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58話目 小町の部屋 前編

今回通しで小町視点です。

一番普通?な感性な子から見た聖家……

楽しんで貰えるかなぁ~?

朝食の片付けを終えた後、私は部屋に閉じ籠った。こういうとき、一人部屋は有り難い。落ち着いて……或いは見苦しく唸りながら考え事が出来るから。


家で一人部屋なのは私の他に、光姉さんと兄さんだけ。部屋が余っていない訳でなく、自然とそうなった。私も低学年の頃は光姉さんと一緒の部屋だったけど、お父さんが再婚したのを切っ掛けに一人部屋を希望した。新しい義姉達に、甘えん坊だと思われたくない……そんな、見栄からだったのは……秘密だ。


そう、そんな見栄を張るほど、私は甘ったれだった。私の記憶にある最大の失態……そのトラウマもあり、私は光姉さんを怒らせる事以上の恐怖はないと思い込み、その結果光姉さんの機嫌を損ねないように、ベッタリついて回り、率先してお手伝いをするようになった。すると、光姉さんだけでなく、家族みんなからとても褒めて貰えたので、幼い私はその心地好さに味をしめてしまったのだろう……認められたがりの甘ったれな私はこうして出来たのだった……他人には言えない黒歴史だ。


……いけない。考えないといけないのは、今、私が抱えている問題だ。そもそもの発端を思い返してみれば……私が大人気なく、世渡り下手で、上手く受け流せなかったのが問題だったかも。


真面目に聞いてるフリだけして、適当に相槌打てていれば……いや、それに気付かれたら、情熱先行型の正義感押し付け新任教師は嘗められてると腹を立て、薄っぺらい説教を延々続けただろう……絶対御免だよ。


あぁ駄目。どうしたらじゃなくて、これからどうしよう?だよ。まぁ、あれから新任教師の私を見る目に、良くないモノを感じる事はあるけど……現状実害ないんだよね。実害と言えば、余所のクラスの転校生かな。なんだか、奴が来てから雰囲気が宜しくない。「女が生徒会長とか最悪じゃん!」……聞こえてんのよ!腹立つ!どうにかしないと……


前の校長先生からの注意が、どれだけ効果あるのかなぁ……?とゆうか、兄さんの交遊関係何なの!?大して友達いない感じなのに、どうゆう人脈よ?……それに、三対一で喧嘩に勝っちゃう小学生って何!しかも無傷でサラッと!……都市伝説が、自宅に実在しているよ……解んない。身近な存在なのに、理解が追い付かないよ……


それにしても、あんな立派な大人に信頼されてるなんて……兄さんって、私が考えてたより……凄い。家だと普段、梓姉さんとイチャイチャしてたり、ペットのブラッシングしてたり、時々手の込んだ料理をしたり、桜姉さんにコスプレ付き合わされたり、燕のお馬さんになってたり、翼姉さんと希姉さんを侍らせて寛いでたり、響ちゃんが遊びに来たときホストの真似事させられたり、光姉さんをこっそり甘やかしてたり……無いよ、武力に繋がる事。兄さんの部屋にダンベルとか筋トレ器具が転がってるけど、それだけじゃない!?益々謎だよ……


やっぱり、直接訊くしかないかなぁ……でも、今更距離を狭めるのも……もどかしい、のかな?これも、私が子供だったからだ。変に距離感出来ちゃったの……私のせいだし。




お母さんが亡くなって、私は当然泣きわめいた。悲しくて、納得できなくて、どうして私のお母さんがって……とにかく、誰かに縋って泣くしかなかった。でも……兄さんは、私の傍にいてくれなかった。


兄さんはずっと、桜姉さんの傍にいた。


私が辛くて、苦しくて、助けを必要としていたのに、何もしてくれなかった。


私より、桜姉さんが大事なの?


私は、どうでもいいの?


どうして私を、放っておけるの?


そんな事を、本気で考えてた。


……全く、幼い頃の自分の無知が嫌になる。自分が世界で一番不幸だなんて思い込んでたなんて……


桜姉さんは、お母さんを失っただけでなく、一緒に事故に巻き込まれて大怪我して、お母さんの傍にいたのに、何も、出来なかったんだ……


それが、どれだけ無念だったか。悔しかったか。無力感に心が潰されてしまうか……今の私なら、少しは想像できる。


実際、後から光姉さんに聞いた話では、桜姉さんの取り乱し方は、私の比ではなかったらしい。支離滅裂に錯乱してしまい、兄さんにしか落ち着かせる事が出来ない状態が何日も続いたみたいで……あの頃、桜姉さんを支えられるのは兄さんだけだったんだ……


私には、光姉さんが。お父さんが。翼姉さんが。希姉さんが。響ちゃんもいてくれたのに……無知は、罪だ。


結局、私は兄さんから大切にされてないと思い込んで、避けるようになったり、素っ気ない態度をとるようになってしまった。勿論、誤解していたと気付いてからは、改めようとも思っているんだけど、一度作ってしまった溝は、そう簡単に埋められないし……それに、自分が成長したからこそ解ったんだけど……家庭内で実の兄と姉がイチャイチャしてるのは目に余る!そりゃ、二人は血が繋がってないんだから問題無い……無いよね?無いんだろうけど……文句も言いたくなるよ!素直にもなれなくなるっての!訳解らないスパイラルに陥ってるよ……


「どうしたら、昔みたいに……」


お兄ちゃんって、呼んでた頃のように、素直になれるんだろう?どうして姉さん達は、恥ずかしげもなく……


「小町ー、入っていいー?」


ドアをノックする音と同時に、翼姉さんの声がした。多分、翼姉さんだと思う。正直、希姉さんと声で区別するのは無理。


……もっと正直言うと、うん、見分ける自信もない。だって、見分けさせる気が絶対にないし!個性全く同じだもん!


「は、は~い。どうぞ~」


一人でモヤモヤしてたし、丁度いいかな。


「おじゃま~」


「相変わらず、整頓されてる」


やっぱり、二人でくるよね。しかも、お茶とポテチを持ってきてるし……長居する気だ~。


「えっと、姉さん達、何用なのかな~?」


「……お兄ちゃんに、釘刺された」


「なので、当面調査だけにする」


リサーチはするんだ……まぁ、実力行使に出ないなら、いっか?


「そう……冷静になってくれて良かったよ……心配してくれるのは嬉しかったけど」


「心配は当然の事」


「しない方がおかしい」


調子狂うな。普段は二人で常人の何乗も巫山戯ているのに、ぶっきらぼうな口調も相まって、妙に凄味があるんだから……真面目な姉さん達、違和感有りすぎだよ。


「小町、難しい顔してる?」


「ストレス発散は、食う。寝る。遊ぶが基本」


「……だからって、朝ごはん食べたばかりでおやつは無いし、寝たら太るでしょう……」


この連休中、私は少々気が弛んでいた。きっと、学校から離れてリラックスが過ぎたのだと思う。お腹が苦しくなる程食べてはいなかったけど、糖分や炭水化物に脂肪分を含んだ食べ物を多く食べてしまっていた。ハッキリ言って、かなりやってしまった感で一杯です。


「「私達、太らない体質だから」」


なんて……女の子を敵に回す台詞でしょうか!羨ま妬ましい!


光姉さんも太らない体質だけど……この姉さん達は更に、余剰脂肪分が胸以外にいかないんだよね……私はあんなに大きくなるの嫌だけど。


「ホント、太らないよね。それに、おっぱいばかり大きくなっちゃって……男子の視線とか、鬱陶しくない?」


「仕方無いと割りきってる」


「人気の一部であるからして」


「いや、そこは音楽的実力でファンを増やしなよ」


二人がやってるバンドのライブ、生で見たことないんだよね。動画は見たことあるけど、とてもワクワクした。だから、別にお色気的なのウリにしなくていいと思うんだけど。


「小町、ビジュアルは大事」


「それに私達、音楽だけに拘ってない」


表情に出てたかな?


「……バンドでプロになりたいんじゃないの?」


「勿論。プロデビュー出来れば、する」


「でも、二人で同じ仕事するのが第一」


話を聞くと、翼姉さんと希姉さんは将来的にも一緒にいると決めてるみたいで、それは仕事もプライベートもらしい。


……どんだけ仲良しなの?


「実現するかは兎も角、姉さん達も将来考えてたんだね。私は、まだまだだなぁ」


「小町は将来の夢、未定?」


「昔は、お兄ちゃんのお嫁さんと言ってた」


うわ……私、ド定番な事言ってたんだぁ……


「それ、幼稚園頃の話でしょ?恥ずかしいなぁ……」


「仕方が無い。お兄ちゃんレベルの男はそうそういない」


「あれで野心があったら、天下取ってる」


評価が絶大過ぎる!確かに、苦手な事そんなになさそうではあるけど。でも……二人は今でも兄さんに甘え放題してるし、私程過少評価してないのも事実ではあるよね……


「兄さんって、学校とかだとどうなの?私、家でしか知らないし」


「どうって……本人の意図に反して……王様的な?」


「完全に忖度されちゃう側。教師にも」


「どうしたら……そうなるのよ……」


「降りかかる火の粉を払っていたら、自然と」


「やられたら倍以上に。やられると判断したら、反撃する気もなくなるまで先に叩き潰す主義だから」


「お姉ちゃんが卒業して、それまで大人しくしていた連中が、その弟妹にちょっかい出してきた」


「その弟が、姉よりもっと恐ろしい魔人でしたと言う話」


「お兄ちゃんが入学して一ヶ月で、二十人以上高校からいなくなった」


「ここが法治国家でなければ、現世とさよならだった」


本当に都市伝説が家にいた!よく、退学にされないな……あ!忖度されてるんだ……


マジで謎です。兄さん、怪我どころか、目立った擦り傷さえ着けてた事無いのに……実際喧嘩してるとこ見たことないから実感出来ないよ。どんだけ強いの!?


「そんなに強いなら、格闘技でもやればいいのに……絶対いい線いくでしょ?」


む……なんですか、その呆れた顔は?


「小町、勘違いしてる。お兄ちゃんは基本的に争いを好まない」


「強いのと、好きかどうかは別問題。それに、お兄ちゃんの強さは格闘技とは別次元。競技とか、根底から覆す」


「ど、どういうこと?」


「「お兄ちゃん、魔法使いだから」」


……本気で答える気、ないのかな?


「姉さん達……私、オカルト否定派なんですけど。それ、時々言うけど、魔法使いなんてこの世にいません!二人とも理数系なのに何言ってんのよ……」


む……更に〝解ってないな〟って顔してる。どーせ私は頭でっかちですよう。頭ごなしにオカルト否定しますよ。


「小町、魔法使いはいるし、宇宙人もいるし、異世界召喚や転生だってある」


「そういった不可思議現象を解明することこそ科学。『無い』ではなく『ある』を実証してこそ発見。理数系はオカルトにこそ、未発見の余地を見出だす」


「……でも、実証出来ないでしょ?魔法も宇宙人も」


「お姉ちゃん達の言葉を、ここまで信じないか」


「小町、実証したら、土下座ね」


!?……す、凄く自信在り気なんですけど。いや、まさか……


「い、いいよ!証明出来たらね!」


「い、いいよ!証明出来たらね!」


んなっ!……録音されたっ!?


「言質はとった」


「努々忘れぬように」


「ま、待ってよ!じゃあ、証明出来なかったらどうするのよ?」


な、なんて不適な笑み……


「存在の証明に於いて、最も難解なことは」


「不確定を『無い』と証明すること……小町は、私達に『無い』と証明して、納得させられる?」


やられた……この勝負(?)は、初めから私に勝ちが無い。いや、超常現象なんてないのだから、姉さん達にだって勝ち目が……あるわけないのに……めっちゃドヤ顔してるぅ~!


謎だ。兄さんだけでなく、翼姉さんと希姉さんも謎だらけだ……思った以上に私は、私の家族を知らなすぎる……





最初は小町から見た剣と、他の姉妹から見た剣の差違を比べるだけの予定だったのですが……

この際、他の姉妹との関係性も掘り下げることにしました。

前編としましたが、次回が中編になるか後編になるか……ぶっちゃけ未定です。

取り敢えず次回の小町の部屋、ゲストは光です。

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