第二十四話 新ギルド長の就任
次の日、私とムラサキは冒険者ギルドにきていた。
ギルドに呼び出されたのだ。しかも所属する冒険者全員が。
それはあまりにも突然のことで、冒険者の都合などまるで考えられていない。
いつものギルド長グラウコのやり方とはとても思えない。
よほど緊急のことがあったのだろうか?
それにしても所属する冒険者はずいぶんと減ってしまった。
マルコの事件前の半分程度だ。
ギルド閉鎖の影響だろう。
クエストが受けられない以上、他の街に移ってしまうのは止められない。
だが私自身はこの街を出るつもりはない。
少なくともギルド閉鎖が終わるまで。私にはその責任があるはずだ。
誰かが部屋に入ってきた。
グラウコだと思ったが、違う。
太った老人だった。
歩くたびに腹が揺れる。その姿は不格好なおもちゃのようだ。
その後ろに、この街ではみたことがない冒険者たちを従えている。
グラウコの姿はみえない。
彼はこのギルドの責任者である。いないはずがないのだが。
太った老人は私たちの前に立つ。
その表情にはこちらを軽蔑しているような色が浮かんでいる。
そしていきなり言った。
「この街の冒険者は腐っておる」
周囲の冒険者がざわめく。
いきなり腐っているなどと言われたら、誰だって驚く。
驚きが消えれば、反感をおぼえるだろう。
その冒険者たちの様子に一切気にせず、老人は続ける。
「儂はこの街の冒険者を叩きなおすために中央からきた、シャブリエだ。しばらくの間、ギルド長をやってやる。こんな辺境まできてやったんだ、感謝しろ」
この場にいる全員が理解した。
完全にシャブリエはこの街の冒険者を見下している。
その後ろに立つ冒険者たちも同じような表情を浮かべている。
以前からギルドの中央部には辺境を見下すようなところがあった。
確かに大都市のギルドと比べれば、この街のギルドは規模も冒険者の質も全然違う。だからシャブリエの態度も理由がないわけではない。
だがしかし、いくらんでも露骨に見下しすぎである。
とても新しいギルド長として、私たちに協力を頼むような態度ではない。
シャブリエはニタリと笑う。
「まずはお前ら低ランク冒険者に罰を与える。ギルド閉鎖の間はクエストに報酬は払わん。後払いもなしだ。それにギルド閉鎖が終わった後も、永久に報酬を半分にしてやる」
今度こそ、この街の冒険者全員がシャブリエを敵だと認定した。
いきなり報酬半減を言い渡されて、協力しようする人間はこの世に存在しない。
私は思った。
シャブリエ人はこの街の冒険者を追い出そうとしているのか。
いや、それにしても方法が下手だ。
いきなり全員に喧嘩を売るようなことをしてどうするつもりだ。
それほどに私たちが下にみられているのか。
あるいはギルド中央部にはこの程度の人材しか残っていないのか。
この街の冒険者がシャブリエを問いただす。
「その浮いた金はどこへ行くのだ?」
「そんなことお前らには関係ない。低ランク冒険者など家畜と一緒だ。ましてこの街の冒険者は腐っている」
シャブリエは金の流れを私たちに明かすつもりはない。
最悪、自分たちのものにすることもあり得る。
他の街では、その罪を持って処刑されたギルド長もいる。
大都市のギルドでは、そういった噂は常に絶えない。
「腐っているのはこの街の冒険者ではなく、ギルドそのものでしょう?」
隣にいるムラサキがと言う。
それはカタナを振るうにも等しいほど、攻撃的な言葉。
空気が凍る。
もはやこの場は、シャブリエたちと私たちの対決の場と化していた。
シャブリエはムラサキではなく、私の方をみた。
「ああ、お前は知ってるぞ。ギネスだな。暗殺事件の報告書を読んだ。よくこの街のギルドの闇を暴いてくれた」
太った体を震わして笑う。
「その結果がギルドの崩壊とは馬鹿なことをしたな。さぞや後悔してるだろう。どうだ? 私の部下にならんか? お前だけは特別に報酬を増やしてやってもいい」
「断る」
考えるまでもなかった。
こんな奴の下についてたまるものか。
シャブリエの笑みが消える。
その細い眼には憎しみが宿っている。
「ではお前にも消えてもらおう。儂にはギルドを闇を払うという義務がある」
いくら正論を言おうとも、やろうとしてることはギルドの私物化である。
しかも方法が下手だ。何も考えてないようにさえ、私にはみえる。
確かにギルド中央部の威光はある。それにひれ伏す一般人もいるだろう。
それでも私たちは冒険者である。自由がある。
無条件にひれ伏すとは、向こうも思っていないはずだが。
私とシャブリエは無言のままにらみ合う。
無能といえども、その権力は私とは比べものにならない。
まさかこの場で戦うわけにもいくまい。ここにはいないグラウコのことも気になる。
どう動くべきか。
その時、女性の大声が響いた。
「あー。もうめんどくさいなぁ!!」
シャブリエの後ろから一人の女性が進み出てきた。
背が高く、腰に長い剣をさしてる。
薄く笑っているが、その笑みはどこかシャブリエと似ている。
私たちを見下すような笑い。
「さっさと戦って決着をつけようぜ。あれだろ? お前がこのギルドで最強なんだろ?」
「誰だ」
「あー、Aクラス冒険者のエンマという。こいつの護衛のリーダーやってる」
エンマは腰の剣を抜き放ち、私に突きつける。
「戦う。それで勝った方がこのギルドの支配者だ。な? 簡単でいいだろ?」
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