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第三十七話 Sランク冒険者カーライル戦⑥

 カーライルが右手を上げる。そして下ろす。

 それと連動して巨大な槍が猛烈な勢いで振り下ろされる。


 私はその攻撃を腕にはった小さな防壁で受け止める。

 この衝撃。たった一撃で建物を破壊する威力がある。ましてや人間など生きていられるはずもない。

 

 

 次は右側から。防壁で受ける。

 左側から。防壁で受ける。

 連続する攻撃を防壁で受けていく。

 


 大丈夫だ。いける。

 中距離ならば、真槍スキルを防ぐことができる。

 

 確かに真槍スキルの破壊力はすさまじい。

 しかし槍が巨大な分、攻撃が荒い。ムラサキのカタナのような細かな技はない。ただ叩き潰すだけ。 

 これならば小さな防壁でも十分に受け止められる。

 

 


 カーライルが舌打ちする。

 真槍スキルが通用しないことを理解したのだろう。


 「てめぇ、うざいな。さっさと死ねよ」


 わずかに息が荒くなっている。それは私も同じだ。

 今の攻防でさらに魔力が消費され、体が重くなる。

 

 


 ムラサキは背後で静かに目を閉じている。

 腰を深く落とし、足を広げている。いつでも突撃できるような戦闘態勢。


 ムラサキがいるからこそ、カーライルはうかつに接近できないのだ。

 私一人だけならとっくに負けている。


 逆にムラサキ一人なら真槍スキルをかわしきれない。

 二人だからこそ、カーライルと戦えている。




 それでもこの戦いは有利とはいえない。

 エンマとの戦いのように、距離を完全に支配しているわけではないのだ。カーライルはいつでも距離を縮めることができる。

 ムラサキの存在は心理的な圧力を加えてるにすぎない。


 もしそれを超えてくるようであれば…。




 「お前ら低ランク冒険者が何をしようと無駄だ」


 カーライルが巨大な槍を水平に投げる。

 私はそれを腕の防壁で受け止める。



 その瞬間、カーライルが突撃する。スキルを使っていないのが信じられないほど、速い。

 カーライルの右の拳が握りめられる。

 


 狙いは……やはり接近戦か。心理的な圧力を簡単に超えてきた。

 カーライルは壊れている。しかしその強さは本物だ。


 スキルを使えば、私に立て直す時間が生まれる。

 だからスキルを使わず、生身の一撃で私を戦闘不能にする気だ。

 一瞬で勝負をつければ、すきも最小限ですむ。


 生身の攻撃力にも絶対の自信を持っている。

 そうでなければ、こんな方法はとれない 



 槍を防ぐために防壁を使ってしまった。

 突撃を止められない。




 カーライルの右の剛腕が私に向かう。

 私はとっさに手に持ったメイスでそれを受け止める。




 ぐうっ。この男は本当に人間か?



 

 私も冒険者のはしくれだ。かろうじてメイスを手から離さなかった。

 しかし、その衝撃で体ごと浮き上がる。

 カーライルに武器はいらない。素手で人間を殺せる。


 

 続けてカーライルの左の剛腕が握りしめられる。

 それをくらったら間違いなく死なないにしても戦闘不能にはなる。




 私はメイスから伝わる衝撃に逆らわなかった。体ごと後方にふっ飛ばされていく。

 あえてふっ飛ばされることで、カーライルとの距離を取る。

 

 メイスを持った手がしびれる。だが死ぬのに比べれば大したことはない。




 私は戦えない。それでもどうにかしようと、ずっとずっと努力はしてきた。

 結果は、ついに出なかった。今もなお戦えないままだ。


 だがその努力は完全に無駄にはならない。

 攻撃スキルが使えず、接近戦になったら負ける。だから敵と距離をとりたい。

 いつの間にか敵から距離を取るような技術が身についてきた。


 悪あがき? まったくその通り。

 それでも、その技術が生きる時はある。 

 

 

 私はふっ飛んだ先で態勢を立て直す。

 そしてカーライルに笑いかける。


 「どうした? これで終わりか? まだ生きているぞ」



 カーライルの顔が怒りで染まる。悪鬼のような表情。

 再び空中に巨大な槍が作られていく。

 

 さあ、次はどんな手でくる?




 中距離において、私ではカーライルの攻撃を完全に防ぎきることは不可能だ。

 一つ一つの攻撃は辛うじて防げても、少しずつ体力と精神力を削られていく。なにせ一撃でもくらったら終わりなのだ。


 それにくわえカーライルに打てる手が多すぎる。私は常に後手に回らざるを得ない。

 なによりも戦いがどれほど進むもうともカーライルは無傷。反撃を考えずに攻撃できる。


 それが私の宿命だった。


 それでも。

 

 耐えられるだけは耐えてやる。





 どれだけの時間がたったのだろう? 

 カーライルの攻撃を何度防いだのか? 数十回? それとも数百回?

  

 私の体はすでに限界に達していた。立っていることさえ苦しい状態。

 疲労が積み重なれば、思考力も落ちてくる。頭の中に霧がかかったように感じる。


 膨大だったはずの魔力も底をつきつつある。

 魔力がなくなれば人間は動けなくなる。

 


 カーライルの攻撃は一度もまともにくらってはいない。しかし何度か体をかすめた。

 それだけで、かなりのダメージを受ける。



 

 あと少し戦えば私は戦闘不能になるだろう。




 「てめぇ! なぜ死なない!!」

 


 だが、消耗しているのはカーライルも同じだった。

 荒い息をはいている。間違いなく消耗している。

 


 無傷ではある。私と比べて消耗の具合は少ないだろう。


 

 それでも、攻撃を受けている私にはわかる。

 カーライルの攻撃、その破壊力が少しづつ落ちているのを。

 魔力がなくなつつあるのはカーライルも同じだ。



 「しつこいのだけが取り柄でね」



 正直、ここまで耐えられるとは思わなかった。これが普通の戦いならとっくに殺されていた。

 カーライルへの怒りが。この街への責任が私をここまで支えたのだ。



 「真槍スキル発動!!」


 カーライルの全力の一撃が振り下ろされる。

 私は腕の防壁でそれを受け止める。



 しかし絶対無敵なはずの私の防壁に少しずつだが、ひびが入っていく。

 込める魔力が足りないのだ。私の魔力がなくなりつつある。

 

 

 「手こずらせやがって! 死ね!!」


 カーライルがさらに槍を押し込んくる。

 それとともに、私の防壁のひびが広がっていく。


 それに対して、私には打つ手が存在しない。

 このままではカーライルに殺されるだけだ。

  

 

 ここが私の限界であった。



 

 

 場違いに静かな声が響く。


 「加速スキル発動」


 

 あとは頼むぞ。ムラサキ。


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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