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第八話 アーヴィン戦①

 私を追放したパーティーのリーダー。 アーヴィン。


 二度と会うことはないと思っていた。いや、今もそう思っている。

 だってそうだろう。彼らは私を捨てたのだ、いまさら会いにくる理由が存在しない。


 その証拠に弓使いのリナと魔法使いのマリアは、心底嫌そうな顔で私をみている。

 それが当然の態度。ニヤニヤ笑っているアーヴィンの方の異常だ。


 「おいおい。そんな怖い顔するなよ。せっかく会いにきてやったのによぉ」


 アーヴィンはそう言って、私の方へ近づいてくる。


 私は右手を突き出し、それを制止した。

 アーヴィンは足を止める。


 「今さら私になんの用だ」


 「それがな。お前がパーティーを抜けてからいろいろ上手く回らなくてな。俺たちはお前の追放を後悔しているんだよ。だからまたパーティーに入れてやろうと思ってな」


 嘘だ。と、直感的に思った。

 私の知っている限り、ここ数年のアーヴィンは一度言ったことを取り消すような男ではない。特にSランクのパーティーになってからは。


 その証拠に、アーヴィンはニヤニヤ笑いを崩さない。


 「なんだよ。俺を疑っているのか? こんなに謝っているのに、ひどい男だな」


 アーヴィンはさも被害者のように、両手を挙げた。



 「あるじ様、この男は敵ですか? 敵ならばわたしが斬りますが」


 隣でムラサキがささやく。

 アーヴィンたちは敵なのか? パーティーを追放された以上、敵でも味方でもないはずだ。だがこの不穏な空気。私の勘がこいつらは敵だと認識しなければいけないと告げている。

 だがそれでも、一度は共にクエストをこなした仲である。殺し合いまではしたくはない。


 さらにこの場所は冒険者ギルドである。喧嘩程度はともかく、殺し合いをしたらギルドが黙っていない。

  

 「なんだ、美人を連れているじゃないか。そこそこ腕が立ちそうだな。どうだい、姉ちゃん。ギネスと一緒に俺のパーティーに入らないか?」


 リナとマリアは文句を言う。


 「ひどい! 私たちがいるのに、新しく女をパーティーに入れようなんて!」


 「そうそう。あんなブスいらないよ」


 「ハハハッ。悪い悪い。お前たちは最高の女だよ」



 迷う時間など必要ない。

 私の回答は始めから決まっていた。

 


 「アーヴィン。私はお前たちのパーティーに戻る気はない」



 神龍との戦いで、私の中の何かが変わっていた。

 


 戦えない男。



 そう言われ続けてきた。そしてそれをどうしようもなく、恥じて生きてきた。

 戦いたいと願った。だがそれはどんなに努力をしても不可能であった。


 だが神龍はこのスキルは勇者と同じものだと私に告げた。

 それが本当かどうかはわからない。勇者の伝説はあまりにも古い。

 

 だがそれでも。

 神龍は防御スキルしか使えずとも自分を肯定する道を与えてくれた。

 その時、私は救われたのだ。




 「お前たちのパーティーに戻ったら、私はこの能力を誇れなくなる」




 アーヴィンのニヤニヤ笑いが消える。残ったのは私への敵意。

 

 「戦えない男が誇りだと? さっぱり意味がわかねーな。だがそれはどうでもいい。お前が何を考えようが知ったことじゃない。なぜなら実はな、俺たちはお前を説得するためにきたのじゃないんだよ」


 そう言って、アーヴィンは剣を抜いた。シャリン、と音が響く。

 専用に作られた、幅の広い両刃の剣。アーヴィンはその剣で幾多のモンスターを殺してきた。


 

 「お前を仲間じゃなく、奴隷にするためにきたのだからな。光栄に思えよ。俺たちのために働けることを」


 

 まさかここで戦う気か?

 いくらSランク冒険者が優遇されているといっても限度がある。冒険者ギルド内で人を殺せば、冒険者を辞めるだけではすまない。


 それまでは黙ってみていた他の冒険者たちも騒ぎ出す。

 パーティーのいざこざならば口は出せない。だがギルド内での戦闘となったら話は別だ。


 その中の1人がアーヴィンに掴みかかろうとする。


 「おい! ここが冒険者ギルドの中だとわかっているのか!」


 「黙れ。雑魚が」


 アーヴィンが無造作に剣を振るう。

 その冒険者の胸に赤い線が引かれ、血が噴き出す。そしてゆっくりと仰向けに倒れていく。

 

 その姿にアーヴィンは視線さえ向けない。最初から私だけをみている。




 その瞬間、冒険者ギルドにいる全ての人間が悟った。



 もはやここは戦場だと。

 


 やらなければやられる。




 それでも私は叫ばずにはいられなかった。


 「なぜだ! アーヴィン!! 昔のお前はここまでする男じゃなかったはずだ!! 確かに傲慢なところもあったが、優しいところだってあったはずだ!!」


 

 「力だよ。ギネス」


 アーヴィンは剣を構える。


 「力さえがあればどんな行為も許される。雑魚には生きる権利さえない。それがSランクになってよくわかった! 戦えないお前には一生理解できないだろうがなぁ!」


 冒険者たちがアーヴィンを取り囲もうとする。



 「それを今から見せてやる。衝撃波スキル発動」



 アーヴィンの持った剣に光が集まっていく。太陽のような輝き。


 思わず冒険者たちの動きが止まる。

 

 リナとマリアが必死に防御のスキルを使おうとする。




 馬鹿な。




 そのスキルは。


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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