5話 神の暴力
荷馬車からおりて次の街にたどり着く。とにかく色んなところを見たいという僕の要求に対し、ヘレネは少々考えてから最初は素朴な村から行きましょうと言い、言われたとおりに向かう。
「素朴な村は何べんも覗いたぞ! 異世界に送る場合は何かしらのクエストが用意されているんだけどなぁ」
「クエストですか? この世界にはなかったかと」
「まあ、ここはそういう感じの異世界じゃなくて魔法のある君の世界の中世や近世そのまんまみたいな世界だからね」
確かにそうですね。とヘレネは相槌を入れる。
そして村に着く前にある峠を歩いていた時だった。僕のサーチに何者かが入ってくる。木こりか猟師か。それともまさかまさかの山賊イベントだろうか?
「ラヴィ様」
「わかってるさ。僕は神だよ?」
「それもそうでしたね」
僕は手元に一冊の本を取り出した。通称『神の本』そのままの名前のそれはあらゆる事象が記されている。といっても過去のみなんだけどね。
「へえ、これにしようか」
そうこうしていると、前方に人影。山賊たちだ。
僕たち二人に向かって山賊たちが道を塞ぎ、後方にも回り込まれる。挟まれたつもりはないよ?
「へへへ、お嬢ちゃんたち二人で山は危険だぜ?」
「おいおい、美人と可愛い子ちゃんじゃねえか」
「全裸になって股を開いたら、命だけは助けてやるよ」
「ぎゃはははは! そいつぁいいや!」
「脱げ!」「脱げ!」「脱げ!」
下劣すぎだろ人類。まあ、いいか。善悪がなければより良い者を尊ぶことも難しい。彼らも世界には何かしらの歯車になるだろう。
が、僕の前に現れ僕らに悪意を向けたなら話は別だぜ?
「神427号が命ずる。その醜悪な魂。神がこれ以上の生涯を許さない。427」
「はぁ?」「神?」「何言ってるんだこの女」
「怖すぎて頭がおかしくなったんじゃねーか?」
ほうほうほうほう。よく言ってくれるね。僕は短気じゃないけどブチギレ寸前だよ。
「ラヴィ様。ここは私が」
「いいや、ヘレネ。僕の実力をその眼に焼き付けるといい。と、いうよりも神の力を使ってスカッとしたい」
僕がそういうと、ヘレネは一歩後ろに下がる。まあ、後ろにも山賊たちはいるんだけどね。
蜃気楼がヘレネを隠し、山賊たちは困惑し始める。ヘレネが僕の攻撃範囲から離れたことを確認し、僕は手に黒い霧を集めそれを大剣の形に形成する。
「なんだそれは」「ひぃ」
「まあ待てよ視界に入れたら最後。足を動かして逃げてみるといい」
山賊たちは逃げ出そうと足を動かし全力で走り出した。しかし、体が一ミリも前に進まない。
「僕の魔剣さ。あ、いや神聖剣さ! 一度視界に入れたものは剣の形を崩すか、斬られるまでその場から動こうとしても位置が固定される。走っても走っても動かない景色は初めてかい?」
「うわぁあああああ許してくれ!」「助けてくれ!」「いやだ死にたくない!」
山賊たちの阿鼻叫喚。君たちはこれまで同じようにしてきた尊い命を弄んだのだろう。教えてあげるよ。来世で道を踏み外さない様にね。
「もう一度言わせてもらうよ。427」
黒い霧が体を貫かれ、真っ二つにし、全てを葬った。黒い霧を霧散させると、近くに隠れていたヘレネが蜃気楼のベールを解除しその場にへたり込む。
「ラヴィ様。それは?」
「僕のチートさ」
「チート?」
「怖がらないでおくれヘレネ。彼らは僕にされたことを魂に刻まれ来世は残虐なことができない生命に生まれかわる」
「そうなのですか?」
「神の言葉だ」
「こうも直接聞こえてくる神の言葉では信じるしかありませんね」
そして峠を越え、ヘレネが案内する村に到着するのであった。
今回はかなり短め。雑魚相手に無双するラヴィ。そしてこれから現れる敵は一体どこまでこのラヴィを苦戦させることができるのだろうか。
大鳳も困惑しています。
今回もありがとうございました。