表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神427号~ラブ・イズ・フォーエバー~  作者: 大鳳葵生
第一章 六英雄再集結の章
17/86

9話 迅速の吸血鬼ニコラス

 再生と飛翔をするだけのゴーレムを前に、僕は次の手を思案していた。何をすればこいつを倒せるだろうか。


 そう考えている様子が、ゴーレムからは隙に見えたのだろうか。最初に纏っていた紫電が、僕に向かって放たれた。


「…………クリエイト。避雷針ライティング・ロッド


 作成した避雷針を効果がある範囲に突き刺すと、紫電は綺麗にそちらに誘導された。


 ゴーレムはそれを確認すると、頭部を避雷針に向け、口吻を突き出すような形に変形し、そこから熱線を放出した。


「このゴーレム一体で六英雄一人以上くらいの強さありそうなんだけど本当にニコラスの眷属なのか?」


 それとも、僕がよく理解していなかっただけで、ニコラスってかなり強いのか?


「ヘレネ!」


 僕はヘレネとニコラスの二人の元に戻る。近場のマグマはヘレネの魔法で冷却済みだった。さすがヘレネだ。


「あのゴーレムって弱点ないの?」


「……ラヴィ様。何故敵対する必要が…………弱点ならあります」


「そうか、じゃあ教えてくれ」


「一応敵対する理由を教えてくださいませ」


「何故って? そんなの眷属がやられたら、ニコラスがやってくる。探すより楽だろ? ほら弱点を教えてくれ」


 僕の回答に対し、ヘレネとエドワルドが眉をひそめる。何が不満なのだろうか。


「ラヴィ様がやると浄化してしまいそうですね。なるべく痛くしない様に無力化しましょう」


「だが、俺とヘレネじゃあのゴーレムを制圧できないぞ」


「…………? なんだか知らないが、痛みを感じるのかあれ。ならやり方を変えよう」


 よくわからないが、ヘレネとエドワルドはゴーレムがかわいそうと感じているらしい。


 なるほど、人間は人間と保護欲を掻き立てる動物以外はどうでもいいと考えていたし、何より魔物に可哀そうという感情を感じないと考えていたからすれ違っていたのか。


「できるのですかラヴィ様」


「僕に不可能はないよ」


 それによくわからないけど、君たちが傷つけたくないと気付けば、僕もあれを傷つけるのが嫌に感じてきたしね。


 さてと、誰も傷つけない技か。試したい技が一つあるんだよね。


「エンチャント。帰巣ホーミング


 僕はゴーレムに帰巣状態をエンチャントした。エンチャントを受けたゴーレムはこちらへの敵対をやめ、一直線に北東に進んで行く。


 ヘレネとエドワルド二人を抱えてゴーレムを追いかけると、二時間ほどで古城が見えた。


「あれみたいだね」


 僕が二人に話しかけると、二人は完全に気絶していた。


 あり?


 ゴーレムの速度はあの巨体で想像以上に速かった。それを追う僕も当然速い。そして現在上空約千メートルを飛翔中。


 あー、なるほど。人間はこれ耐えられないのか。一応、摩擦熱無効に…………あ、こいつら冷たい。摩擦緩和をエンチャントすべきだったか。


 古城に降りると、ゴーレムはそれ以上僕らに攻撃を仕掛けてこなかった。何より、ゴーレムははじめから僕だけを攻撃していた。


 ヘレネとエドワルドは敵として認識すらしていなかったのかもね。だから僕は仲間と判定を受けたのだろう。


 古城の中に入る前に二人の体温をもとに戻すまで待機。数十分で二人ともなんとか意識を取り戻したので治癒魔法で無理やり叩き起こした。


「ラヴィ様、今度から急いでいても何をするかまず俺らに相談してくれ」


「お願いしますラヴィ様」


「あ、ああ悪かったよ」


 古城の中を三人で探索する。先導はエドワルド。幸運があるし罠が作動しても当然のように無傷。


 矢は偶然当たらないし、落とし穴は中途半端に作動し、迫りくる天井はエドワルドの頭部に当たる前に経年劣化により曲がった壁につっかえる。


「いやぁなんであいつこんな罠だらけの場所にひっそり住んでいるんだ?」


 エドワルドですらドン引きの罠の数々。冒険者と自称するだけあり、罠は見慣れている様子だが、それでもかなり多く感じるらしい。


 ヘレネは魔王城や、各地の幹部と戦った時以来ぶりのダンジョンのような場所らしく少々びくついている。


 そういえばヘレネの気象操作は、屋内で関与するのは難しいからね。不可能ではないんだけど。


 そして僕らはとある部屋までたどり着くと、そこには大きな棺桶が中央に設置されていた。


 あー、吸血鬼本当にイメージ通りの寝方するんだね。


 それもそのはず、ニコラスが転生する前に存在していた世界は、とある人間のチートにより作られたファンタジー交じりの世界だ。


 確か、その誰かはヘレネと同じ世界の人間だったはずだから、地球という世界の吸血鬼のイメージが、そのまま定着しているはずだろう。


 そしてその世界から転生者のニコラスが眠っているであろう棺桶の前まで行く。


「起きろニコラス」


 僕がそう声をかけると、あっけなく棺桶は開かれた。


 中から出てきたのは深緑色の髪でくせ毛に長髪の男。中世の貴族の服装に近く、紫色に近い色合いの黒いマントをしている。


「これはこれはヘレネ君。エドワルド君それから…………女神様?」


 間違いない。この男こそ僕らが捜していた三人目の六英雄。迅速の吸血鬼。ニコラス・エリンクス伯爵だ。

ラヴィにも仲間意識はあるみたいですね。芽生えたという方が正しいのか。


今回もありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ