているけどエルフ顔の人気は凄まじい。


男の人はエルフ、女の人は妖精とか、女神とかを連想させる顔や色が美しいとされているこの世界で、すごくモテるに違いない。


シェイド様の、男っぽいワイルドなお顔はウケないんだろうな。黒への忌避感も凄いし。


わかってないな、この世界。

あの桁違いのイケメンの価値が。





◇◆◇




おしゃれな朝食の後、客室で備え付けの聖書をパラパラとめくる。

文字ばかりかとおもっていたら、絵本かと思うぐらいカラーの挿絵が沢山あってあってびっくりした。


エルフの男神(おがみ)と天使の女神、妖精と精霊の子供の綺麗な絵が沢山ある。女神と妖精の女の人の髪は、私と同じ銀髪で描かれている。

二人の女性のお顔は親子だからかそっくりで、そして私もこの二人にそっくりだ。


逆に男神のエルフは金髪で描かれていて、繊細な女性の様なお顔立ちをしている。(精霊の男の子の方は体が蝶の様に小さくてお顔が判別できなかった)


女神様も妖精も私と同じ桃色の目をしている。特徴だけでいえば、本当に親子と言っても違和感がない。

私の気持ちはどうであれ。


こんなカラー絵本みたいな挿絵ばかりの聖書だからこそ、美醜への憧れも植え付けられていくのかもしれない。


第三の御子の挿絵だけは見当たらなかったけど、自分が絵になってのっているのも恥ずかしいので、良かったと思う。




コンコンとノックの音がして返事をすると、セフィロス様が入ってきた。

その後ろに、ほっぺたを上気させて、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら嬉しそうについてくるテオ君と————テオ君と同じ栗色の髪の若い騎士様が続く。


「リリ様、テオ上聖の件、本人の了解を得ました。見ての通り、喜んでお供すると」


「姫様っ!!ありがとうございます!!お優しい姫様のお付きになれるなんて夢みたいです!!僕、頑張ります!!」

ぴょんぴょんしながらテオ君が言う。


「ふふふ、私も嬉しい。これからもよろしくね。仲良くしてね??——セフィロス様、こちらのお方は??」


「紹介が遅れましたね。テオの兄です。第一騎士団の騎士をしております。現在リリ様の護衛団の中の一人ですよ」


「テオ君の、お兄さん?」


言われて見れば、テオ君と同じ栗色の髪とグリーンの瞳で雰囲気がにている。テオ君が大きくなったらこんな感じになるのかなと思うけれど、小さくて華奢なテオ君に比べて体格が良くガッチリしている。


十七歳くらいだろうか、高校生くらいに見える。

童顔なお顔に護衛団のガッチリした鎧がチグハグだ。


「アランと申します。第一騎士団の末席を頂いております。弟を取り立てて頂き、ありがとうございました。

年の離れた幼い弟をフレルヴェに残して上聖致しました故、その……寂しい思いばかりさせておりまして……」


「アランは王城の騎士団寮に入っております。聖都の聖教会は王城の眼と鼻の先ですので」


「兄さんと毎日会えます!!!!」

ヒートアップしたテオ君のぴょんぴょんが止まらない。


「て、テオ、落ち着け」


焦った顔のアランさんが飛び跳ねるテオ君を一生懸命押さえつけている。


「ふふふ、護衛団にテオ君のお兄さんがいたなんて。第一騎士団の方達になかなかお礼を言う機会がなく、気に掛かっておりました」


「そんな!あの、僕達こそ、このお役目は争奪戦で…………いゃ、あの……」


「兄さんは十九歳なんですよ!姫様とおんなじですね!!」


「て、テオっっ!」


「ふふ、年の離れたご兄弟なんですね?テオ君みたいな弟が私も欲しかったです」


「は、母が若くして嫁に行きまして。

僕とテオの間に二人おりましたが、家族が魔獣にやられ、僕とテオだけになったので、親代わりといいますか…………」


「そう……だったんですか。嫌なことを思い出させてしまって申し訳ないです」


「い、いえ!!そのような事は!!」


「アラン、テオを連れて下がれ。久しぶりに兄弟で過ごすといい。騎士団にはもうしばらくお前の時間を貰ってある」


「猊下!ありがとうございます!兄さん、行こう!!」


「しょ、承知しました。お心遣いに感謝致します」


アランさんは騎士の礼をとりながらそう言うと、まだぴょんぴょんはねるテオ君を抱っこして部屋を出て行った。


「ふふふ、テオ君、嬉しそうでしたね。私もテオ君とお別れしなくてすんで嬉しいです」


「年の近い男の方がよろしいですか?」


「え……?」


「いぇ、何でも。私もグラセン公の事をとやかく言えませんね」


何でここでシェイド様が出てくるの?


「ライバルは多そうです」


何の?

編み込みの髪から出た後れ毛を耳に掛けてくれる大人の色気たっぷりなセフィロス様に気圧されてしまう。


「ふふ、こちらの話です。どうかお気になさらず。それよりも明日聖都に入ろうと思います。体調は大丈夫ですか?」


「はい。よろしくお願いします……」


いよいよ明日、聖都に入る。

いつかあの人に、あえるだろうか。

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