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その3

 翌日、どうせ役立つ日なんてこない授業たちを何事もなくこなす。僕は勉強が出来なくはないから置いていかれはしない。

 しかしこの記録や見つけられた数式などの寿命はあと二ヶ月ほどなのだの考えると複雑な気分になる。


 一体今まで人類が積み上げてきたものとはなんだったのだろうか。それに意味はあったのだろうか、と考える。そしていつも、もともと全てそこに意味なんてなく儚い夢のようなものなのだなという結論に至り脳内議論は終了する。これ以上考えても無駄だ。


 そんなことをしていると授業が終わり、行かなくてもよかったのだがやることもないので第2多目的室に行ってみるとそこにはすでに与謝野がいた。教室の端に積み上げられた机の中の一つで何やら書いている。


「何やってんの?」

「おお来たか少年、これはポスターだ」

「なんだその口調」

「えへへ」


 ポスターか、えーと、


『残りの人生を楽しく過ごしたい方、死後の世界でこの二ヶ月間を後悔したくない方、とにかく暇で悲しい方、絶賛募集中!』


若干宗教チックな事はさておき。


「とにかく暇で悲しいって誰のことだてめー」

「もちろんしら……」

「しら?」

「……白川……」

「そんなやつうちの校内にいねぇだろ」

「ひぇぇ」


 与謝野の脳天に軽くチョップを食らわせてオーバーリアクションを取らせると書き足した。


『友達がいない方』


「おい誰が友達がいないだてめー!否定できないのが悔しいじゃねぇかこのやろー!」


「人の痛みを知れ!痛みを!」


 そんなこんなでポスターが完成した。


 どこまで行ってもいたちごっこで最後はこちらが折れる形となったのは解せぬが。まぁとりあえず貼りに行こう


「よっしゃじゃあ事務室でコピーだ!百は刷るぞー百はー!」


 あー、一枚じゃないのか……。


 これから百枚余りのポスターをひたすらペタペタ貼っていく地獄を想像しながらとぼとぼ歩いている僕に向かって与謝野は言う。


「どうした少年よ!早く歩かにゃ今日が終わるぞ!」

「お前のその元気が時々憎いよ……」


 そんなこんなで二手に分かれてポスターをペタペタペタ。


 こんな無駄な単純作業をして何になるのだろう。将来何かの役に立つわけでもあるまいし、これなら帰って勉強するなり本を読むなりした方がよっぽど有意義なのではないだろうか、まぁ、帰ったところでしないのだけれど。


 ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタぺタペ


「おい」


 話しかけられた気がしたが、おそらく気のせ


「おい、聞こえてんだろ」

「……僕……ですか……?」


 振り返るとそこには身長が高く、百八十はあるだろうか。制服は着崩しているが顔も整っていて髪が金色の男が立っていた。どこかでみたような……。


「そうだよ、このポスターお前のだろ?」

「あっ……」


 思い出した。こいつ、校内でも有名な不良生徒だ。

 普段学校なんか来ないのになんでよりによって今日来てるんだ。終わった、難癖つけてボコボコにされる……。あぁ、僕は残りの二ヶ月を病院で過ごすことになるのか……。


 そう心の中で嘆いていると、次に彼が発した言葉はあまりにも意外なものだった。


「俺、入りたいんだけど」

「ふぇ?」


 驚きのあまり変な声が出てしまった。


「えっと……じゃあ あの……えっと……」


 人見知りも相手がヤンキーだとここまで酷くなるのか。


 言葉が出ないまましどろもどろな僕とそれを本当の上から目線で威圧するかの如く凝視する目の前のヤンキー。そんな構図が延々と続いていると後ろから救世主の甲高い声が聞こえた。


「我が会に入りたいの!?」

「まぁな、いいか?」

「ぜひぜひ!ではこちらへ」


 そう言ってジェスチャーで手招きをする与謝野、ヤンキー相手でも全く動じない。今に限ってはこのテンションの異常なまでの高さが救いだ。


 僕もヤンキーの後ろについて第2多目的室まで戻った。


 部屋に戻ると真ん中に机を四つ並べ与謝野と僕が面接官のポジションに座った。ヤンキーはその正面、二対一の構図となった。


「先ほどはコミュ障の白井がご迷惑をおかけしました」


 一瞬横からどつきそうになったのをなんとか堪える。


「改めまして!私は与謝野葵!そんでもってこっちの地味で友達いなくて淋しそうなのが」

「白井想です。友達いないのはこいつも同じなんで」

「い、いるもーん」


 与謝野が音がなく空気が出るだけの口笛をわざとらしく披露している。今度は本当にコークスクリューブローをお見舞いする寸でのところで。


「俺は島崎義信、よろしくな」

「よろしくぅ~」

「よろしく」


 与謝野め、命拾いしたな。


 ヤンキーこと島崎の方は割と友好的だが、まだ油断はしてはいけない。いつ本性を出すか分かったもんじゃないからな。


「で、この会は具体的に何をする会なんだ?」


 確かに僕もハッキリとした活動内容は伝えられていなかったな、半ば無理やり入れられたから。


「ふっふーん、ズバリ説明しましょう!」


 (ごくり……)


「ないです!!!」


「「へ?」」


 正面に座る島崎と綺麗にはもった。二人とも綺麗に口を開けている。

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