第二話
パーティー解散から1週間後、
元メンバーたちが次々に誘われていた役職に就いたことは情報屋を通さずに、各個人個人から耳にした。
そして俺は王都をひそかに離れようと出立の準備を行い、朝焼けを眺めながら王都から出ようとしていたが、元メンバーたちはどこからか情報を得ていたのか、門の前で全員揃って俺を待ち構えていた。
「水くせぇじゃないかユウ!何も言わずに出るつもりだっただろ!」
全員から秘密裏に姿を消そうとしていたのを非難されたが、全員が行き先も聞かず、また会おうとか、困ったときは相談してくれだの言葉をかけてくれた。
勝手なことをした俺に対してありがたい言葉だ。
「じゃあな、元気でやれよ」
最後にそれだけ告げ
「『召喚』ワイルドタイガー」
と一緒に旅をする召喚を覚えたときからの相棒を呼び出し、背に乗って駆け出していった。
「なぁ、なぁ!どこ行くんだよ」
と人語を話すワイルドタイガーのワーにまたがりながら適当な速度で出来た道を進んでいると話しかけられる。
「とりあえずは道に沿って隣の港町イシュカに行ってそこからはスレッジタートルの背に乗って東の大陸でも目指すかなぁ…東の大陸はまだ魔物が多いらしいし弟子を取って育てるのもありかなとは思ってるからな」
「ターちゃんの背中なら俺も乗れるじゃん!そのまま召喚しててくれよ、あっちは何もなくて暇なんだよ!」
あっちとは召喚されるまで待機している草原や火山、湖、森があると全員が言っていた場所だろう。
「あっちだったらターちゃんも含めてほかの連中もいるから食べ物を賭けながらゲームしてるんだけどさ、一人呼び出されちゃうとゲームが一旦中止になるんだよ、呼び出されてるのが長すぎるとゲームは強制的に終了してしまうからよー」
どこかつまらなそうに口を開くワーの背に揺られながら口を開く。
「お前ら勝手に自分の名前つけてると思えばそんな賭け事してたのかよ…育てた親の顔が見たいよ…」
「育てたのはユウだからお前が親だろ!赤ちゃんの状態からこんなにでかくなるまで面倒見たんだからさ!」
「それもそうか…お前ら4匹の食事ってどうしてるんだ?」
「自分たちの領地決めてあるからそこから狩ったり、採取してみんなで交換してるよー」
「領地って…お前ら領主とか王様かよ…」
「あっちじゃ俺たち結構偉いんだぜ!」
そう、俺はこのワイルドタイガー以外にもあと3匹の召喚獣を従えている。スレッジタートルのター、フレイムバードのフレイ、ライトニングドラゴンのライで合計4匹だ。
「まぁ、とりあえず港町着くまでよろしくな。ワー、俺はいったん寝る何かあったら起こしてくれ」
「相変わらず器用だよねユウは、手綱を握っていて鞍もつけてるけど僕の背中に乗りながら眠れるなんて」
「ほっとけ…んじゃお休み」
「はいはい、お休み」
「おーい、ユウ起きろ!!」
「んぁ?…何かあったのか?」
「隣町の検問まで来たぞ」
「お、もう着いたか流石にお前に乗って山とか起伏の激しい場所以外なら早いな…よいしょっと…」
ワーの背中から降りて『送還』ワイルドタイガーと唱えるとワーは「またねー」と陽気に告げて召喚前の世界に戻っていった。
ギルドランク証を見せて検問を抜け急ぐ旅でもないので、とりあえず宿を1週間とると、何か暇つぶしに冒険者ギルドまでやってきた。
ギルドの前まで来るとなぜかギルドと併設されている訓練場からキンキンと激しい剣劇音が聞こえてくる。
「おー…訓練が盛んなのかねぇ…」
そんなことをつぶやきながら、ギルドの扉を開き依頼がないか適当にクエスト掲示板を眺めるが特にめぼしい依頼はない。
暇だし昼間だが酒でも飲んで明日までのんびり過ごそう。
そう思ってギルドと併設されている酒場に移動して酒を飲み始めた。
しばらく酒やつまみを食べていると訓練場とギルドをつなぐ扉が開くと身長140センチぐらいの角の生えた小さな女の子が出てきた。涼しげな顔でのしのしと歩いているが一番目に付くの背中に背負った大きなバトルアックスだ。豊満な胸に男として目を奪われるが、ハッと思考をかき消した。
「ん?ありゃドワーフホーン族か、男性は身長2メートルを超える種族で女性は身長140センチぐらいの極端な種族だっけか…」
続けざまに2メートルを超えるドワーフホーン族の男が出てくると急いで受付に向かって何かを叫んでいた。
そして俺は酒場から運んだ酒を呷りながらギルド内の違和感に気づく。俺以外誰も冒険者がいないのである。
「また来る」と可愛らしい声で女の子と男がギルドを後にすると
ギルド職員が慌てて外に飛び出していき数分後、白衣を着た救護ギルドのメンバーが複数人やってきて訓練場に向かっていった。
「怪我人か…まぁ、訓練ならある程度、怪我もするしな」
特に気にすることもないと酒を飲み終えギルドを去り宿屋に向かった。宿屋に着くと特にすることもなかったので刀の手入れを行い気がついたら夜になっていたのでおとなしく眠りについた。