1話 転生するのは僕だ
俺は女の子を助けてトラックに轢かれた。いきなりのことだったから直前の記憶が曖昧だ。
死んだはずの俺は周囲が暗い謎の空間に座り込んでいた。目の前には女の子が一人。
白いワンピースに綺麗な肌。ピンクの髪にボブヘアーまでは許容範囲だった。
「僕が見えているね?」
「ああ」
彼女の一人称は僕。そこもギリギリ普通の範囲に収められる。実際に一人称を僕にする女性は初めてあった。しかし一人称など、どうとでもなるものだ。
だが、浮いている。それは髪がではなく一人称がでなく、実際に彼女は地に足がついていない。
膝を抱えながら宙をぐるんぐるんと、ゆっくり回っている。キメ顔なのが無性に腹が立つが、異形の存在なことくらいは簡単に認識できた。
「素晴らしい。君はトラックに轢かれた」
「それのどこが素晴らしいっていうんだ?」
「テンプレート通りと言うことさ。さらに加えて君は尊い命を護った。エクセレントだ」
「まあ、それは護れたのか。良かった」
ホッと胸をなでおろす。良かった。
「僕は生きながらえるべき素晴らしい人間の魂を救済する神427号だ! 名前はまだないがな!」
「救済?」
「異世界! そういう存在を知っているかい? まあ、君たちの世界でいうファンタジー系のフィクションを思い浮かべるといい! 私はそこに転生する! 君はここで尊い命の管理をしてくれたまえ!」
「お、おう……ん?」
「君には他者にチート能力を与え、悪のはびこる魔王のいる世界に、他人を転生させる能力。それから私を安全な世界に送るチートを授けた! 最後のチートは発動して貰えるように瞬きしたら発動する! さらばだ!」
そして俺が女の言っていることを理解した瞬間だった。驚きのあまりに無意識に瞬きをしてしまったが最後。彼女は光に包まれた。
「ああ、そうだ。せっかくだ。私の名前を付けてくれたまえ! 神427号は可愛くないからね! 可愛いのを頼むよ?」
俺は一瞬むかついたこいつのピンク色の頭をみて、とびっきりダサい名前を思いついた。
「お前の名前はラブ! ラブ・イズ・フォーエバーだ!」
「なんっ……だと?」
そして転生の準備が完了した神427号ラブ・イズ・フォーエバーは、異世界に旅立ってしまったのだ。
こうして俺の称号は神428号になってしまった。
「あの女神。絶対許さねえからな」
俺はそう願った瞬間だった。次の死者が訪れた。男は俺とはまた別の世界で悪さをした男。何故わかったか。男が訪れた瞬間に男の説明書が浮かび上がったことと、対象をどうすべきかの指示まで記載されていた。
神427号。つまりラブが言うには救済せずに地獄に送る魂だと説明書に指示されている。
「なるほど、俺はこうやって善良な魂に魔王のいる世界に送り世界を救済させることができるのか。でも、俺が生き長らえさせる相手も送る世界も制約がないのはミスだぜ女神さんよぉ」
ほとんどの方は初めまして
大鳳葵生というものです。
代表作「ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている」
今回は異世界チートものです。
いかがでしたか?
次回からラブ・イズ・フォーエバー視点です!
お立ち寄り頂き誠にありがとうございました。