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第2話 冒険者ギルド

 ばしぃん、とぼくのカードがカウンターに勢いよく叩き付けられる。


「レッドゴブリン30匹、レッドオーク18匹……その他、ゴブリン、オーク、オーガ多数……挙げ句に、サイクロプスジェネラル? それをあなたが倒したと言うのですか?」


「もちろん――」


「おいおいおいっ! 大戦果じゃねーか!」


 ぼくの弁明を遮り、酔っ払いのお兄さんがぼくの肩に手を回してきた。


 ……うぷぅ、酒臭いっ!


「まるで英雄だ! 英雄様! おーい、みんな来て見ろよ!」


 酔っ払いのお兄さんに呼ばれ、そのお仲間……に限らず、その周囲で酔いどれていた冒険者まで、わらわらとぼくとシルキーを囲うように集まってきた。


「リリンカちゃん、もう1回、もう1回、頼ま~♪」


「いいでしょう」


 リリンカと呼ばれた女の子は、こふぉん、と芝居がかかった仕草で咳を払い、


「レッドゴブリン30匹! レッドオーク18匹! その他、ゴブリン! オーク! オーガ多数! おまけにサイクロプスジェネラル!」


 おおっ! と周囲からどよめきが起こる。


「なんと! そのすべてをこの方がひとりで倒したと言うのです!」


 どよめきが、一瞬にして沈黙に置き換わる。

 そして、次の瞬間だった。

 沈黙は、建物を揺れ動かすほどの大爆笑に取って代わった。


「このちんちくりんが? 吹くにも限度があんぞ!」

「てめぇなんぞ! ゴブリン1匹が限界だろうが!」

「しかもサイクロプスジェネラルって……倒せるか、つーの!」


 ……くっ! 

 耳が、頬が、か~っと音を鳴らすように熱くなっていくのを感じる。

 鏡でもあれば恥ずかしいくらい真っ赤になっているに違いない。

 馬鹿にされるのは慣れているけど、それでも悔しいものは悔しいのだ。


「むぅ、フィルを馬鹿にして……」


「し、シルキーさん?」


 何かの愛玩動物のように頬を膨らませるシルキー。うん、ちょっと可愛いぞ。


「虚無を抱き、無為を紡ぎ、有為を成せ――」


 ……って和んでいる暇なんてない!

 シルキーが何やら不穏な呪文を唱え出した。


「な、何する気?」


「……無に帰す」


「だ、ダメっ!」


「何事ですか! 騒がしい!」


 一瞬、雷が落ちたのかと思った。

 ぼくの周りの冒険者も似たようなことを思ったのか、一瞬にして押し黙っている。


 カウンターの奥の階段から、ひとりの女性がつかつかと下りてくるのが見えた。

 金糸のような金髪をセミロングにまとめた美人さんだ。

 垂れ目がちで、優しそうなお姉さんなのだが、圧倒的な強者を思わせるピリピリとした威圧感に、垂れ目がちなところさえ、見るものを油断させる罠のように思えていくる。


 リリンカと同じ受付嬢の制服姿なのに貫禄が半端ない。

 歴戦の戦士と、新米くらい違うのではなかろうか? もちろん、リリンカが新米だ、


 お姉さんの怒気に当てられ、ひとり、またひとりと冒険者が席に戻っていく。

 母親に悪戯がばれ、怒られるのを待っている悪戯っ子みたいだ。


「何事ですか? リリンカ」


「ま、マスター……」


 ぼくに対しては強気だったあのリリンカさえ捨てられた子猫のようだ。


「こ、この子です! この子が冒険者カードを偽造して――」


「偽造?」


 リリンカが言う間に、マスターと呼ばれた女性の眼が、すぅ~っと細まる。

 なぜか、鞘から解き放たれる魔剣を見たような気がした。そして、解き放たれた魔剣が何の悪意も殺意もないまま、ぼくの首筋に、ただ突きつけられるような気さえした。


「冒険者カードは偽造などできませんよ?」


「で、ですが……」


「何か事情がありそうですね。いいでしょう、彼らをわたしの部屋に通してください」


 言うだけ言うと、マスターはぼくに背を向け、来た道を戻ろうとした。


「あ、あの……」


 なぜ、とぼく自身が思った。なぜ、引き留めたのか、と。


「あなたは?」


「これは失礼。この冒険者ギルドで代表……つまりマスターをやらせてもらっている、アドレア・ケルティと申します。以後、お見知りおきを……フィル君」


「は、はあ……」


 軽く会釈をしてアドレアさんは階段を上っていく。

 ……あ、あれ?


「なんでぼくの名前を?」


「マスターは登録してある冒険者の顔と指名を全部覚えているのよ」


 リリンカが不満そうに教えてくれた。


「全部? それは凄い」


「こっちに来て。今に化けの皮を剥がしてやるんだから!」


「化けの皮、って……」


 ぷぅ、とリリンカには悪いけど、ちょっと笑ってしまった。


「な、なによ!」


「ご、ごめんごめん、『化けの皮』ってここら辺じゃ、あまり聞かない言い回しだから」


「わ、悪かったわね! 田舎者で!」


 ふんっ、とそっぽを向くリリンカ。


「田舎者なの? じゃあ、ぼくと同じだね?」


「あんたと一緒にしないで。あたしの実家は、ず~っと東の方にあるんだから」


「へ~……東から来たんだ」


「……あんたね!」


 リリンカにきっと睨み付けられた。


「なれ合わないで、この犯罪者!」


 ……犯罪者じゃないんだけど。

 リリンカと喧嘩しても始まらないので、とりあえずここは謝っておいた。


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何卒、よろしくお願いします。

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