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日々つれづれなることを、書け! 2  作者: 三屋城 衣智子


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12/21

病院で待ち合うことの今昔

 病院へ行った。

 耳鼻咽喉科である。


 寝不足が祟った私は何とか自力で治そう、と思ったわけでもなく。

 ただ怠惰と、人間の慣れる習性によって、ひたすらおおよそ二ヶ月もの間、鼻と喉(何よりも喉からが酷かった)から出る黄色い痰だの膿だのを放っておいたのだった。


 痰壺と化した飲み終わりのコップを、家族に嫌な顔をされつつ使用し、片付ける日々。


 流石に不味いと思い、子どものついでに(自分の為に早急に行こう、と、本当は思った方がよい)病院にかかることにした。


 人気の病院に開院前に行ったのだが、そこにはすでに人がいた。

 それも綺麗に一列に、つかず離れすぎずちょうど良い距離感の等間隔、並んで立って待っている。

 その様子は、さながら整頓された店先の商品のようでもあり。


 中国の上海万博で、いやに間隔の狭い、というよりかはもうそれはほぼ密着(そうしないと間に割って入られるらしい)状態の列のただ中にいたのを思い出す。


 列一つとってみても、歴史が垣間見えるのは、人の面白いところだよなぁと思った。


 開院十五分前に自動ドアが開いた。


 するすると受付へと列は進み、順番は十二番目。

 一人頭五分とすると一時間は待つだろうか。

 受付に順番がわかるURLのQRコードの紙があったので、取ると、席につき読み込んだ。


 子どもは持ってきた本を読んでいる。

 その日は他にも予定を立てていた。

 学用品の返品と図書館への本の返却。


 私は手に持っていたスマホで、所要時間を検索した。

 ギリギリ間に合いそうだ。

 子どもにも意見を聞き、その隙間時間(待ち時間転用の末の時間、と言うべきか)を使って本を返すことにした。


 到着すると、一度待ちの番号確認をする。

 思ったより進みが早く、慌てて入口へとみんなで駆けた。

 が、生憎の閉館日。

 本当は借りたかった子が、がっかりした声と共に、気を取り直して「返却ボックスに入れよ?」と言った。


 その少し弾んだ声。

 もしかしたら、一度利用してみたかったのかもしれない。

 ボックスの口にむしゃむしゃと本を食べさせて、また順番を確認した。

 順番が差し迫っていた。


 とはいえ、超特急は危ないので、なるべく速やかに戻る。

 結果、なんとか順番には間に合い、待合室で待ったのち名前を呼ばれた。


 併設の薬局で薬を待っている間にふと思う。

 昔は、そんなことできなかったなと。

 一度外に行ってしまうと、自分の番まであと何人かなんてわかりようもなかった。

 それが当たり前だった。


 今は、病院の外に出ても、ネットのそういったシステムを利用している病院なら、わかる。

 なんなら、家に居ながらにして順番を取れたりもする。

 改めて、すごい時代になったんだなと思った。


 患者側も病院側もメリットがあると思う。

 普段の待合規模くらいがあれば、椅子などの設備やその費用を用意しなくとも各々が家でまったり別の場所で時間を潰してから、来てくれる。

 ので、待合が混雑したり立って待つなんて人が出ず、文句も出にくいだろう。

 それは、患者側も拘束時間が減るし、立って疲れるとかの弊害がないのと同義だろう。


 デメリットは、スマホやネット環境を持っている人でないと、その恩恵が受けられないくらいだろうか。

 他にもあるかもしれないけれど、今は思い浮かばない。


 というようなことを、中待合でふと昔を思い出して考えた次第。

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