番外編 エルゼの独白②
事件が起こる前、わたしは村からほとんど出たことはなかった。
だから外の世界については知らないことばかり。
けど、そんな世間知らずなわたしでもわかる。
わたしを救ってくれた冒険者は変わった人たちだ。
ムラサキさんはずっとカタナの稽古をしている。その他のことは何しない。
一度だけ食事の支度を手伝ったのだけど、料理を真っ黒に焦がしてからは呼ばれなくなった。
なんというか、不器用な人なのだ。すごく美人なのにもったいないと思う。
黒い髪と目はとても珍しい。生まれてはじめてそんな人に出会った。
どこかの外国人らしいけど、聞いたことのない国の名前だった。ニホン……だっけ。
それとサムライという職業をしているみたいだ。
サムライが何なのかわたしには理解できない。わたしだけでなく冒険者ギルドの大人もわからないみたいだ。
ムラサキさんは一生懸命説明しようとするのだけれど、一人もついていけない。
その時は、ちょっと可哀そうだとは思う。
でも全体的にはとてもわかりやすい人だ。
こんなにわかりやすい大人とは会ったことがない。
怒りたいときに怒り、言いたいことを言う。他人に気を遣うことはない。
わたしの村の子供にもこんな素直な人はいなかった。
素直といっていいのかわからないが、他の言葉で表現できそうにない。
そんな強さがわたしにあったのなら。
きっともっと早く自分だけで立ち上がれていた。
わたしもムラサキさんの強さが欲しい。
もう一人のギネスさんだけど、この人はとてもわかりにくい人だ。
強いのか、弱いのか。優しいのか、優しくないのか。
その両方を持っているような気がする。不思議な人だ。
このわたしに対しても子供あつかいはしない。対等に接しようとしてくれる。
背が高くて、痩せているから頼りない印象がある。
でも本当はとても頼りになる人だ。
この人についていけば、何とかしてくれるという希望を持ってしまうほどに。
希望。
もう二度と手に入らないと思っていたもの。
それをギネスさんは与えてくれた。
もう一度だけ生きてみようと思わせてくれた。
事件の犯人はわたしと同じエルフらしい。
ギネスさんは気を使いながらそう話してくれた。
ショックを受けると考えたのだろう。
ギネスさんは話すとき、すごくつらそうだった。
でもわたしは大丈夫。
人間にもエルフにもよい人も悪い人もいる。
エルフに関してだけは、ギネスさんよりもくわしい。
それよりも、嬉しかったんだ。
わたしを心配してくれる人がまだいることが。
エルフの長老はわたしを夕食会に招待した。
そこで犯人を教えてくれるらしい。
迷わなかった。
行くことを決めた。弱いわたしでもできることがあるのだから。
ギネスさんたちが勇気をくれた。
おびえているだけでは、お母さんたちの仇は取れないんだ。
ああ、そうだ。
ギネスさんは壁を作ることしかできないそうだ。
こんなに頼りになる人なのに攻撃スキルを使えないなんて。
わたしみたいに戦えないなんて。
とても驚いた。
でも、同時に。
ほんの少しだけ、おかしかった。
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