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第五十四話 エルフの騎士リノア戦①

 エルフの騎士がこのタイミングで現れた。

 それがただの偶然のはずがない。

 監視されていた? それとも待ち伏せか?



 「お前、この事件の犯人を知っているな?」



 答えない。

 エルフの男はわずかに笑った、ようにみえた。

 剣を抜く。ためらいのない足取りで近づいてくる。



 戦う以外の選択肢はない。

 


 「おもしろいですね。エルフと戦うのははじめてです」


 ムラサキが薄く笑う。

 強敵と戦えることが嬉しいのだ。

 私としては、とても同意できるものではないが。

 


 私は周囲に目を向ける。敵は他にいない。

 たった一人。

 遠距離からの攻撃する敵の仲間もみえない。

 


 それはおかしい。

 待ち伏せならば大人数が囲むのが普通。

 それほど自分の強さに自信があるのか?



 「私の名はリノア。この街のエルフを守る騎士をしている」


 「なぜ名前を告げる?」


 

 名乗ることはリノアにとって損でしかないはずだ。

 確実に私たちを殺す気だろうか。それにしても取り逃がす危険もある。

 取り逃がしたら、自分がまっ先に狙われることになる。

  


 「エルフの騎士としての誇りだ。敵に敬意を。それが太古から続くのエルフの信条」


 「誇り? ふざけるなよ」


 私はメイスを突きつける。


 「村を焼いた犯人を隠すのが誇りか。ならば、そんな誇りなど今すぐ捨てた方がいい」


 「貴様、エルフを馬鹿にするか。許さぬぞ」


 

 村を焼かれたエルゼの顔を頭に浮かべる。

 本来ならば、この騎士のようなエルフたちがエルゼの味方をするべきなのだ。

 それを放置しておいて、誇りとは笑わせる。



 「エルフのことはエルフが決める。人間が口を出すな」


 「ならば今すぐ犯人を連れてこい。そうすればエルフの追求をやめてやる。誇りだと言うのなら、お前たちこそがエルゼの仇を取るべきだろう?」


 

 ほんの一瞬、リノアが痛みに耐えるような表情をした。

 リノア自身はこの事件に対して思うところがあるのかもしれない。

 

 騎士と名乗るからには、雇い主がいるはずだ。

 エルゼを放置したのは雇い主の意思なのか。



 「この街のエルフは少数。隙をみせれば他の民族に食われる。私たちには私たちの事情がある」


 「そんなこと知るか」


 

 もはや事件の影響はこの街全体を巻き込むほどに大きくなっている。

 ギルドの派閥同士が激突したら、街全体が戦場になってもおかしくはない。

 

 エルフたちは犯人を知っていながら、何もしなかった。

 解決能力がないのは明らかだ。今さらエルフの事情とやらを持ち出す資格はない。



 「お前らはただ単に臆病なだけだ。数が少ないことを言い訳にしているにすぎない」


 「貴様っ!」


 リノアの全身から怒りの感情が放たれる。

 剣が強く握られる。突撃の構えを取る。



 「警告はしたぞ!!」


 

 警告? 

 ああ、なるほど。

 警告しに私たちの前に現れたのか。



 甘いな。

 


 この場所に一人できたのも。

 不意打ちしなかったのも。

 この期におよんでも私たちを殺す気がないのも。


 エルフの誇りとやらか。



 甘すぎる。

 王に仕える騎士や兵士によくいるタイプだ。


 


 あるいはそう思ってしまうのは、私が冒険者だからだろうか。

 冒険者は手段を選ばない。不意打ちでもなんでもする。

 一番大事なのは結果だとわかっているからだ。


 正しいことをしている確信はある。

 だが、私も手段を選ぶつもりはない。

 そんな余裕など、どこにもないからだ。


 正しい手段で、正しいことする。

 なんという贅沢なことだろうか。


 

 「ムラサキ。リノアを殺すなよ。逃がすのもダメだ。犯人の情報を聞き出さなければならない」


 「あるじ様のいうことなら、何でも聞きますが……」


 ムラサキは不満そうだ。

 勝てるかどうかもわからないのだ。

 敵を殺さないというのは大きなかせになる。


 「手加減する能力があるんだろう? それをここで発揮してくれ」


 「能力はありますが、ここで使うかは。いや、やはりあるじ様に従いましょう。わたしもエルザさんの仇を打ちたい気持ちはありますから」


 


 「エルフの誇りを馬鹿にしたこと後悔せてやる!!」


 リノアが突撃してくる。

 スキルを使わないわりには、なかなかの速度。

 騎士の名乗るだけあって、体は鍛えられている。



 「スキル発動! 六花散華!」



 リノアの体全体がぶれる。

 次の瞬間にはリノアの体が増殖していた。全部で6つ。


 本当に体が分裂するはずもない。

 ならば幻覚系のスキルか。

 6つのうちの1つだけが本物だ。



 6体のリノアが別々の方向から攻撃してくる。



 「…っ!?」


 ムラサキが一歩下がる。

 どうやらムラサキは幻覚系のスキルになれていないらしい。


 どう戦えばよいのか迷っているのだ。



 私は、迷わない。

 冒険者としての長い経験があるから。



 「防壁スキル発動」



 

 高い金属音が響く。

 防壁に手ごたえがある。

 リノア本体をふせぐことに成功していた。

 


 「き、貴様!?」


 防壁の向こう側で、リノアが驚きの声を上げる。

 それと同時に5つの幻覚が消える。スキルが解除されたのだ。

 



 「やはりあんたは甘い。リノア」

 

 リノアは騎士と名乗るだけあって、その強さ自体は本物だ。

 Aランク冒険者くらいはあるかもしれない。



 だがエルフの誇りに囚われているかぎり、負ける気はしない。

 純粋な戦いでは誇りなど役に立たない

ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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