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『くるくる廻る』 第二回ひなた短編文学賞 応募作品

 上の子に、贈り物をいただいた。

 大切な親友からもらったのは、青色を基調として、ピンクや黄色の入った可愛いチェックのシャツ風ワンピースだった。

 お気に入りの一枚はたくさん選ばれ、やがてそれは次の子へも引き継がれた。


 我が家のワンピースの着方は独特だ。

 ちょっとぶっかかな? という位から着始めて、ロングワンピース、ワンピース。

 普通ならば、ここでお下がりかさよならになるだろう。

 けれどもまだ続く。下にスカートを重ね着して、パニエ入りミニワンピのように。

 次いで、さらに短くなったらパンツインスカートやズボンを重ね着して、チュニック風に。

 そうしてお気に入りは着倒されていく。

 けれど、さすがにお別れの日はやってくる。

 背丈が伸び横幅も増えてしまえば、袖を通す事は叶わない。

 さようなら、しよう?

 大抵そう声をかけお別れをするけれど、その日は違っていた。

「嫌だ」

 次女はほっぺたを膨らませ、怒るというよりかは、寂しいような困ったようなそんな眉毛を額にくっつけていた。

「まだ着たい」

 そうは言われても。

 もうピチピチで次はふぁたー! と縫い目が裂けてしまうだろうその服を見やり、私は途方に暮れた。

 同じようには着せてあげられない。

「ワンピースじゃなくてもいい?」

 私は聞いた。

 了承を得て、家にあった布地とレースを組み合わせ、ついでとばかりに剥いで取っておいた自身のウェディングドレスのチュールを縫い合わせた。


 お披露目の日。

 ジャジャーンと私が自分の口でつけたBGMと共に子供に見せたのは、ギャザースカート。

 三段で、その中でもパッチワークのように数種の布が横長につぎはぎしてあった。色は白、クリームイエロー、ベージュ、そしてあのワンピースの青やピンク。

 チュールやレース、布を沢山使いドレープがたっぷりとしたそれは、いたく気に入ったらしく早速試着すると言ってもらえた。

 よほど嬉しかったらしく、部屋の中心に陣取りスカートを揺らす我が子。

 やがてくるくると回り出した。

 次女にとって、まだ少しだけ長めのスカートがヒラヒラと踊る。

 脳裏に、結婚した日のこと、子供たちが生まれた日のこと、長女が嬉しそうにワンピースを着ていた日々、お下がりを大事そうに受け取っていた次女の嬉しそうな笑顔が、次から次へと浮かぶ。


 いつか、さらに下の世代にも(めぐ)るだろうか。

 箪笥の奥で出会う、記憶や想いが。

 くるくる。

 くるくると。


 目を回し倒れ込んだ子を見、笑い合いながらそんなことを思った。

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