運命の出会い 1
===== ソフィア視点 =====
あぁ、どうしてたくさんの人達が死んだのかが分かった…。町の様子を見れば、当然。炎、そう…炎の魔法のせいだ。ありふれた単細胞な魔法。スライムはその一撃だけで人々の命を奪い取った。多くの人々の幸せを、簡単に奪い取っていった。ねえ…スライムは、あたしをもてあそんでるの?だいたい、あたしの家族を奪ったって、スライムにとってなんの意味もないし、なんの利益にもならないじゃない。
まあ、今はとりあえず、強くならないとね。そうして、いつかスライムを倒すんだ!そうだよ、それが一番いいじゃない!いつまでもくよくよしてないで、早く旅に出たほうが、ずっといい気がする!
さぁ、もうそろそろ行こう。あたしは覚悟を決めて空を見上げる。お世話になったこの町から離れるのは悲しい。けれど、だからといってずっとここにいたって何にもならない。新しい町へ旅立って、どんどん強くなるぞっ!!もう決めたから!「起死回生」だ。あたしの好きな言葉の意味を、今ここで実現させてやる!本当は、少し不安はあるんだけど…でもっ。そんなの気にしないもん…!
―っと。じゃあ、まずは隣町のホテルにでも行こう。そうしてあたしは、再び歩き出していった。
ふぅ… この町に来たのは初めて… ではないので、だいたいどこにどんな建物があるのかは分かる。慣れていて本当に良かった。ここの町はホテルが二つあるけど、うーん迷うなぁ… どっちにしよう。
「えーい、こっちにしよう。」
カンだ!…でも自分のカンを信じよう。(ふふふ… 適当に決めたんだけどね!) さーてと、じゃあ、こっちのホテルへ行きましょうか!
「……わお。」
ここ、ここがホテル!? す…凄い、なんというか…凄い。うん。そう、言葉にできないほど素晴らしい!!
「ずいぶんオシャレなホテルだな…」
そう言いつつも、とてもワクワクしている。と同時に、ドキドキしている。ホテルになんて泊まったことなんて無い。そう、一度たりとも。だから、一回は行ってみたかったんだよね。うわぁ、楽しみ!思わずスキップしながら入口へ入る。でもホテルでスキップしてたら、追い出されちゃうかもしれない。ちょっと興奮をおさえなくては。
「あの…ここのホテルの部屋、予約しても良いですか?」
「はい。ちょうど一部屋あいております。ちなみに、お一人様でよろしいでしょうか?」
「…あ、そうです、一人です。」
一人…か。あたしは、一人…。現実を見せつけられ、急に悲しくなる。あぁ、もう、お父さんとお母さんはいないんだもんね。会えないもんね。だめだ、だめっ。こんな所で泣いちゃだめ!がまんだ、がまんっ!何とか涙をこらえる。
「何時からお泊りになりますか?」
「あ!はいっ、5時からお願いします。」
「はい、承知しました。」
夜ご飯食べに行きたいから…ね。よし、ホテルの予約完了。今日の予定、カンペキ☆
ホテルに行く時間はまだまだだけど、それまでは町探索に行ったり、魔物を討伐しに行ったりしよう。まあ、一人ぼっちであまりやることないけど。でも別に寂しくない…いや、寂しい!強がってるだけで、実をいうと、めちゃくちゃ寂しいんだよね!!ん?ちょっと待って。あたし、このままだと、一生独りぼっちになっちゃうじゃん…!(ゾクッ)
―そんなかすかな不安を抱えながら、あたしはたくさんの人々が行き交う町中を歩んでいった。
===== レティシア視点 =====
「……きれいなスイレン。でも花言葉の一つにあるのは…滅亡。」
お母さんはこの花が好きだった。でもこの花言葉がある限り、ボクはこの花を嫌いにならなくてはならない。 "一人ぼっち"。 ボクはこの十年間ずっとそうだった。怖かった、だれとも親密な関係になりたくなかった。もう誰も、誰もボクの目の前で、大切な人を失いたくない。だからボクはホテルの目の前で立ち止まっていた。
「でも、ボクもそろそろ、進まなくてはいけないのかな?」
そう、時には誰かと仲良くなってみよう。ボクはそう思った。そして扉を開けようと…っと。ん?ちょっと待てよ。今、ボクの顔はフードで完全に隠されている。イコール、…ホテルの人に不審者だと勘違いされてしまう!どうしようか。
まあ、あまり顔を見せたくないし、いいか。このままでいこう。
ボクはもう一度決意して扉を開ける。そして…ボクの姿を見た瞬間、ホテルの人は固まった。
「あの、不審者ですか?」
「違います。」
…あ。違います、とか言っちゃった。余計怪しいではないか。
「あの、せめてお顔を見せてくれませんか?」
え。顔見せたくないんだけど。目が紅だってことがばれたらやばいし。
でも、しょうがない。ボクはフードを取り、素顔を見せる。
「えっ…あ、あ。」
ホテルの人は、また固まってしまった。ボクの紅い目は、そんなに怖いだろうか?
「ここのホテルの予約をしたいのですが、お部屋はあいてます?」
「あっ、ひっ、一部屋っ…あいてます。」
かなりドン引きされてしまった。でも、そんなことは気にしない。いつものことだ。
「それなら、そのお部屋の予約をします。」
「えー、おなまえは?」
「レティシア・ランドールと申します。午後五時頃からこちらに泊まりたいのですが。」
”レティシア・ランドール”は、嘘の名であり、本当の名。ボクは呪われた令嬢として噂が広がっているので、わざと裏名を使っているのだ。
「はい。かしこまりました。そういえば、お一人様でよろしいでしょうか。」
「はい、そうです。」
一人…か。昔は三人と言っていたな。
「それでは、五時頃、またお伺いします。」
「は…はい。」
それだけ言うと、ホテルの外に出た。
「運命…か。」
突然ボクはその言葉が思い浮かんだ。
「確信とは言えないけれど、何故か、運命に出会う気がする。」
気配と言えばいいのか、あるいはただの予感だけなのか。
それはボクにも分からない。だけど、本当に出会える気がした。
「…運命、ねぇ。けれど、なんだか…」
なんだか、楽しみだ。
楽しい…嗚呼、ボクにはまだ、その感情が残っていたようだ。
「ねぇ、”誰か”…。運命の、”誰か”。ボクはあなたに会ってみたいかも…しれない。」
ボクはそっと青空をあおいで、そうつぶやいたのだった。
< あとがき >
●ソフィア・セレスタイト
【主なスキル】
トルネード・スピン
【職業】
戦士 Lv20
【装備】
お父さんが使っていた剣
誕生日 : 5/30 ふたご座
身長 :150cm
血液型:AB型
本日は祝!! 初投稿につき連投です。春休み頑張るぞ~。