第一話 結界師ギネス パーティーを追放される
「ギネス。お前さ、このパーティーから消えろよ」
このパーティーのリーダーであるアーヴィンはそう言い放った。
その一言で部屋の空気が凍りつく。
私は言い返さずにはいられなかった。
「なぜだ! 私たちは故郷で共に育ち、冒険者になる夢を追ってここまで来たんじゃないか! それなのに…」
「だってさぁ。壁を作る事しかできないじゃん、お前。戦えない奴はいらねーんだよ」
「ぐっ…」
確かに私はどんなに努力をしても、剣技も攻撃魔法も使えるようにならなかった。唯一憶えられたのは結界術である「防壁作成」スキルのみ。
だが戦えずとも、パーティーのサポート役として働いてきた。
私の防壁を突破できたモンスターはただの一匹もいなかった。
戦闘でも役に立ったはずだ。
それだけでなく冒険者ギルドとの交渉役や日々の雑用など、できることは何でもこなしてきた。それなのに…。
「だが私には冒険者ギルドで判定された膨大な魔力があるはずだ! それを使えばいつか…」
「いつだよ! そりゃ!!」
アーヴィンが持っていたグラスを床に叩きつける。
「もう臆病者と一緒にいるのはうんざりなんだよ! この役立たずが! 今まで面倒をみてきただけでありがたいと思え!!」
私はパーティーの仲間である弓使いリナと魔法使いマリアの方をみた。
この二人ならアーヴィンをなだめてくれるかもしれない。
だがその期待はあっけなく砕かれた。
「あたしも賛成。せっかくSランクになったのに、ギネスがいると他のパーティーにナメられちゃうじゃない」
「そーそー。いつもあれはダメ、これはダメとギャーギャーうるさいし」
そう言って二人はアーヴィンの手を握る。
ついに理解せざるを得なかった。
私はこのパーティー全員から嫌われている。
仲間だと思っていたのは、私だけ。
それが今ある現実だった。
「俺たちはこれからSランクのさらに上、伝説の勇者の称号を目指す。そのためには足手まといはいらねぇ。消えろ、カスが!!」
「さすがアーヴィンはカッコいい!」
「ねぇ。今夜一緒に寝ない?」
ここまで言われては、もうこのパーティーにはいられない。
私は故郷で共に修行していた頃を思い出す。
何が彼らを変えたのだろうか? それとも初めからこんな人間だったのか?
私が「防壁作成」スキル以外のものを憶えることができたなら、こうはならなかったのか?
全てはもう遅かった。
「ギネス。お前の全財産はここに置いていけよ。俺たちが稼いだ金だ。お前にゃ関係ない」
財布を取り出し、投げ捨てる。
「ああ、その腰のメイスだけは持って行ってもいいぜ。せいぜい振り回して遊ぶがいいさ」
キャハハッとリナとマリアが笑う。
私は無言のまま。三人に背を向けた。
語る言葉など、もはやなかった。
ドアを開けて夜空を見上げる。
満天の星々も私を慰めてはくれなかった。
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