54話目 桜乱舞
週末、幕張で遊びすぎて(JのFに行ってました)投稿遅れました。謝罪はしますが反省はしない!
本文と関係ないけど……テニ○リっていいね!
マジすんません。
「なあぁぁぁっ!!?」
それは、誰の叫びか定かでないが、野太い男の絶叫だった。
遥がおしぼりで涙もろともメイクを取り払ったその時、そこにいたのは柄の悪い似非レディース崩れなどではなく……瞳を潤ませている、童顔の金髪美少女だったからだ!
「な、なに……ひいっ?」
金髪美少女は、雄叫びに脅えて顔面蒼白となった。つい先程、長女サマに夢と希望を微塵切りにされ、生きているだけだった農業青年達が、目を輝かせ猛然と遥に迫って来たからである。
「うおおぉ!遥ちゃん、君は天使か!?」
「頼む!付き合ってくれぇ!」
「一生食うに困らない畑と土地ならあるから!」
必死。独身男性の皆さん、滅っ茶必死。そして遥はガチでガクブルする程引いている。
それは、この場にいる数少ない御近所の女子学生達も同様である。
「……ここの過疎化って、少子化だけが問題じゃないよな……」
「あんな手のひら返しを目撃されたら、見下げ果てられて当然だよね~」
剣と梓は、冷めた目で状況を分析していた。
「うん。魅力の欠片もない」
「そして品もない」
翼と希はコクコクと頷いた。
「み、みんな落ち着いてないで、お姉ちゃんを助けて~!」
狼の群れに囲まれた子羊と化した遥。なのにクールな態度を崩さない義兄と義姉達に、実鳥は堪らずSOSを求めた。
そう、この状況下で、剣が落ち着き払っていた。義理であろうと、妹が本気で怯えている状況なのに。
それは……自分が出るまでもなかったからである。
「てめえらぁ~!性欲丸出しの小汚ねぇ面で遥義姉様に近付くんじゃねぇにょー!」
「ぐぼはぁ!?」
白き魔弾と化した桜が、宙返りの勢いそのままに、遥を取り囲んでいた男の一人に渾身のキックをぶちかました!
「あぎょっ?」
更に、着地から空かさず上段回し蹴りでもう一人!
「げぼっ!んぎゃっ?」
続けて再度飛び上がりジャンピングキック!しかも、インパクトの瞬間に逆の足でも踏みつけるダブルキックを放った!
「……ク○ガからカブ○、○ブルのライ○ーキックコンボか」
「流石にダブ○さんは再現に限界あったけどね」
「あれは、素粒子レベルでの分解・再構成を瞬時に可能とする技術がないと無理」
「平成ラ○ダーは、生身で再現不能な技が多くて大変」
桜に任せて、四人は完全に傍観者となった。
光も落ち着いているもので、串焼きの調理に専念していて平然としたご様子。
燕は煌めきアイで桜を見詰め、実鳥と小町は唖然としている。遥は、それ以上に呆然としていた。
桜は、まるで世紀末救世主のように悠然と遥に背中を向けて仁王立ちしていた。心なしか、顔がとっても濃く見える……
「てめえらごとき三下がぁ!遥義姉様とお近づきなろうだなんて身の程を知るがいいにょ!時と場合と品格を考えてから行動しやがれにょ!」
そして始まった乱闘……ではなく、蹂躙。繰り出されるは、必然、アニメやゲームの必殺技だ。
「昇○拳!」
「んぎゃぁぁあ!」
「ひっさぁつ!シャァイ○ングゥ・フィンガー!」
「止めてぇ!許してぇ!」
「ペガ○ス流星拳!」
「ごめんなさい!ごめんなしゃいぃ!」
「ギガ!ドリル!○レイクゥゥ!」
「ふぎゃあぁぁぁっ!!?」
※実際には、技名叫んでるだけの徒手空拳だけです。順に、ただのカエル飛びアッパーと、かなり痛いアイアンクローと、兎に角パンチを連発して、コークスクリューばりに捻りを加えた貫手です。
倒れ伏し、積み重ねられた男達の体を踏みつけ、天を指差すは……猫耳娘である。軽々しく光から遥に乗り換えようとした男達が不快だったのか、女性陣から拍手喝采で讃えられている。
「さ……桜姉さん?めっちゃ強くない?」
体格の良い成人男性を難なく薙ぎ倒してゆく桜の勇姿?それに小町が戦慄の表情を浮かべた。
「あれ?小町は桜が戦ってるの見たことなかったか?」
「いや、普通見る機会なんてないからね?今どき学校で暴力沙汰なんて大問題だから!」
「そっか……まぁ、俺が鍛えてるから、この程度出来て当然なんだけどな」
「鍛え……?意味わかんない。兄さん別に、格闘技の段とか持ってないよね?噂は耳にしてるけど……」
歳が離れているため、小町は剣と共に同じ学校に通学した事がなく、剣がどんな小学生であったかを人伝の噂でしか知らない。その噂も、家庭内では一切の物理的暴力行使をしない剣の人柄故に、信じるに値しない都市伝説のような物と認識しているのである。ほぼ、噂は真実だったりするが。
さておき、桜は異世界トップクラスの傑物達と感覚を共有し、膨大にして稀有な戦闘経験を有する剣と。これまた異星のトンデモ先進文明の産物であり、高等な戦闘技術をプログラムされていた翼と希からも面白半分に指導されたりしていて、かなり可笑しいレベルの戦闘能力を有しているのである!
……天然で、それを軽く凌駕する光はもっとどうかしているが。
ともあれ、邪魔者が速やかに排除されたので、パーティーの再開である。明日から、祖父母の近所付き合いに微妙な空気が漂いそうではあるが、取り敢えず、孫娘の無双を爆笑して見守っていたので皆スルーしていた。
「それでは有象無象が虫の息な大人しさになったのでパーティーの進行を再開しますにょ!誕生日と言えばプレゼント!プレゼンターは、ばあ様ですにょ!」
待ってましたと、麻紀が綺麗にラッピングされた長方形の包みを両腕に抱えて遥に手渡した。
「はい。おめでとうね遥ちゃん。似合うといいんだけどねぇ」
「あ、ありがとうございます……似合う?服、ですか?」
「えぇ。これからの時期に合うと思うんだけどね。サイズは梓に教えてもらったから合ってる筈だよ」
「梓に……?何だ?なにか……」
腑に落ちない。疑問溢れんばかりの表情で遥は梓を見詰めた。何故、梓なのかと。普段、洗濯をしてくれている光でなく……
「どしたの、はるるん?」
「……どーして、お前がアタシの服のサイズを知ってんのかと」
遥はプライベートでお洒落に気を遣わないので、梓に服を作ってもらうために身体のサイズを計測させたことがない。日常的に洗濯をしている光ならば知っていて不思議ではないのだが、サイズを知るために洗濯物を漁られたと考えたりして、多少嫌な気分になったのである。
だが、梓はそんな予想をあっさり覆した。
「何故かと問われれば、こないだ直接身に纏ったからだよ!ハルにゃんの改造メイもごっ!?」
絶対三文字目は言わすまいと、50ヤード4秒2もかくやな速力で接近され、梓は口を塞がれた。
「勝手に人の服着てサイズ測るとか……変態!個人情報泥棒!」
「むごもご……ぷはっ!ちょこっとレンタルしただけじゃないの~!そ・れ・に!厳密にはあの服の所有者はさにゃえちゃんだし、正式な借り主はつばぞみじゃん!……てゆうかさぁ~」
「な……なんだよ?」
「はるるんさぁ、おばあちゃんにはるるんのスリーサイズをメモった紙を渡した時におねーちゃんも見てたんだけどさ……愕然としてたよ?はるるん、相当キツいブラしてるでしょ?いや、ウエスト回りがパッつんだったのに、胸周りが……とは思ってたんだよねぇ~。おっきく見えると恥ずいの?どんだけ乙女なの?」
「お、乙女ゆーな!ぶっ殺す!」
おばあちゃんから受け取ったプレゼントをぶんまわし、梓を成敗しようとする遥であったが、梓は笑いながら巧みに避けまくる。遥はかなり本気で追い掛けているのだが、周囲からは女の子同士でじゃれあっているようにしか見えず、生温かい視線と、お互いを応援する声援を贈られるとゆう不本意な結果を招くのであった。
「……あ、ケーキ分けてもらおっか?燕、ケーキ食べる?」
「たべう!」
小町は無意味と理解しつつ、現実逃避し他人のフリと、燕の世話に専念することで羞恥心を押し隠すのであった……
「……え~、非常に貴重なほんわかキャットファイトが展開されとりますが、皆!早速誕プレにお着替えした遥義姉様が見たいんかにょ~!?」
沸き上がる歓声。拍手。突き上げられた拳。その熱気にあてられ、遥の動きがピタリと停まった。
「え?なに?何なの?」
「それではここで、お色直しタイムにょ!桜もしばし席を外しますので、御歓談をお楽しみ下さいにょ~」
「うわ?ちょ、待てって!」
遥に落ち着く隙を与えず、逃す隙も与えず、桜は遥を抱えあげると、家の中へと「お持ち帰りぃ~!」したのであった。
「だ、大丈夫かなぁ?桜ちゃん、やり過ぎないかなぁ……」
実鳥はとても心配そうに玄関を見詰めた。そんな彼女の両肩に、翼と希がしなだれ掛かった。
「問題ない。桜はおばーちゃんの気持ちを無下にはしない」
「あれで中々の美的感覚している。余計な手は入れたりしない」
「う、うん……でも、手を加えないのも逆に……」
素顔で既に美少女。それを知り合いに見られる事を恥ずかしがっているのだから……薄化粧で魅力を引き出されたりしたら、果たして姿を見せられるのか……?
「まあ、グズったら強引に引っ張り出す」
「晒し者になってもらう」
「……見逃すって選択肢はないんだね……まあ、お姉ちゃんも着替えくらい素直にしてくれればいいと思うけど……もう、強がる必要なんてないのに」
実鳥は思い返す。遥が攻撃的な外見や言動をするようになったのは、実鳥の為であった事を。実父から、心ない他人から、世間から……ひたすら弱味を見せずにいる為だった。
でも、そんな必要は、今や全く無いと言えるのだ。家族仲は良好そのもの。逆に、幸せ過ぎて不安になるくらいなのだから。現に、遥も漸く家の中では素顔を見せるようになった。趣味や性格的にも見せればいいのに……と。
「やあ!我が娘達よ!楽しんでるかい?」
「「「いたの?」」」
「いたよぉ!扱いが雑だよ、マイドーターズ!」
敏郎お父さん、娘達の眼中に無し。そして存在すら気にされていなかった。
「お義父さん……駄目ですよぉ、またそんなにお酒……」
「三日酔い確定的」
「おねーちゃん達、明日帰るの遅れそ」
「たはは……しかしねぇ、こんな目出度い日に飲まないなんて、お酒にもパーティーにも失礼じゃないかな?」
「飲むと、飲み過ぎは意味違う」
「むしろ吐く方がお酒に失礼。むしろ無礼」
「お義父さん……燕はまだ小さいんですから、身体を大切にして下さい」
娘三人からダメだしされて、お父さんは嫁に甘えて自らを慰めることにした……
「美鈴ぅ~娘達が冷たいよぉ~」
「あらあら、仕方ない人ですねぇ……みんな心配してくれているのに……」
美鈴の胸に顔を埋める敏郎。その様子に、またしても独身男達が復活する!そう……敏郎こそ彼等の憧れにして嫉妬の対象!三度も結婚していて、歳の離れた若く美しい嫁と可愛い沢山の娘に恵まれている人生の勝利者なのであった!
「これ見よがしかぁ~!」
「何故だ!不公平が過ぎるぜ神様!」
嫉妬と羨望の叫びが渦巻く中、それでも敏郎は娘達に無下に扱われたと感じてしょぼくれている。他人から見れば羨むような人生でも、娘にあしらわれるのは、それとは別次元的な問題なのであった……
その一方、串焼きをしている光は、妊娠と婚約をご近所の女性陣に祝福されて上機嫌そうに微笑みを振り撒いていた。特に、年下の少女達にとっては『本の中の人』『マジで芸能人』であり、素敵な御姉様でもあるのだ。家庭外では、まだまだ株価は下落していないのである!
「やれやれ……全く何をやっても騒ぎになっちまうな、俺んちは……」
「ま、いつも通りの日常なんだから、喜ばしい限りじゃない?」
もう、誰も突っ込まないぐらい、自然に寄り添ってバーベキューを頬張る剣と梓。とっくに田舎でも周知の仲であるので、義理の姉弟であることも、誰も気にせず羨まれもしない……一名を除いてのようだが。
「あ、やっちゃんも来たんだ。おっひさ~」
物陰から様子を伺う八千穂を、梓は目敏く見つけて声を掛けた。恐らく、一番気まずい相手に見つかってしまったからか、苦々しい表情で渋々と姿を現した。
「……久しぶり、梓姉ちゃん」
「本当に久しぶりだよ~!可愛くなったじゃん!でもね~、その無理くりなシティ向けカジュアルファッションは頂けないなぁ……背景とミスマッチ過剰で、勘違い甚だしく見えるよ!」
「いきなりダメだし!?」
「いや、完璧にズレてるから!もっとこう……純朴系や清楚系な普段着にするべき!けんちゃんの気を引きたいなら絶対ソッチだからね!」
「な、何言って!だ、誰が!?」
「いやぁね?私達が何処に住んでるか考えてよ?東京ですよ、東京!最先端とか流行のファッションなんて珍しくもないし、ガチモデルなお姉ちゃんと、そのルックス抜群な妹達に囲まれてるのが日常なんだからね!付け焼き刃なんて、そりゃあ刃も立たずって訳なんだよ!もっと、地の自分で勝負しないと!」
「え?うん……あれ?」
八千穂は正直、剣に横恋慕していたことを咎められているのかと思って聞いていたのだが、何故か剣へのアピール講習を受講させられている流れになっていることに困惑するばかりであった。
各々が思い思いに過ごすなか、再びの衝撃の時が、すぐそこまで迫っていた――
「皆様!お色直し終了しましたにょ!」
次回で遥の誕生日は決着!
ありがちな展開にスパイス大量にぶっかけて台無しに!
 




