6話 神に劣勢はない
エドワルド・レーニン。この世界の六英雄の一人にして幸運の冒険者の異名を持つ男。
「女神様とヘレネちゃん久しぶり!」
「お久しぶりです。全くお会いしたくありませんでしたが」
「エドワルド。この世界での僕の名前はラブ・イズ・フォーエバーさ」
僕が名乗ると、その場にいた全員が動きを止める。唯一知っていたヘレネでさえも固まっている。
そうかそうか。僕の名前ってそこまで感動するのか。
何故かエドワルドがヘレネに耳打ちすると、ヘレネがそのまま小声でエドワルドに耳打ちする。なんの話をしているんだい君たち。
「ラヴィ様? ラヴィ様ですエドワルド。親しみを込めてそうお呼びなさい?」
「おう、ラヴィ様ね。オーケー」
何故か先ほどまで嫌そうな顔をしていたヘレネと一致団結した二人。なんだ仲いいじゃないか。ヘレネまさかツンデレか?
「ラヴィ様。なんだかよくわかりませんが、これらを退ければ良いのですね。でしたらあの黒い服の野郎はこの俺にお任せ下さい」
あー、エドワルドは学ランを知らない世界の人間だったね。
「じゃあ、あのダウンジャケットは僕がやるよ。ヘレネは下がってて」
「はぁい。ラヴィ様の命とあれば仕方ありませんわ」
ヘレネが一歩下がり僕がダウンジャケットと相対し、エドワルドがジューリアンと相対する。僕らの戦いは同時に始まった。
エドワルドがカットラスを抜くと、ジューリアンがたじろいでしまう。
「おいおい、カットラスくらいなんとかできるだろ?」
「まてまてまて刃物から力を吸収なんて非効率すぎる!」
「……もしかして相性ばっちり? ラッキーラッキー」
ジューリアンがヘレネから奪った炎の魔法で大地を焦がすと、その発動の前にエドワルドが後方にバックステップをして回避した。
「なんだと!? 未来予知か? 僕の吸収した能力の発動はノータイムだぞ!?」
「お前のチートが何だかわからないが、俺のチートは自身の感覚操作だ。そしてお前が奪った炎獄獅子王は、大地を焦がすプロセスで、使用者と発動箇所の間に一瞬だけ紫外線が放たれる」
「まさかお前視覚を操作して見ていたのか?」
そういった瞬間だった。エドワルドのカットラスがジューリアンを切り付ける。
「goodrack!」
ジューリアンはとっさのことに吸収するチートを発動させずに切り付けられた。その後、ヘレネの魔法で手足を氷漬けにし拘束。
ヘレネがこれまでのいきさつと今の事情をエドワルドに説明している間に僕とダウンかジャケットの戦いも始まっていた。
「さぁてさて。吸収されなきゃこっちのもんだね」
現在ジョブがファイターの僕と、とにかくパワフルな化け物じみたダウンジャケットの男。ついに僕の目の前で四つん這いになって突進を決めてきた。
「…………ジョブチェンジ。闘牛士」
手元に現れた赤い布と細長い剣。こいつにはこれがぴったりっぽいね。
「神427号ラブ・イズ・フォーエバーが命ずる。荒ぶる魂よ。その怒りを鎮め輪廻の循環に戻るといい。427」
奴の突進を華麗にかわし続け、一瞬の隙をカウンターで突き返す。
ダウンジャケットの男を貫き、動きを止めた。ダウンジャケットの男の魂に浄化魔法をかけ空に放つ。
拘束されたジューリアンにも同様の処置を施すのだった。
そしてロアヌに戻り三人で食事をする。
「まさかラヴィ様ご自分がこの地に訪れるとは」
「私も最初は驚きましたが、我々からすればラヴィ様は恩人も同然です。ですが、今回の件はもう少し人間の気持ちに寄り添ってですね」
ヘレネからクドクドと説教を受けながら、僕がうなだれる中、エドワルドが笑いながら食事を進める。うう、耳が痛い。
「とにかくだ。428号は後でちゃんと転生させるつもりなんだ。だから恨まれることをしたつもりはない」
「そういうのちゃんと説明しないとこ。俺が転生させられた時を思い出すな」
「私もです」
「あり?」
三人で話し合い、次に探す六英雄はひとまずニコラスとなったが、問題はニコラスがどこにいるかわからないということだ。
「山奥の城に籠ってるって話は俺も聞いたな。つーか、あんな引きこもりじゃなくてイレーンとかマーガレットとかでよくない?」
どうやらエドワルドは少々女好きのようだ。それに対してヘレネが言い返す。
「このまま女子メンバーが増えましたら、貴方様のハーレムみたいになってしまうでしょうが!!」
「ええいいじゃんねえラヴィ様」
「なんでもいいよ僕は」
とにかく時間稼ぎともう一つ。六英雄全員を揃えれば、神428号もちょっかいを出すことを諦めるほどの戦力になるだろう。
そしたら巡回の神が428号を指導してこの問題も一件落着。あー、楽ちんだなぁ。
エドワルド君、予定よりスケベになるかも。。。。。ならんようにしないと。
今回もありがとうございました。