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96話目 ばめたんふぇすてぃばる

可愛い幼女以上の正義って、存在するのかなあ?

「なんだか忙しない娘達だったなぁ……でも、実鳥ちゃんが楽しそうで、良かったよな?」


「そうだねぇ。はるるんからちょっち聞いてたけど、いい友達が出来たみたいで安心したよ」


挨拶もそこそこに、友人達と去っていった実鳥を見送る剣達。


「いや、まさかあの娘達が剣んとこの妹ちゃんの友達だったとは、世間は案外ミニマムだったねー……でも、あの妹ちゃん、剣んともアズっちとも顔の造りがあんまり似てなくない?」


「そりゃま、実鳥ちゃんは父さんの三人目の嫁さんの連れ子で、俺とも梓とも血が繋がってないからな」


「あ~成る程。つまり……剣んの側室になり得ると」


顔色一つ変えずに、当たり前であるかのように納得しちゃった様子の安芽に、流石に動じる事の少ない剣であっても、光の誤解を招くような可能性をスルーしはしなかった。


「いや、そんなつもりは」


否定を口にした剣であったが、弓が素早く、過敏に反応していた。


「つ……剣くん……それ、本当よね!?」


「俺は見境なく女に手を出すプレイボーイか?……いくら血が繋がってないからって、家族仲をぶっ壊すような真似なんてしないっつーの。つか赤月、お前が俺の事を好きでいるのは勝手だが、俺のプライベートに口出しされる覚えは無いぞ」


据え膳でも、気に入らなければ食べない男、剣。相手がどんな美少女だろうと、言うべき事は突き放すように言う!とはいっても、弓もそんな事は覚悟の上なので、少しも怯みはしなかった。


「そ、そんなの解ってるもの……ただ、それならそれで、今からうんと仲良くなっとかないとと思ったから……」


「弓……すっかりアズっちのハーレム思想に染められちゃって……まぁ、アンタがそれで幸せならばアタシから言うことは何も無いんだけどさ……」


わざとらし~く、流れてもいない涙を拭う仕種をする安芽に、梓はジト目で抗議した。


「人聞きの悪い。まるで私が洗脳したみたいに」


「いやいや、焚き付けちゃったアタシが言うのも可笑しな話だけど、キャラ変し過ぎだから。悶々と悩んでる姿が懐かしい……」


わいわい盛り上がる高校生達を、光は燕を抱っこしながら物憂げな瞳で見つめていた。


「燕……お兄ちゃん達、お友達と仲良しさんで楽しそうね~」


「あい!ばめも、なかよくする!」


光お姉ちゃんは、既に弟と妹達の恋愛観や結婚観について、日本の法律云々や倫理観について説く事を諦めている!何故なら、自分も少しズレている事を自覚しているし、当人同士が納得してるなら口出しするだけ野暮だなあ……とか思っているのだった。それに、剣が間違った事をしないと信用しているのである。


「ひかねぇ!ポーンして!」


「え?ここでアレやるの?……仕方ないなぁ……剣~。梓~。燕が跳ぶから、ちゃんとキャッチしてね~」


「ああ、りょうか~い」


末っ子の無邪気なお願いを断れない甘さを苦笑しつつ、光はバレーボールでレシーブをするような構えをとった。その間、燕は足をプラプラさせてサンダルを脱いで裸足になっていた。


燕は光の腕に座ると、組まれた掌に足を乗せ……光は腕を振り上げて、燕はタイミングを見計らい……剣に向かって……跳んだ!


しかも、ただ真っ直ぐダイブしたのではなく、本当にレシーブされたように高く跳び、宙返りをしながら放物線を描いて飛んで行く!


いきなり神社前の路上で行われたアクロバティックな曲芸に、誰もが絶句し足を止めて凝視した!


「よっ!ほいっ!しょっ……と」


剣はギャラリーなど気にせず、ダイブしてきた燕を頭上で脇の下に手を入れ受け止めると、そのまま再度直上に軽く放って反転させると、自分の首の後ろに腰を降ろさせ、何事もなかったように肩車にした。


「じゃあ、また後でねみんな~!お姉ちゃんは明良くんとお祭りデェトしてくるからね~♪」


燕の無事を確認すると、光は梓に燕のサンダルを手渡し、満開の笑顔を浮かべて人混みに消えていった。


そうして光が天真爛漫に場の空気をかき混ぜたことで、宙を舞う幼女のアクロバットに魅入っていた群衆が正気に戻ると、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。


「うわぁ……悪目立ちしちゃったねぇ……」


梓の言葉通り、燕は注目の的となってカメラのフラッシュをシャワーのように浴びていた。そして発揮される聖家女子の目立ちたがりクオリティー。燕はスマホのレンズに相対すると、ビシッとキメ顔をしたり、蕩けるような笑顔を浮かべて、シャッターチャンスの大盤振る舞いを提供していた!


当然、過保護者のお兄ちゃんは撮影許可など出していない!


「や、やめろアンタら!保護者の許可なく写真を撮るな!ネットに流出させたら法的にアウトだからな~!」


しかし、お兄ちゃんの訴え虚しく、当の燕ちゃんはファンサービスを止めようとしない!


「ひじりつばめ、にさいです!ぎゃらはすいすぎんこーにふりこんでくれ!」


「桜ぁ~!幼児になんてネタ仕込みやがったぁ~!?」


帰宅後、剣は桜を問い詰めたのだが、それは濡れ衣だったと発覚する。いくら桜であっても、リアルな世界情勢と現実の厳しさを伝える世界最強のヒットマンが主人公の殺伐漫画のネタを幼児に仕込むような愚挙は起こさない。桜とて、幼い妹には清らかでいてほしいのである!


同じ理由で、見た目は小学生の名探偵が犬も歩けば以上の確率で殺人事件に遭遇し、平然と死体の状況を鑑識さんに尋ねちゃったりして、大人を睡眠薬で眠らせて、成りすまし推理をして事件を解決する国民的アニメも見せていないのである!


そんな訳で、誰が犯人であったかというと……お茶目なお父さんであることが判明し、息子と娘達から吊し上げをくらうことになるのだが……それはまた別のお話である。




燕をアイドル扱いする衆目から逃れ、剣達は神社の境内に入った。沢山の屋台が立ち並び、面白そうなゲームを体験出来たり、様々な食べ物が売られている様子に、聖家の小さなアイドルは目を爛々と輝かせてはしゃいでいる。


そんな燕を肩車している剣の後を、梓を中心に弓と安芽が横に並んで追従しているのだが……


「本当に駄目……人間の子供って、こんなに可愛かったかしら……?」


「マジでヤバイわ……あの娘が義妹になるなら、剣っちの嫁になるのも吝かではないって気になる……」


「ふっふっふっ……羨ましかろう?私は毎日ばめたんを抱っこして、週二は一緒にお風呂に入ってるのだ!」


学年トップ2の美少女が、女子からの人気度ワーストクラスの梓を心底羨ましがるとゆう珍妙な現象が発生していた。これはこれで面白い……剣はそう思いながらも、今は優先すべき対象()がいるので、適当に聞き流す事にして、燕が興味を持った屋台へと向かうのであった。


先ずは、色とりどりの飴を量り売りしている屋台であった。


「にーたん!あっちのおっきいあおいの!それとあかくてしましまの!こーらあじのも!」


「あ、すいません。この子が今言ったのと……そっちのレモンとメロンとグレープと……オレンジの奴も入れてください」


返事もなく、燕の要求以上に応える兄バカ剣さん。透明なビニールに詰められた七色の宝石のような飴玉に、燕はすっかり御満悦となった。


「おばちゃん!ありがとでした!」


「あらまぁ……お兄さんに注意もされずにお礼が言えるなんて、いい子ねぇ。それじゃ、コレはサービスね!」


そう言うと、屋台のおばちゃんは飴を並べた台の下から、大きな棒付きキャンディーを燕に手渡した。


「あ、あの、いいんですか?」


「いーのいーの!それね、割れちゃって売り物にならないから!ちっちゃい子に祭りでいい思い出作っとくのは未来への投資みたいなモンだからさ!」


なんとも粋な、姉御肌なおばちゃんに再度礼を述べると、次の屋台に足を伸ばした。


「にーたん、コレなに?」


「これは射的って言ってな。ああやって弾を飛ばして、棚に並んでいる物を棚の後に撃ち落としたら、落とした物を貰えるゲームだ。銃が大きいから、燕にはまだ難しいな」


「そうなの~?あ!にーたん!あれ!ぺんぺんさんがいるの!あれおとしたらもらえるの?」


燕が目敏く見つけたのは、ゼンマイ仕掛けで歩く、10センチ程度の大きさの玩具のペンギンだった。それほど重くないのでコルクの弾丸でも撃ち落とすのは無理ではないが、そう簡単に落とせる的でもない……普通なら。


「任せろ、燕。それじゃ……」


剣が後ろを振り向くと、偶然安芽と目が合ったので、有無を言わせず燕を安芽の胸に押し付けた。


「ちょっと燕を抱いててくれ」


「え?は、ふぁい!」


すっかり燕の愛らしさにやられていた安芽は、不意に燕を任されたが為に、呆気にとられて間抜けな返事をしてしまった。


「よろ!あめねぇ!」


そして、胸元からの至近距離上目遣いで見上げる燕に……完全に堕とされた。


「か……か・わ・い・い~!燕ちゃん!食べたい物があったら何でも言ってね!安芽お姉ちゃんが何でも買ってあげるからねぇ~!」


「安芽ズルい!私にも燕ちゃん抱っこさせてよ!」


「ヤダ!剣んに任された以上、燕ちゃんを一生お世話する義務がアタシには有る!」


「剣くん、そこまで言ってない!」


「……うわ~、家の妹、二歳にして魔性の女だよ……流石は血が繋がってなくとも私の妹!」


姦しい騒ぎを無視して、剣は屋台のおっちゃんにお代を渡していた。


「あいよ。五百円で十発だぜ色男なアンちゃん。あんまりイイ格好して恥かくなよ?」


冗談混じりにニヤケた笑顔を見せるおっちゃんに、剣は不敵な笑みを浮かべて質問した。


「例えばだけど、この弾を、銃を使わず、直接手で投げ飛ばして景品を落とすのは……反則か?」


剣の質問の意図が判らず、おっちゃんは少し考えてから、面白そうに返答した。


「いいぜ!ただし、ちゃんと袖を捲って、道具の持ち込み使用なしってのを証明してからな!何考えてるか知らねぇが、それで落とせるってんならやってみな!」


「……やって見せよう」


剣はおっちゃんに両手を調べさせ、何も仕掛けがないことを証明すると、左の掌にコルク弾二発を乗せて、右手の人差し指と中指を親指に引っ掛け力を溜めて、デコピンの要領で連続でコルク弾を弾き飛ばした!


一発目がペンギンの玩具の中心を正確に捉え、棚から微かに浮かせた刹那、二発目が横に倒れたペンギンが棚に接地する間際に頭を撃ち抜き、独楽のようにスピンさせて……周りの景品を巻き込んで、見事に棚の後ろに落下させた!


「にーたん、やったぁ!」


燕の喜びの声を受け、剣は振り向かずにサムズアップだけで応えた。


剣が何をしでかすか注目していた屋台のおっちゃんや他の客達、安芽と弓も絶句して呆然としている。梓だけは「まぁ、楽勝だよね!」と胸を張っていたのだが。


「う……嘘だろ?あ、アンちゃん!もっかい手を見せてみろ!」


素直に応じた剣の手を、念入りに調べたおっちゃんだったが……当然不正の証拠は見つからない。そう……見つかる筈が無いのだ!だって、魔法だもん!身体強化魔法で指の筋力と動体視力を強化してだけだから!


道具は使わなくとも魔法は使う。何故なら、魔法使いだから!


妹を笑顔にする為ならば、不正しない範囲で自重はしない!


そして、風属性魔法を併用すれば一発で落とせたのに、わざと格好よく、神業っぽく見せる為に二発使用したのである!


「デコピンショットで……マジかよ?」


「てか、あの兄ちゃんの指、射的の銃より威力あんの?」


「二発目当たったの偶然?……計算だったらヒトじゃねぇ……」


ギャラリーが見守る中、おっちゃんの判定は……セーフとされた。証拠が見つからない以上、当然の帰結であったが。


「さて……騒ぎになりそうだし、残りは速攻で終わらすか……」


剣は小皿に乗せられた残りのコルク弾を全て皿から放り上げると、その全てを連続で指で弾き飛ばした。残弾八発は各々キャラメル等の箱菓子を狙い通りに撃ち落とした。


前の二発は誰の目から見ても、スナイパーの如く狙いを定め、指に力を込める動作があったが、今度は落下中の弾を適当に弾いたようにしか見えないのに……全弾命中。


誰もが疑わなかった。アレは……神業だったと!


その後も、剣の兄バカ屋台攻略は自重無しで進撃した。


スーパーボールすくいでは、ボールを重力魔法で吸い寄せモナカを熱魔法で乾かし……


金魚すくいでは水温を下げて金魚の動きを鈍くさせたり……


ダーツなんて魔法を使うまでもなく……


梓がくじ引きで天然のLUK値の高さを発揮してゲームハードを当てたりなんて事もありつつ……


弓と安芽が燕を甘やかして色々と買い与えた為……




「それで、こうなりました……」


以上が、実鳥達と合流する迄の顛末だった。


「……うっははあ!お兄さんおもろいわぁ~。ま、確かに燕ちゃん並外れてかぁいい幼女やもんな。ウチも一緒におったら甘やかさん自信ないわぁ~」


「確かにね。天使と言われても信じられるレベルだったし。それで……他の人達は?」


「散々食って遊んで……燕がおねむになっちまってさ。来る途中に休憩所を見つけてたから、そこで休んで待ってるよ」


「そうですか……剣さん!お兄さんとして燕にイイとこ見せたい気持ちは私にも解りますけど……甘やかし過ぎは駄目ですからね!」


実鳥に叱られ、少しシュンとする剣。お祭りだからと、多少気が緩んでいた自覚はあったようである。


「おお!みっちゃん強ぉ!」


「結局、妹に甘いお兄さんなんじゃない?みっちゃんも妹なんだし」


こうして、剣はめでたく実鳥の友達にもシスコン認定されたのでありましたとさ。






燕が可愛さだけで無双する話になってしまいました……兄と姉達から無自覚に様々なモノを学習して吸収しているので、一番チートなのかもしれない……父親からも変なモノを……

次回からは、双子の誕生日編に入ります。


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