4話 二人組できやがった
本日最後の船が港に到着するも、そこにエドワルドの姿はない。
「ラヴィ様。まだあのバカをお待ちするおつもりですか?」
「うーん? どうだろうなぁ。敵からの刺客も来ないし案外暇だよねこの港町も」
定期的に魔物狩りなどもしていたり、他の六英雄の情報集めをしてみたものの、結局エドワルド以外の六英雄の情報はなし。
頼みのエドワルドも様々な港に立ち寄るだけで、必ずしもこのロアヌに来るとは限らない。
「仕方ない。やっぱりエドワルドを待とう。あいつの幸運は他の六英雄探しにも役立つかもしれないしね」
「それは……そうですけど」
ヘレネも納得いかないという表情を隠しきれていない。たびたびやってくる刺客は僕とヘレネの二人で撃退するにもどんどん疲弊するだけだ。
それにここ最近の刺客はやけに弱いが癖があるものばかり。僕やヘレネの戦闘パターンをなるべく見るためだろう。
「早くエドワルドを見つけて拠点を移さないと」
僕の呟きに特に否定意見がなく、だけど肯定もしたくないヘレネが黙ったまま頷いた。
僕らが二人組だと思って奇襲が来る。きっとそろそろ。僕らのパターンを見切ったと考えるだろう。
「神のルールが曖昧すぎるのがいけないのです! 大体なぜ428号を適当に選ばれたのですか?」
「あー、うるさいうるさい。僕だってあの時は最適解だと思ったんだよ」
神428号め。いずれ抜け道を見つけて自ら転生してくる可能性を考えておこうか。あくまでも他人にチートを与えるチートしか与えていないことと、与えた他人からチートをもらえないようにはしておいたから、彼自らが牙をむくことはないだろう。
「とにかくエドワルドだ。あいつが来るのを待つんだ!」
「口を開けばエドワルドエドワルド。はぁ……承知しました。とっとと探しましょう」
僕とヘレネは眠りにつき、そして翌朝また港を歩いていたらまた刺客からの気配を察知する。
「また来たねヘレネ。行く?」
「ええ、良い憂さ晴らしになるでしょう」
刺客の気配は上空。飛行能力かそれとも何かに乗っているのか。しかし、対空性能においてヘレネの右に出るものはいないだろう。
僕らは気付いていないふりをしながら、人の多い場所からなるべく離れ、気配がちゃんと付いて来ていることを確認する。
このパターンは学習しないのだろうか? まあ、いいか。都合がいいし。
「ヘレネ。ここら辺にしようか」
「かしこまりました」
ヘレネがいつも通りの雷撃をお見舞いしようとすると、その雷撃を受けたはずの相手が地上に急降下してきた。
しかし、これはおそらくわざと雷撃に被弾したと考えるべきだろう。
「今回の敵は少々面倒かもね」
墜落してきたのは二人組だ。もしかしてチート転生者を二人揃えてきたって事なのか?
片方はいわゆる学ランと呼ばれる服装。ヘレネの転生前の世界にある日本という国の男性向け学生服だ。
もう一人は同じくらいの時代背景の男で緑色のダウンジャケットに眼帯をした男。銃を携帯している。
「どちらかが雷撃を受けられるみたいでどちらかが飛翔できると考えるべきかな」
「ですがそれだけでは我々には」
「失礼! 僕の名前は佐藤ジューリアン!」
学ランの男が前に出て名乗り始める。だが、僕らは丁寧に人の話を聞くつもりはない。僕は神聖剣をクリエイトしてジューリアンに斬りかかった。
しかし、ジューリアンに触れる直前で神聖剣が形を保てずにジューリアンに吸収されていく。
「へえ空間操作系? それともエネルギー吸収系?」
やはり神聖剣メタは用意してくるよなぁ。となると奥のダウンジャケットが飛翔系の能力持ちだろうか?
「ヘレネ!」
「集いし怨念が会合せし時。大儀を振るい大地を焦がす。紅蓮の脈動が今、獅子の鬣を象った。呼応せよ炎獄獅子王」
獅子を象った焔が、二人の足元を焼き尽くす。一瞬の出来事な上に、ダウンジャケットは対処できずにいた。吸収持ちの方はどうやら宮廷魔術師クラスの魔法が仕えるヘレネの炎すら吸収できる様子。
「一人は倒せたか?」
僕が呟くとダウンジャケットの方の男は眼帯を外した。
「クシャリュギュアシュシャアア」
あ、こいつ人間じゃない。私もか。
ラヴィ様も人外ですからね。
とっととエドワルド出して話進めますか。。。。。。
今回もありがとうございました。