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94話目 おつかれさまでした!

修学旅行のエピローグ的な?話です。

翼と希の部屋の前に立ち、心を落ち着けると、剣はドアをノックした。


「翼、希、俺だ。入っていいか?てゆーか、服着てくれ」


くつろぎモードになると、脱ぐ傾向にある双子相手に、実の妹相手にラッキースケベを発生させないように剣は慎重である。特に今日は桜も一緒なので、桜が双子の過剰露出に興奮して暴走すると話が進まなくなるので、精神を研ぎ澄まして絶対に不注意厳禁としているのであった。


「兄様……ラッキースケベを全否定するラブコメ主人公にあるまじき隙の無い硬派な生きざま……格好よくて憧れますが、少しは見直すべきだと思うのであります!」


「いや……実の妹相手にどうしろと?俺に何を期待してんだ?」


「それは勿論!二次創作の薄い本的な展開を!」


これ以上なく煌めく眼鏡。サムズアップして清々しいキメ顔をした桜がそこにいた。


「……バイ、コスヲタ、眼鏡、ブラコン、シスコン、女体化転生……お前が一番薄い本の犠牲者になりそうな属性持ちだけどな」


「それはそれでアリなのです!そこまで人気になったら本望であります!」


「そうだな~桜はそーゆー奴だったな……」


自身が凌辱されてる画でも見えているのか……中二の乙女(一応)かヨダレを垂れ流している……剣は見てない事にした!


「おに~ちゃ~ん、ど~ぞ~」


「服着たよ~」


やっぱり、全裸もしくは半裸であったらしい。


「じゃ、入るぞ~……」


「姉様方、お邪魔いたしま……」


部屋に入った剣と桜は、ベッドで寝転ぶ翼と希を見て……固まった。


……服、着てねえし!


「どうしたの二人とも?」


「ちゃんと、ブラとパンツ着けたよ?」


双子の感覚では、家では下着=服なのであった!


「……ラッキーとかでなく……シンプルにスケベな姉様達だったのであります!グッジョブ!最っ高にエロエロなのです!」


案の定、桜のテンションはリミットブレイク!自らも痛Tシャツとスウェットを脱ぎ捨ててベッドにダイブした!


「……コイツらの教育、完全に手遅れだな」


桜も含め、実妹三人がほぼ全裸でベッドの上で戯れる光景……同世代の姉妹のいない男子からすれば羨ましすぎるシチュエーションであるが、剣にとってはイライラするだけの状況でしかない。何しろ、けっこう真面目な話をしに来ているのである。


「お前ら……鬼畜化した兄貴に、揃いも揃って犯されたいのか?」


当然剣にそんなつもりは皆無であるが、少々おふざけが過ぎる妹達に、お仕置きが必要だと感じるぐらい、怒りのボルテージが上がっていた。それは、漏れだした魔力が電撃に属性変換され、ジジッ!バリバリッ!と視覚的、聴覚的に表出された事で、三人の妹に剣が本気で怒っていることを如実に伝えたのであった。


三人は桜を中心に素早く横並びに正座すると、挙手して剣に返答した。


「避妊さえして戴ければ、寧ろ兄様に初めてを捧げるのは本懐なのであります!」


「右に同じく!」


「左も同意!」


……手遅れだね♪


「……そうか、じゃあ、三人揃って……取り敢えず逝っとけ。ちょいと痺れて、少し痛くて気持ちいいだけだからな♪」


とてもスッキリした笑顔で、剣流電撃魔法[拡散微弱電流(電気鼠程じゃない)]が三人の妹達に放たれ、炸裂したのであった。


「しゅ……しゅごかったのであります~」


「不覚……とても……よかった……」


「癖に……なるかも……」


返って悦ばせてしまった感もあるが、それはそれで次があったら〝御褒美〟として与えればいいかと剣は合理的に判断する事にした。そうすると一先ず三人にシャツを着せると本題に入ったのである。


「それじゃ始めるぞ?修学旅行の土産話ファンタジー編をな」


剣の言葉に、三人は姿勢を正した。剣が言うファンタジーとは、家族でも転生経験者である彼女達にしか易々と受け入れられない現実だからである。


「じゃあ先ず三人共……コイツに触れてくれ」


剣が懐から取り出したソレに、桜が早速食い付いた。


「こ……コレは!小さいけど……モノホンの刀ではありませぬか!?くあー!日本男児のロマンがここに!」


「お兄ちゃん、どんな手段で入手したの?」


「ヤの付く自由業と戦争してきた?」


対して双子は冷静であった。剣の実力を知った上での現実的な考察と言えたが……


三人が言われた通りに小刀に触れると……


『は、初めまして妹様方。私は主……剣様に仕えさせていただいております。名前はヒナ。以後、宜しくお願い致します!』


三人が揃って焦りの表情で剣に振り向き、剣がそ知らぬ顔をしているのを確認すると、再度小刀に触れた。


『あ……あの……えと……信じられないかもしれませんが……』


不安そうに響くヒナの声。受け入れてもらえないかも……そんな考えが過った……その時!


「すっ……げえぇぇぇ!!!喋った!武器が喋ったぁぁぁ!!オカルト?ハイテク?兄様!関西ではなくミッ○チルダに行っていたのでありますくわぁ!?」


「……表面の質感は完全に木材。外付けコネクタ類皆無……刀身の確認を実行……この金属……何?」


「判らない……未知の金属?合金?刀身に電子工学的加工確認出来ず……束の体積からして……有り得ない……現代地球の科学技術的に、スムーズな会話が可能なCPUを搭載出来る筈が……」


三人共、目の色を変えてヒナに魅入ったのである。大体、剣の予想どうりであった。


「びっくりするのも当然だが、科学じゃなくてオカルト寄りだな。俺の前世と同類だと思ってくれ」


「……実物を前に、疑う術は無し」


「お兄ちゃんの前世が剣だった説、信憑性が急上昇」


「なんだよ……信じてなかったのか?」


「検証不能なので、どーでもよかった」


「魔法使いであることは疑いもしなかったけど」


翼と希は割と猜疑心が強い方であるが、自分達で確認した物証や事例については常識よりも優先する質である。


それは、現代の地球とは比べ物にならない程発達していた科学文明で生体兵器として()()され、所有者の命令に従うだけの合理的判断しか出来なかった経験を持ちながら、その為にインプットされていた情報では理路整然とした説明が不能な現象。転生した上に分裂し、完全同一の記憶を保有していて精神感応まで可能となっていた体験をした事が大きく影響し、常識的な合理的判断に優れながらも、常識外の存在に対しても思考停止に陥らない柔軟な感受性をも有するに至ったからなのであった。


「それで……この子は何者?この刀身を形成している金属……前世の知識にも……覚えが無いのだけれど?」


「その辺りの説明よろ」


「そもそも本題な。まぁ……俺が転生してから最大のファンタジーだったのは間違いなくてな……」


剣は凄~くザックリと、裏京都に迷い込み、百鬼夜行みたいな妖怪集団を目撃したり、剣士な陰陽師のお姉さんを泣かしたり、そのお家の門を魔法付与したキックで破壊して押し入ったりしたあげく、お近づきの証し的にヒナを贈呈されたのだと説明した。


「……成る程!正当な報酬でありますな!」


「陰陽師の老人、賢い。そして幸運だった」


「法の保護下にない空間で、お兄ちゃんに敵認定されたら殲滅確定だった」


誰も、葛乃葉さん家が被害者だとは思いもしない!お兄ちゃん=正義な、とても良い子な妹達だった!


剣はとても満足そうに頷いた。


「それでヒナを貰った訳なんだが、正直葛乃葉でも持て余していたみたいでな。実際、武器としては役立たずだしな」


三人の妹達は、揃って首を傾げた。


「……イミフ、とても鋭いのに」


「楽に首斬り出来そう。暗殺向きだと思う」


「……ガチの殺害経験のある方の発言は、説得力が違うのであります……何か、切れ味が悪くなる呪いでも付与されているのでありますか?」


「桜、惜しい!呪いってのは近いな。コイツな……血が、苦手なんだ。恐怖症と言うのが正しいと思う……」


「「「……はあ!?」」」


「所持者の視覚を通して血を見たり、刀身が少し血に濡れるだけで……頭がガンガン痛くなる程、叫んで喚くんだ……」


ず~ん……と、暗い顔をする剣を見て、妹達はそれが真実なのであると判断した。


「更にイミフ。果物ナイフの方が武器になる」


「あ、投具として使えばどう?」


「姉様方……本人を前にして、それはどうかと……武器として生まれたのであっても、それ以外の道も有っていいのではありますまいか?」」


「ぬ……桜、悔しいけど正論。失言だった」


「確かに。向いてることよりやりたいことが私達のモットーだった」


前世で自由意思が許されない一生を過ごした経験を、双子は忌むべきモノとしている。転生して知った誰にも強制されたり矯正されない生き方こそ、知能を持つ生物として在るべき姿であるとしているのだ。なればこそ、小刀として生まれたヒナに対して、小刀としての機能を全うすべきだとする考えは、双子にとって明らかな失言であった。


双子は改めてヒナに手を置くと、深々と頭を下げた。


「イミフとか言って、ごめんなさい」


「投げたりしないから、許してほしい」


『い、いえ!頭を上げてください!自分が役立たずなのは……本当なのですから……』


謝罪を受けてのヒナの返しに、双子は引っ掛かりを覚え、剣に確認するのだった。


「お兄ちゃん。ヒナちー役立たずだった?」


「たった二日で何があったの?」


そう、ヒナが剣の所有物となってから二日しか経っていないのである。双子はとても鋭いので、ヒナの僅かな返答から〝何か〟が起きた事を察し、それはヒナに役立たずであることを自覚させるに足る事案である筈だと推測したのである。


「そうだな~……まあ、面倒ではあったけどまるっきり役立たずって訳でもなかったぞ?気配察知に関しちゃ悪くないレベルだったからな。ただ……戦闘中に流血で騒がれるのは、ちょっとなあ……ヒナが直接の原因じゃなかったけど、軽く死ぬかもって思ったからな~」


「……は?に、兄様……今、死ぬかもと、口になさりましたか?」


剣の台詞に、桜は顔面蒼白で質問した。翼と希も愕然としている。日常生活に於いて「死ぬかと思った」なんて言葉は、普通ならありふれたスラングでしかない。精々「危なかった」「凄く疲れた」等の意味で訳される言葉である。しかし、口にしたのが剣である場合、妹達にとっては、それはそのままの意味と成る!


「お、お兄ちゃん!本当に何があったの?何と闘ったの!?」


「ヤバイって問題じゃない!お兄ちゃんに匹敵するバケモノが他にもいたの!?」


普段の口調が吹っ飛ぶ慌て様に、剣は「説明するから、何とかしたから大丈夫だって」と落ち着かせた。そして――


「……前言撤回、ヒナちーの血液恐怖症は、スパルタで徹底的に矯正する」


「お兄ちゃんの命に係わる……故に、先ずは鮪の刺身をネギトロに使えるまで、ネチョネチョになるまで刻み叩く……」


『ひ……ひええぇぇぇ!?』


こうして双子は、ヒナの教育係に任命されたのであった。ここだけの話、前世では情報収集の為に尋問・拷問の経験があるので、悲鳴や絶叫への耐性はバッチリである!


「気の毒ではありますが、これも兄様の為になるのです。ヒナたまに敬礼!……と、気の毒と言えば、バフォメットらしき悪魔さんもでありますな。兄様と遭遇するとかツキが無さすぎるのであります!」


「逆に、俺がツキ過ぎてたって気もするけどな。少し歯車が噛み合わなかったら……最悪な結末だってあったかもって考える程度には、本当にヤバイ相手だったからな……」


前世の〝無銘の聖剣〟と同等の魔力があれば……そんな思いが過り、剣は頭を振った。失った力を嘆いても仕方が無い。現在有る力を鍛え直さなければと。


「……あんなのが地球にもいる?出る?……ってのが判ったのは収穫だったな。もっと上位の……七大罪とか……悪魔がいるなら天使だっているかもしれない。備えておかないとな……」


自身のトラブル体質を鑑み、剣は人外との戦闘を前提とした鍛練を開始する事を決めたのであった。


「ホント、俺は静かに生きていきたいだけで、大それた野望なんて持ってないから放っておいて貰いたいだけなのにな……」


心底……草臥れました!ガックリ肩を落とした剣を心配するように、三人の妹は剣に静かに近付くと……一斉に抱き着いた!


「「「修学旅行、お疲れ様でした!」」」




5月編終了!

次回から6月編に入りますが、取り敢えず1話完結のゆる~い話にしたいと思います。

……誰を主役にするか決まってません!

まあ、日曜日には更新……したい。


※遅ればせ

修学旅行のお土産関係は、ほぼ想像です。あったらいいな~程度の架空です。事実確認してませんので悪しからず……

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