2話 平和な世界に転生してやったぞ
異世界転生! 僕が今まで数百数千の人間を導き、力を与え世界を救わせた。
その中でも今僕が転生したこの世界は……
「六人の転生者を招き、魔王を倒したかなり危険だった異世界。だが、転生者たち全員は生存しチートも健在。この世界は安全の中でも最高峰さ」
幻影の奇術師に、幸運の冒険者。迅速の吸血鬼に、結界使いのメイド。無敵の騎士に、不死の少女。
これだけのメンツを集めてやっと攻略した異世界だったんだ。世界は平和をかみしめている状態だろう。
「ま、僕が無双するのはもう少しゆっくりでいいかなぁ。どうせ転生勇者共より僕の方が強いんだしね」
とにかく人里に向かおう。僕は今まで神の世界でぐるんぐるん回ることと、様々な世界を覗くことしかしてこなかった。
人間たちが楽しそうにしていた行いは片っ端から楽しんでみたいものだ。食事にギャンブル。キツネ狩り……は可哀そうだから愛でようか。
「はぁ。太陽ってこんなに暖かかったんだね。大地はこんなに雄大で風はこんなに心地よい。神としてふわふわしていたら知ることのできなかった世界だ」
緑の匂い。空気の味。人間の感想はよくわからないものだらけだったが、こうして地上に出れば、全身で様々なことを感じられる。
「ああ、人類。君たちはこんな素晴らしい世界を生きてきたんだね」
しかし、辺りを見渡しても一面の草原。どうやら人里からかなり遠いみたいだね。僕は普段出現させない羽根をはやし、飛翔する。高度を上げても人工物一つありもしない。
「むむむ? まあ最初から上手く行きやしないか? うーぬ」
上昇し続けてようやく街を発見。砂粒ほどの大きさに見えることから、かなりの距離があるが視界に入ればこちらのものである。
僕は神技を使用する為、信仰心を羽根に集中させた。信仰心とは、世界中の人々が神を信じる力で扱える神専用のエネルギーである。
僕は数千ある世界の恋愛にまつわる神の統合体であり、誰かが恋心に関するお願いをするたびに、神を信じるたびに、信仰心を得ることができるのだ。
「ブースト。飛翔速度」
先ほどまで砂粒のような大きさだった街は、目と鼻。騒ぎにならないように街の近くに舞い降りる。門を通過する前に神の服装はまずいよな。
「リード。在住世界の情報。衣食住文化」
舐めるように現在いる世界の衣食住文化を閲覧し、今度は手のひらの上にまた信仰心を集め始める。
「クリエイト。マテリアル。衣類」
その場で衣類を生成し、誰かに見られる前に着替える。着替え終えた僕は街中を歩くのであった。
街中には老若男女。様々な人類が各々の目的に沿った行動をしている。結構うじゃうじゃいるもんだね。
「さてと……片っ端から行くべきか。ごはんもいいな。酒場か……そういえばあの勇者たちはこの世界では有名人になってたりするのか?」
事前にクリエイトしていた宝石を売りさばき、酒場に立ち寄る。
「よぉ若い嬢ちゃん。ここは君みたいな子が来るところじゃないよ?」
マスターにそういわれムッとするも、仕方ない。僕は超絶可愛い。やろう臭い酒場に立ち寄るのは不自然なのだろう。
「金はある。このなりは街になじむ格好ゆえだ。長旅帰りで世界の情勢の変わりように全くついていけないんだ。僕と世間話をしてくれないか?」
僕はそういうと数枚の金貨をマスターの前に転がす。
「何がききたい?」
「この魔王を倒したやつらについてだ」
「ああ、英雄様方のことですね」
しばらく酒場のおっさんは語り始める。まずは幻影の奇術師ヘレネ。長い金髪をツインテールにしている琥珀色の瞳の女性。体つきは女性らしいプロポーションをしている彼女は、マジックという不思議な力を使い、相手を翻弄する戦闘スタイルだ。
ヘレネか。確か与えたチートは気象操作だったっけか。
それから他の五人の説明も入ったが、どうやら数日後、この街にヘレネが訪れ奇術ショーを行うことになっているらしい。ショーか。人類の娯楽の一つ楽しみだ。
せっかくの顔見知りの一人。近くに来るのであれば顔くらい見せてやるか。
僕は酒場を後にしようと立ち上がるとマスターに声をかけられる。
「嬢ちゃん可愛い上に払いがいいじゃねーか。なんて名前なんだい?」
「僕かい? 僕の名前はラブ・イズ・フォーエバー! イッツソークールな名前だろう?」
酒場のマスターはあまりのクールな名前に開いた口が塞がらない様子。僕はそのまま酒場を後にし宿屋に向かった。数日分の支払いを済ませしばらくの拠点にしよう。
「まずはヘレネの奴。僕と再会したらどういう反応するか楽しみだな」
大鳳です。
ラブ・イズ・フォーエバー。本人はお気に入りのお名前でした。
こんな雰囲気の彼女が数人の仲間とチート無双してくお話になります。
今回もありがとうございました。