2話 ヌッポッポン襲来
ロアヌ港に到着し、エドワルドの目撃情報の聞き込みを始めた。
ついでに他の六英雄の情報収集も行おうとしたが、特に情報なし。一応、エドワルドはロアヌ港にはよく訪れるらしいため、しばらくここに滞在することにした。
「あんな奴待たずに、他の方を探しに行きませんか? どうせなら居住地を定めているニコラスかイレーン辺りをですね」
「いやぁ、むしろその辺は旅をしながら見つける方が良い気がするんだよね」
ロアヌ港では船乗りたちが何か噂話をしているところを聞きつけた。
「何の話をしているんだい?」
「ああ? なんだ嬢ちゃんこんなとこに。これからヌッポッポンが接近しているから港にいない方が良いぜ」
「ヌッポッポン?」
「なんだよ嬢ちゃんヌッポッポン知らねぇのか?」
僕が唖然としていると、ヘレネが耳元で耳打ちをする。
「ロアヌ港に現れる巨大な海龍のことです」
「誰だよヌッポッポンなんてつけたやつ」
とにかく変な名前の海龍がいるらしいことと、そいつがこれからこの港に接近することが分かった。
「ヘレネ。やっちゃう?」
「ヌッポッポンは魔王クラスの龍ですので、私一人では難しいですね。ラヴィ様のご協力をお願いしたいのですが?」
「魔王クラスか」
この世界の魔王はあまりにも強力だった。だから僕は、六人も転生者を送り付けて世界平和に導かせたのだ。
そのうちの一人。ヘレネ・ギルフォードが一人じゃ厳しいと答えたヌッポッポン。やっぱり名前考えた奴出てこい。気が合いそうだ。
「まあいいか。やっぱり色々試したいし僕が前に出よう。ヘレネは港がなるべく被害にあわない様にしていてくれたまえ」
「かしこまりましたラヴィ様」
「おいおい嬢ちゃんたちまさかヌッポッポンを倒そうっていうのかい?」
「やめておけ。ヌッポッポンは強力な魔物だから嬢ちゃんたちじゃ相手にならないよ」
そういう船乗りたちの前に、ヘレネが一歩前に出る。そして彼女は言い放った。
「私の名前はヘレネ・ギルフォード。今は名乗るつもりはありませんでしたが六英雄のヘレネ・ギルフォードです。皆様こそお逃げください」
ヘレネが名乗りをあげると、横にいる僕もなぜかすごい人だと思われ、船乗りの諸君には安全な場所に隠れて貰うように促せた。
僕たちは一隻の小舟を出し、ヌッポッポンの接近に備える。
「ヌッポッポンはどういう攻撃をしてくるんだい?」
「毒麻痺混乱眠りの状態異常に、酸の霧。あとは暴風を口から発射しますが、ノーモーションで十連射してきます。それから超高速再生と多重結界。同スペックの分身を最大五体生成できることまでは存じていますが、それより先まで到達した方はいらっしゃいませんので情報はありません」
「何それ」
「あと大きさですが、首は五階建ての建物並みの高さが海から露出していますので、海の中を漂う胴体はもっと大きいかと」
うーん? この世界の魔王本当に強かったんだな。よく六人で勝てたものだ。まあ、僕ならい一人でも余裕か。
小舟が進むにつれ波が高くなる。そしてあからさまに近づいてくる魔力の塊。
徐々に遠方から近づいてくる長い首の影。どうやらあれがヌッポッポンのようだ。
「ジョブチェンジ。女神」
僕は両肩から神の翼を生やす。飛翔し一気にヌッポッポンに接近する。ヌッポッポン付近は酸の霧が発生しておりとても近づきにくい空間になっている。
「クリエイト。流星!!」
ヌッポッポンの頭上に隕石を想像し、ヌッポッポンを押しつぶそうとするが、多重結界が発動しガードされる。
隕石もダメか。ならば神界の武器を出そう。手元に黒い霧を集め剣の形を形成する。
「クリエイト。神聖剣」
黒い霧で形成された剣が、多重結界ごとヌッポッポンを一刀両断するが、その瞬間にヌッポッポンは分身を召喚。分身の一体が消滅した。
「クレイジーだねヌッポッポン」
さて、神界の武器をそう易々と一つの世界に呼びすぎると神々が僕に敵意を向けかねないね。限度は三つ。ここで使うべきか?
いや、この戦いも428号に見られていると仮定するならば、ここで奥義を見せる訳には行かない。
「クリエイト。ドラゴンスレイヤー」
ただの聖剣や魔剣。宝剣程度なら大丈夫だよね?
「さぁてここからが本領発揮さ」
僕が剣を構えると、女神の翼で高速移動しながら二体いるヌッポッポンを細切れにする。どうやらこちらも分身の模様。
ヌッポッポン一体一体が高速再生持ちではなくて助かった。本体は持ってたりするんだよね。
「エンチャント。スキルブレイク」
さあ、神話の一ページに刻まれようか。
さあ、神話の一ページに刻まれようかって、本作はある意味主人公が神なので既に神話ですよラヴィ様。。。。
今回もありがとうございました。