表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/72

第五十六話 エルフの騎士リノア戦③

 ムラサキとリノアが同時に走り出す。

 それぞれのスキルによって加速していく。

 

 すでにリノアはかなりの負傷をしているはずだ。

 だが、まだ心は折れてはいない。

 その顔は闘志にあふれている。エルフの騎士を名乗るだけある。この程度の負傷では戦闘不能にはなってくれない。

 

 「エルフをなめるなぁ!!」


 リノアが叫ぶ。

 その姿には当初あった余裕など消えている。

 私たちを強敵だと認めたのだろう。



 「なめてなどいません。あなたが負けるのは、あなた自身が弱いからですよ」


 ムラサキがその言葉を斬って落とす。

 サムライには相手の事情など関係ない。ただ純粋に目の前の戦いに向き合っている。




 直線的に加速していたリノアがななめに進路を変える。

 ムラサキもそれに応じる。


 二人は並走する形になる。


 

 リノアはムラサキに抜刀スキルを打たせない気だ。

 あの抜刀スキルだけはSランク冒険者にすら通用する。サムライの魂そのもの。




 並走しながら、二人の間に激しい斬撃が交わされる。

 目に追うのすら難しい。それほどの速さ。

 一撃一撃にはそれほど力は込められていない。速さに特化された斬撃。



 この高速の戦い。

 私ではムラサキに加勢することはできない。

 

 防壁作成スキルを発動するには数秒かかる。

 その間に交わされる斬撃は数十回。とても状況に変化についていけない。

 下手に防壁をはると、かえってムラサキを追い詰めかねない。



 手が出せない。現状は純粋な一対一の勝負になっている。

 

 

 それでもわかる。

 

 この戦いはムラサキの勝ちだ。



 エルフと人間。どちらも同じようなスキルを発動している。

 しかし負傷に加えて、スキルの性能差がある。

 身体を強化するスキルでも人間のものの方が優れているのだ。


 わずかではある。わずかであるが、この高速の戦いでは致命的だ。




 少しずつリノアが押されていく。

 血が飛び散る。全てが軽傷であるが、積み重なれば戦闘不能になる。


 容赦なくムラサキがカタナを振るい続ける。

 ここで手を抜くムラサキではない。



 リノアはそれを防御するのが精一杯。

 押し込まれて、走りながらも後退していく。


 このまま押し切ればムラサキの勝ちだ。

 前衛職の接近戦ではスキルの性能差こそが勝敗を分ける。

 人間同士の戦いでも変わりはしない。それは戦いの常識。




 それをリノアも知っているはずだ。

 人間の街で暮らしているのだから。それでもなお、エルフのスキルにこだわっている。



 だからこそ、最初からこの戦いに負ける気はしなかった。

 私たちは低ランク冒険者ではない。

 Sランク冒険者にはおよばなくとも、それなりには強いのだ。手加減したエルフの騎士に負けるはずがない。




 「がぁ!!」


 リノアが力任せに剣を振った。捨て身の斬撃。

 その剣を受けたムラサキと距離ができる。

 


 「スキル発動!! 六花散華!!」

 


 リノアの体がぶれる。

 そして6体に分裂してムラサキに襲いかかる。

 

 エルフの幻術スキル。

 6体のうち5体が幻影。




 「…っ!」


 ムラサキの動きが止まる。

 戸惑っている。幻術系スキルに慣れていないのだ。




 私は叫ぶ。

 

 「ムラサキ!! 一番右が本物だ!」


 


 このエルフの幻影スキルには致命的な傷がある。

 あくまでも幻影を出しているだけなのだ。確かに幻影はリノアそのものである。

 今も傷ついたリノアを忠実に再現している。


 見た目では本体と幻影を分けるのは不可能。



 しかし逆にいえば、完璧なのは見た目だけ。



 本体が出す音や臭い、闘志までは再現されていないのだ。

 だから知識があれば見分けるのは簡単。対幻影スキルは知識量がものをいう。

 そのスキルが通用するのは、知識を持たない人間だけだ。


 人間の幻影スキルは高位になると、それらの要素さえ埋めようとする。

 音や臭いを再現する。その分、見分けるのが難しくなる。


 

 飽くなき戦いへの欲望。

 それこそが人間のスキルを進化させたのだ。




 一瞬の迷いもなかった。

 ムラサキが一番右のリノアに突撃する。

 

 もし私が間違っていたら、ムラサキは無防備で攻撃を受ける。

 それでもムラサキは迷わない。どこまでも私を信じている。



 リノアの顔が驚愕にゆがむ。

 5体の幻影が消える。

 

 ムラサキの動きが止まった分、スキルを宣言する時間はある。

 しかしどのエルフのスキルでも対処はできる。

 対処しながら削っていけば、いずれは勝てる。



 リノアの体は血にまみれている。

 私たちに削られ続けて大量の血を失っている。

 

 それに比べて私たちは無傷である。



 圧倒的に私たちの有利。

 


 もはや戦いをどう終わらせるかという局面だ。

 リノアの戦闘不能はもうすぐだ。そう確信する。




 しかし。

 追い詰められたエルフの騎士リノアは叫んだ。




 「加速スキル発動!!」


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ