番外編 元パーティーの狂乱
アーヴィンは月に向かって大声をあげた。
「なんで上手くいかねぇんだよぉぉ!! 俺はSランク冒険者様だぞ!!!」
ギネスをパーティーから追放して以来、思い通りにならないことばかりだった。役立たずを切り捨てたはずが、逆に上手くいかないことばかり増えている。
戦えない男、ギネス。防壁をはるスキルしかない男、ギネス。
アーヴィンの後ろでこそこそ隠れているだけの男。
その臆病な男がいなくなったことで、パーティーが上手く戦えなくなるとは考えもしなかった。
防壁をはる人間がなくなったことで、パーティーの負傷が増えた。以前はギネスが防壁をはったおかげで、このパーティーには軽い負傷さえ滅多になかったのに。
それに今思えば、ギネスはパーティーの後ろからモンスターに対する的確な指示を出していた。
ギネスこそがこのパーティーの事実上の司令官だったのだ。
だが、そんなこと認められるか。
「クソっ! クソが!!」
アーヴィンは足元にあるゴブリンの死体に剣を突き立てた。周囲には弱いモンスターの死体が散らばっている。
これもギネスが逃げたことで、発生した事態だ。以前はギネスが夜通し防壁をはったおかげで、パーティーはぐっすり眠れた。
今となってはアーヴィン自身が雑魚モンスターと戦わなければならない。
「俺はSランク冒険者の王、勇者の称号を得る男だぞ! こんなところで止まってたまるか!!」
少し前、冒険者全員が参加する緊急クエストがあった。当然、アーヴィンたちにも参加の要請があった。
しかしアーヴィンはそれを無視した。
今さらドラゴンごときと戦っていられるか。
それが今になって問題になっているらしい。
実際にギルドからアーヴィンを責める使者が来た。
アーヴィンは怒りのあまりその使者を斬り捨てるところだった。
俺はSランク冒険者だぞ。何をしたって許されるはずだ。
Sランク冒険者に対して、冒険者ギルドごときが処分を下せるものか。
それもこれも冒険者ギルドとの交渉を任せていたギネスが逃げたからだ。
つまり
全部ギネスが悪い。
弓使いリナがアーヴィンの右手を握った。
「大丈夫だよ。アーヴィンは最強なんだから!」
魔法使いのマリアも左手を握る。
「そうそう。次はもっといい冒険者を仲間にしましょうよ!」
ゴブリンの死体に混じって、男が一人倒れていた。ギネスの代役に仲間にしたのだが、あまりに使えないのでアーヴィンが斬り捨てた。
モンスターにやられたと報告すれば、何も問題はない。
アーヴィンは少し考えて答えた。
「いや、ギネスをパーティーに連れ戻す」
その言葉に二人が驚く。
「あたしはあの役立たず男の顔は見たくない!」
「今さら戦えない男と仲間に戻るなんて嫌だよ!」
アーヴィンがニタリと笑う。
そして言った。
「ただし仲間じゃなく、奴隷として…だ」
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