何でも屋「NEXT」の日常
読んで損な物語ではない
【人探し?】
「…はい。実は友達が昨日から行方不明で…」
成程…と相槌を打ちながら少し天井にもたれ掛かる。
【…其れはどちらかと言えば、警察の管轄の気がするけど】
言われてみれば確かに態々こんな所に相談しに来なくても良い気はするが。
「もう相談はしました。でも、中々調査までは…」
まぁ警察も高校生1人に時間を割くほど暇じゃあ無いってわけか。
【ふうん…だってよ、部長。どうすんの?】
そう言ってザレゴトは俺に話し掛けてきた。
『…そうだな』
一言発して天井から降りる。
『友達の名前は?』
「ウツイ、です」
『…あぁ。1年4組所属の』
「は、はい」
そんな情報はマキアから入っていなかったが…まぁ昨日の事だし仕方は無いか。
【…しっかし相変わらず喫食悪いなぁお前】
『…何がだ』
どちらかと言えばお前の漢字の使い方の方が気色悪い気がするが
【だってお前全校生徒の名前所属好み嫌い瞳の色果てには好きな人
迄把握してんだろ?
それが喫食悪く無くて何がキショいんだよ】
…。
『其れを言ったらお前だって同じだろう。
前全校生徒の名前所属好み嫌い瞳の色、好きな人迄、全て把握してるじゃあ無いか』
【………………俺はまぁ、イケメンだからさ。免除されるんだ】
『…自分で言ってて悲しくならないのか…?』
【…】
『…』
…何も答えない。まるで屍のようだ。
「あ、あのー…」
その声を聞いて相談中だったことを思い出す。
『…済まない。見苦しい所を見せてしまった。
代わりと言っては何だがその依頼、引き受けよう』
「ほ、本当ですか!」
【ま、マジで?】
『なんでお前迄驚いてるんだ…。
第一、うちは何でも屋だ。やるに決まっているだろう』
そう、俺達は何でも屋だ。
通称「NEXT」。
数々の依頼を引き受けその多くをこなしてきた、ここら一体の中でも
かなり上位クラスの何でも屋。
…しかしその実態は単なる部活動だ。
初めはクラスの奴らがの依頼を引き受けていただけだったが
そのうち依頼された生徒から出た噂が一人旅をはじめ
最終的には数ある何でも屋の中でもトップクラスのエリート集団
という良く分からない肩書がついてしまった。
『…せめてもうちょっとマトモな噂だったらな…』
【…ん?なんか言ったか?】
『いや何にもー…ま、兎に角その依頼は引き受けよう。ただし…』
俺は頭の中の電卓を引っ張り出す。
5000+2200+400…
『合計で料金7600円…学生に払わせる値段としてはかなり高いが、払えるか?』
「…」
彼女はカバンから財布を取り出す。
「…」
覗き込む
「…か、身体でいいですか」
結局。
ツケにしてあげた。
「ありがとうございました!」
そう言って扉を閉める。
【…女の子だったからって優しくしやがって】
『…飽く迄ツケだ。それに…』
俺はスマホを覗く。
そしてマキアから届いていたメールを見る。
『…今回の依頼、もしかしたら数百万は稼げるぞ』
その日の夜。
【なんで夜なんだよ…】
『暗い静か眠ってる…偵察には一番いい環境だろ』
俺たちがついたのはとある廃トンネルだった。
【いやそりゃそうだけどさ…何かこう、怖いじゃん?】
『お前が幽霊が怖いとか言っても可愛くないからな』
【見透かすなよ俺の思考を…。で、目的地は何処にあるんだ?】
『ここから200m先にとある廃屋がある。
多分…というか確実にそこに《《居る》》』
【ふーん…しっかし何でそんなところに?】
『誘拐』
【へぇー誘拐…ちょっと待てお前今なんつった】
『《《誘拐》》だ。聞こえない様だったらもう一回言ってやるが』
【…やっぱ俺帰る】『ダメだ』
【死にたくないって】『大丈夫だ死なない』
【警察の仕事でしょ】『その警察が動かなかったんだ』
【態々俺たちがいかなくとも】『他の誰かがやってくれる…
何て、あの子の前でもう一度言えるか?』
【……あぁもう、分かったよっ行きゃあいいんだろ行きゃあ!】
『そう、それでいい』
俺は満足そうに頷いた。
暫くして。
【…ここか】
廃屋前。
元々子供が住んでいたのだろうか、外遊び用の小さなスコップが一つ転がっていた。
『んじゃ、よろしく』
【…もうここまで来たんだからやるしかないのはわかってんだけどさ…】
そう言いながら扉の前に立つ。
【はぁ…いくよ?〈噓尽き〉】
そしてスキルを発動させた。
【夜分遅くに失礼します。警察です。
令状が出ているので少しご同行願えますでしょうか】
返事はない。
しかし中からひそひそと話し声が聞こえる。
【…じゃ、返事も無いようなので…】
ニヒルに笑い、構える。
そして
【ぶち抜きますっ!】
ヤクザキック!
廃屋の扉は一瞬にして吹き飛んだ。
「な、なんだお前たち!」
【『警察』】
「__________っ!?」
【おっかしいな今さっき名乗ったはずだから
こんなに驚かれるのは割に合わないと思うが】
『ま、そこは話も聞けないような奴らだったってことで…取り敢えず殺りますか』
「お、お前ら!さっさとしろ!こいつら殺すぞ!」
「い、今行く!
ぅう?」
と、返事をしたところでその男の意識は崩れ落ちた。
「なっ…!?」
【先ずは1】
『次は2だ〈動くな〉』
ピタリと男が止まる。
「…!」
『そうだな次に〈手を挙げろ〉』
そしてスッと手を挙げた。
『ふむ…』
俺は廻りを見渡す。
そして近くにあったパイプを引き抜いた。
【...お前マジで?】
『マジだよ』
そう言ってパイプを構える。
男の顔にみるみる脂汗が滲んでいく。
『そして最後に、〈笑え〉』
男が笑う。
『じゃあな。もう二度と会うこたぁ無いだろうけど』
フルスイング。
手の中で骨が壊れる感覚があった。
『…さて』
【次は3だな】
「ひ、ひぃっ!」
男が走って逃げようとする。
【が、しかしその努力すら虚しく】
『男は頭から破裂してしまいましたとさ』
ザレゴトが指を鳴らす。
ばこーん。
爆発。
『これで』【全部か】
そこに残ったのは俺とザレゴト
と
『…んでこの子が例の少女か』
一人の眠り姫。だった。
【そうっぽいな】
『神っぽいな?』
【危険な聞き間違えはやめなさい…さて、】
ザレゴトは少女を抱きかかえる。
『あー!いっけないんだー!麗しき少女の身体に無断で触れたー!』
【お前マジでぶち殺してやろうか?】
『残念悪役はもう君しか残っていない。諦めて投降したまえ』
【なんで俺があっち陣営なんだよ】
『顔がイケメン』
【そのための布石だったのかよあの会話…】
そんな会話を続けながらも俺達は帰路…というか学校へと向かった
そんなものはない