表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/72

第六十三話 エルフの反逆者 クラロア戦②

 その可能性は常に頭の片隅にあった。

 事件の黒幕にとって、もはやエルフの反逆者など用済みだ。口封じに殺してしまえば正体がばれる心配もない。

 証拠は残さない。合理的な判断ではある。

 身の毛がよだつほど冷酷であることを除けば。



 「使い捨てにされたのですね。自業自得です」


 言葉は辛らつだが、ムラサキの表情は曇っている。

 この反逆者たちは村を焼き払い500人を殺した。死んで当然ともいえる。

 それでも、この光景はあまりにも凄惨にすぎた。


 

 この事件の黒幕の狙いはどこにある?

 エルフの村を焼いたことで、冒険者たちの戦争が起きつつある。

 それが狙いか? それともその先に何かあるのか?


 これほどに大掛かりな陰謀である。

 黒幕に莫大な利益にならなければ実行するはずがない。


 利益か。

 推測ならはいくらでもできる。だが現時点ではあまりにも情報が足りない。

 情報を得ようにも、先手を打たれて消されてしまった。


 

 リノアは言葉も出ない様子だ。

 ぼうぜんと白骨の散らばる光景をながめている。



 「リノア。大丈夫か?」


 はっとしたように私の方をみる。


 「あ、ああ。少しショックを受けただけだ。クラロアは生きているのか? 私たちはこれからどうすればいい?」


 「そうだな。とりあえずこの場をもっと調べてみるか。期待はあまりできそうにないが」





 私たちはしばらくの間、証拠になりそうなものを探した。

 しかしやはりというべきか、発見することはできなかった。


 黒幕はここまで冷酷に証拠を消したのだ。

 この辺りも徹底的に荒らされているに違いない。



 「わかったことが1つだけある。反逆者たちを殺したのは、たった1人での行為だったのかもしれない」



 この場所にある全ての白骨は首が切断されていた。

 もちろん死んだ後にモンスターに食い荒らされたものもある。

 それを差し引いても、全ての白骨がというのは異常である。首だけが切断されて他は無傷という死体が多すぎる。



 「首の切断面もとてもきれいです。この殺人をした人間は相当な腕だと思われますね」


 ムラサキも同意する。

 近接職でさえ認めるほどの剣の腕。

 最大限に警戒しているはずの反逆者たちをあっさりと殺せるような戦闘能力。それはひょっとするSランク冒険者にも匹敵するかもしれない。

 

 これほどの腕ならば自らエルフの村を焼くのも簡単だったはず。

 それなのにわざわざエルフの反逆者を使うとは。黒幕の狙いはどこにあるのか。


 

 「それだけか!? もっとクラロアたちをそそのかした黒幕につながる情報はないのか! これでは誰もうかばれないじゃないか!」


 リノアが血を吐くように叫ぶ。



 「残念ながら、これだけだ」


 私たちは完全に後手を踏んでいる。

 これまでたどってきた手がかりがここで途絶えてしまった。


 どうすればいい。

 黒幕の思惑をこえなければ、正体は暴けない。



 「手詰まり……ということですね。次の手を考えなければ」


 「ムラサキ。何か考えはあるか?」


 「ありませんが」


 ムラサキは考える素振りさえみせない。

 まったくこいつは。やはり私自身が次の手を考え出さなければ。



 「くそっ!! 結局エルフは利用されたあげく捨てられただけか!! なんという外道! 黒幕は絶対に許さぬぞ!!」


 リノアが天に向かってほえる。


 反逆者たちの末路は悲惨だった。

 黒幕にだまされて同胞殺したあげく、最後には殺された。

 だが私は同情しない。彼らは越えてはいけない一線をこえていた。



 「落ち着け。たしか反逆者と親しいエルフがいるのだったな。もう一度、話を聞いてみようか」



 荒い息を吐きながら、リノアが答える。



 「もう何も情報は出てこんぞ。街のエルフが繰り返し尋問したからな。この場所を推測したことだけでも上出来だった」


 「それでも私が尋問すれば、新しいことがわかるかもしれない。可能性を1つ1つ潰していくべきだ。次の手を思いつくまでは」


 私は周囲をみわたす。


 「さしあたって、今はこの辺りを捜索しよう。生き残りがいる可能性もゼロではない。だから…」





 その時。



 視界の隅に黒いかたまりが映った。

 緑に囲まれた中で黒いかたまりは異常に目立つ。



 とっさにメイスに手を伸ばす。

 モンスターか!? いや、あんなモンスターは記憶にない。


 

 黒いかたまりが突進してくる。

 スキルも使わないのに速い。

 人の足がある。モンスターではなく、人か!?



 ムラサキが素早く態勢を整え、カタナを抜き打つ。

 


 その刃を黒いかたまりは身を低くしてかわす。

 紙一重。こんな芸当は人にしかできない。

 懐から剣を取り出す。薄暗い森の中でもキラリと輝く。


 ムラサキを通り越してその先へ突進する。

 標的はリノアか。防壁作成スキルが間に合わない。



 反逆者たちを殺した黒幕か。とっさにそう思った。

 事件を探る私たちも始末しにきたのか。



 しかし、違った。



 黒いかたまりがリノアを斬りつける。

 赤い血が飛び散る。


 斬られながらもリノアは大声で叫んだ。



 「クラロア!!!!」


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ