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第十九話 暗殺者マルク戦③

 接近戦。それでこの殺し合いは決着がつく。

 


 私たちは扉の前で背中合わせで立ち、マルコと冒険者たちを待ち受ける。

 罠の可能性も考えると、私たちの方からは動けない。



 だが、マルコの方も動かない。

 奇妙な静けさが戦場を支配する。荒い呼吸音だけが聞こえる。

 

 

 マルコの迷いが透けてみえるようだった。

 冒険者を何人も殺したとはいえ、あくまでマルコは暗殺者にすぎない。

 

 安全に敵を殺したい。その欲求が強いのだ。

 こうして接近戦をするのは、最も避けたかったはず。

 接近戦では自らも傷つく可能性がある。



 私たちを相手にして、無傷で勝とうなどとは虫がよすぎる。

 後悔しても、もう遅い。


 

 「どうした? マルコ。私たちを殺さないと、お前も破滅するんだろう?」


 「黙れぇ!! 僕に指図するなぁ!!」


 マルコがわめき散らす。

 策をことごとく跳ね返され、先ほどまでのさわやかな面影など消え去っている。

 

 ここにいるのは自らの欲に振り回された男の末路であった。



 これが新時代だと? 笑わせる。



 「殺す! 殺す!! お前らを殺してやる!!」


 「一応言っておくが、殺したいのはこちらも同じだ。だが、殺しはしない。生きたまま捕えて、持っている情報をはき出してもらう」



 この男は仲間である冒険者を暗殺した。

 加担している冒険者たちも、マルコにそそのかされたに違いない。


 断罪されるべきはお前の方だ。



 「やれ!! お前ら! こいつらを殺せば、金はいくらでも出す!!」


 マルコがついに接近戦の決断を下す。

 配下の冒険者たちがそれに応え、雄たけびを上げる。



 二十人の敵が前と後ろから突撃してくる。

 必死の表情。彼らも後がないことを理解している。

 


 「剛力スキル発動!!!」


 「俊足スキル発動!!!」


 「切れ味増加スキル発動!!!」


 

 それぞれが近接用のスキルを発動する。

 そのスキル自体は、それほど怖いものではない。


 だが数は力だ。低ランク冒険者でも、群れればドラゴンを倒せる。



 

 私とムラサキはそれを迎え撃つ。




 「防壁作成スキル発動!!!」


 私は迫りくる冒険者との間に防壁をはる。

 

 冒険者が剣や斧で防壁を防壁を叩くが、壊れるはずもない。

 私の防壁はSランク冒険者のアーヴィンでさえ壊すことができなかったのだ。



 背後ではムラサキが戦っている。

 

 ムラサキはスキルを使っていない。

 生身のまま、スキルを使っている冒険者たちと戦っている。


 戦闘技術そのものが低ランク冒険者よりも、圧倒的に優れているのだ。

 多人数と戦った経験も豊富。

 やはりムラサキは戦闘において、極めて頼りになる。低ランク冒険者では正面から戦う限り、相手にならない。


 一人、二人と冒険者たちが斬り倒されていく。


 


 ムラサキも理解しているのだ。

 

 敵はもう一手、策を隠し持っている。

 このまま乱戦になれば敵は勝てるかもしれないが、負けるかもしれない。

 マルコはそういう不確定な状況を嫌う。


 ムラサキはスキルを温存し、次の一手に備えている。

 何がきても対応できるように。




 だが、私は敵の一手の予想がすでに終わっている。




 私はメイスを握りしめ、何もない空間に振り下ろした。

 ムラサキと私が同時に死角になる場所だ。


 

 キンッと小さな金属の衝突音が響いた。

 この感触は、ナイフなどの小さな刃物と衝突。


 その何もないはずの空間から、ぼうぜんとしたマルコの声がする。


 「なぜ…わかった?」


 「悪くない策ではあったがな。お前は自分をみせすぎた」


 マルコの策はこうだ。

 味方の冒険者の雄たけびに紛れて、マルコはスキルを発動する。


 透明化スキル。

 暗殺者にふさわしいスキルだ。


 そして私たちが戦っている間に忍び寄り、攻撃するつもりだったのだろう。



 その策が読めたのは、マルコが暗殺にこだわりすぎたからだ。

 正面から戦うのを、徹底的に嫌う。

 

 ならばスキルもそれに特化したものを持っているだろうと予想される。



 そしてこの状況。

 足音を消すスキル。暗闇でも周囲がみえるようなるスキル

 暗殺に特化したスキルの中で、有効なものは少ない。


 それにマルコはギルド職員である。

 高度なスキルを持っているはずがない。


 さらにマルコは欲望に振り回されていても、頭自体は悪くない。

 これまでの行動から、理屈に合わないようなことはしない。いや、できない。



 となると、マルコの策は数パターンにまでしぼられる。

 攻撃する位置も、もっとも私たちが嫌がる場所を選ぶしかない。 

 

 私はそのパターンに合わせた対処法を全て試すつもりだった。

 今回はたまたま最初の対策が機能した。




 私はマルコに告げる。


 「もうお前の負けだ。もう諦めろ」


 姿はみえないが、マルコと至近距離でにらみあう。

 

 ギリッ、ギリッとメイスがきしむ。

 純粋な筋力は私の方が強いようだ。少しずつメイスが押し込まれていく。


 マルコがわめく。

 

 「まだだ! お前らにも決め手がないはずだ!! まだ僕たちの方が有利だ!!!」




 確かにみかけ上、マルコたちの方が有利だろう。

 策が駄目でも、このまま押し込めれば勝てると思っているに違いない。

 なにせ三方面から、攻撃しているのだ。



 だが、マルコは決定的な勘違いをしている。




 私はすでに、この戦いの決め手を用意してある。


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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