6話 大飢饉の村
ヘレネと歩き疲れた僕。体力はあるが元々神の世界をふわふわ浮いて過ごしていたのだし、当然動き続ければ疲労する。
苦しそうな僕に水筒を差し出し、僕はその水を口にする。
「すまないねヘレネ」
「いえいえ、ラヴィ様のためとあらばこのヘレネはなんだってこなします」
少々妄信的なヘレネ。まあ僕に対して信仰心が厚いのはいいことだ。関心関心。
村人たちと会話をすると、どうやら絶賛大飢饉中の模様。
「どうなさいますかラヴィ様」
「よそ者の僕らは邪魔者って感じだね」
神の施しで何とかすることもできるが、そうバンバン使うものではない。貧しさも豊かさも人間の善悪を捻じ曲げる。
人類が成し遂げたという実績が必要なんだよな。
「ヘレネ。飢饉の原因はわかるかい?」
「干ばつとそれからあの山賊たちでしょうか。以前この村に立ち寄ったこともありますが、ここに向かうにはあの道を通る必要があります」
なるほど、山賊達は自動的に片付けてしまったが、干ばつか。ヘレネは気象操作の能力でここら一帯のここ一年の気象まで把握できる。
「雨を降らしましょうか?」
「いや、井戸を作るべきだ。君がいなくなれば意味がない」
だが、こんな状態の村人たちに井戸を作る体力はあるだろうか。となると、井戸を作るまでの食糧などはやはりクリエイトすべきなのだろうか。
「ヘレネ。狩りの時間だ」
「狩りですか?」
「ああそうさ。それから村の為にやはり定期的に雨を降らせようか。不自然のない程度で頼むよ」
「かしこまりました」
そう言ったヘレネは指パッチンをすると、少しずつ気圧の変化を感じ始める。だが、まだ降らさない。急に降る雨は不自然だ。
ヘレネの気象操作は前後や近辺の気象に対し一切の影響が出ない。そういうチートだ。
「さあ、山にでかけよう。獣を土産に村に戻れば受け入れてくれるだろう」
「名案ですラヴィ様」
山に行き、イノシシやシカを見つけては僕のクリエイトにより作成された罠やヘレネの雷で確実に仕留めていく。
「こんなものかね」
「あのこの獣たちはどのように運ばれるつもりで?」
「…………」
考えてなかったなぁ。どうしようか。荷車でもクリエイトしてしまおうかな。仕方なく運ぶ道具をクリエイトし、ヘレネと二人で再度村を訪れると、村人たちから大歓迎された。
ちょうどいいことに、僕らが来る前に雨が降ったらしく、村人たちは先ほどと違い少しばかりだが活気を感じる。
「この肉を我々に恵んでくださるのですか」
「ああそうさ。僕ら二人で食べきれるように見えるかい?」
「ありがとうございます」「ありがとうございます」「まるで女神だ」「素敵な方々だ」「なんて神々しい」
いや、まるで女神じゃなくて女神なんだけどね。
少々不満に思いながらも、教えていないことを理解しろなどと言えずに村人たちの言葉を受け入れる。
肉を分け与え大喜びの村人たちに飢饉について話をし、やはり干ばつが主な原因の模様。山賊たちをけちらしたことは信じて貰えなかったがまあいい。
「井戸を掘るべきだ。僕の知見ではこの村の地下には水脈がある」
ない。が、僕がさきほどクリエイトしておいた。おそらく今後数百年枯れることのない規模の水脈だ。
「井戸ですか?」
「僕らが滞在している間は狩り程度なら手伝おう。だが、やはり食糧難の原因は水不足だ。水脈もある。生活を潤わせる絶好の機会だと思わないかい?」
「…………わかりました」
村人たちは水脈に対して納得いかない模様。おそらく一度は掘ったこともあるのだろう。しかし水一つんあく雨水や遠出して山奥に水源を探しに行くことが主な水の確保方法だったらしい。
「とにかく信じてくれ。悪いことにはならないよ」
「それでそのお嬢さん方は何者なんだい?」
「僕は…………」「ラヴィ様と私はヘレネと申します!!」
「…………ヘレネ?」
「いえ、なんでもございません!」
何故か名乗ろうとする前にヘレネに止められる。イッツソークールな名前を披露するのはまたの機会としよう。
それからしばらく狩りと井戸掘り。定期的な雨ごい(ヘレネのチート)を繰り返す生活が続く。村人たちに自力で井戸を作るのもあと少し。あと少しで僕の作った水源にたどり着く。
そんなある日。村近くから僕らの様子を伺っている人間がいることに気付いた。最初は違和感も感じなかったそいつも、僕らがここで何をしているか観察していたのだろう。
しかし、僕をもってしても気配を明確に察知するのに時間がかかったな。一体何者なんだ?
井戸の完成の直前。そいつが動き出す気配を察知した僕は、ヘレネにそのことを話すのであった。
ラヴィたちの様子を遠くで見ていた何者か。
一体どこのどいつだ?
ラヴィがヘレネに相談を持ち掛けるほどの相手だというのだろうか
今回もありがとうございました。