表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/72

番外編 冒険者ギルドの憂鬱

 二人の英雄が出て行った後、ギルド長グラウコは椅子に座ったまま動かなかった。

 そして、しばしの間考え込んだ。


 グラウコの秘書が飲み物を下げに部屋に入ってくる。

 

 「ギルド長、いかがいたしました?」


 「いやね、先ほどギネス君がアーヴィンたちの罪を自分も受けると言ったのだ。それに関して、冒険者ギルドも反省しなければならないことがあると思ってね」


 グラウコは盛大にため息をついた。


 「現在の冒険者ギルドの姿勢は、多少の罪があっても、それを上回る功績があれば許されるというものだ。そのおかげで一部の冒険者がやりたい放題をしている面がある。特にSランク冒険者が」


 それを聞いて、秘書が首を傾げる。


 「しかしそれはある程度は仕方がないのでは? 彼らは命がけでモンスター戦ってくれています」


 「君たち若者には信じられないだろう。だが儂のじいちゃんの頃には、モンスターが人間を絶滅させるという現実の脅威があった。しかし今は違う。人間が強くなり、モンスターの危険性は減った」


 グラウコは立ち上がり、部屋を歩き回る。


 「今もその時代の名残を冒険者ギルドは引きずっておる。そのせいで年がたつごとに冒険者ギルドの力が弱まり、Sランク冒険者の力が強くなっておる。このままではどうなるか…」


 「考えすぎではありませんか?」


 秘書にはいま一つ実感がないようだった。無理もない。この街は王国の辺境にある。

 だからモンスターは弱く、大抵のことは低ランク冒険者で何とかなる。そもそもSランク冒険者をみかけることも少ない。



 アーヴィンたちは他にSランク冒険者がいないからこそ、あれほどのやりたい放題ができたのだ。



 「そうだといいが。儂はどうにも嫌な予感がしてな」


 「仮にそういう危機があったとしても、あの二人なら何とかしてくれるのでは? 特にギネスさんはあの神龍と戦って生き残ったのですから」


 グラウコは苦笑しながら、その言葉を聞いた。

 

 自分とてギネス君を信じたいとは思っている。だがあのモンスターが神龍であったとは誰も証明できないのだ。

 証明されているのは、あの場に超強力なモンスターがいたということだけ。


 おとぎ話の存在である。生きている人間の中で神龍をみたものは存在しない。


 

 いずれにしろ信じようが信じまいが大差ない。ギルド長であるグラウコができるのは、報告書を上に送ることだけだ。後は上が判断するだろう。


 

 そもそもどれほど強かろうとも、たった二人でSランクの冒険者全員を止められるはずがない。

 一人一人が冒険者として最高の実力を持っているのだ。


 二人の将来には期待はするが、それは期待しすぎというものであろう。



 突然、秘書が笑い出す。


 「でも、あれですね。ププッ。ムラサキさんが土下座したのは驚きましたね。アハハッ」

 

 どうやら秘書は部屋の外で、会話を盗み聞きしていたらしい。

 褒められた行為ではない。


 だがグラウコ自身も笑いが止めらなくなっていた。


 「あれは驚いたな! この年になってまだ驚くことが残っていようとは! ニホンという国の流儀らしいぞ! まったく世界は広いわい」


 「ギネスさんは結婚したら奥さんの尻にしかれそうですね! ああでもムラサキさんはすっごい美人ですから、そっちの方が幸せかも!」


 グラウコは手振って否定する。

 

 「いやいやいや、それは違う! 君は結婚してないからわからないだろうが、ギネス君は結婚しても主導権を握るタイプだぞ!」


 「えー! そうなんすか!? 私はギネスさんは大人しいタイプだと感じましたけど?」


 

 憂鬱な雰囲気が消え去り、日が暮れるまでその話題で盛り上がり続けた。

 他人の恋愛をあれこれと推測するのは、いつだって楽しいものだ。

 



 それが冒険者ギルド中に広まるのも時間の問題であった。

ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ