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52話目 サプライズ進行中

後半に時事ネタぶっ混みました。

書かずに居られんかった……

穏やかな清流の中で栽培される大量の山葵(わさび)。わさび農場で見るべきものは、只それのみ……と言うなかれ。青々と繁る山葵に、山葵田を流れる清水。それらを囲む緑の木々。


近代文明に毒されている都会人からしてみれば、見学費を払ってでも惜しくない、美しい光景なのである。


「いやぁ……涼しげでいいねぇ~」


「初めて知った……山葵って、水の中で育てんだ……」


初めて見た山葵田に、遥の目は驚きと、美しさに魅了されて釘付けである。


「折角だし、生山葵買って帰りましょ。刺身もいいけど、脂ののった牛ステーキにワサビ醤油……いいわよねぇ~」


「やっぱり蕎麦だよ!ざるそば!蕎麦にちょこっと付けて、さっと麺汁に潜らせて……」


「こまたん、通な食べ方。私は汁に溶かしちゃうかな?でも、ワサビといったらお寿司でしょう!?」


「……食い気ばっかだウチの姉妹」


「からいからキライ!」


お子ちゃまな燕は、まだワサビを食べられない。以前に回転寿司で興味本意で舐めてしまい、泣くほど舌が痛かったのを忘れられずにいるのだった……ワサビソフトは平気で食べていたが。


「あ、思い出した。どうせなら、産地直送すっかな」


猫耳上司のリクエストを思いだし、遥は生山葵を土産物屋から配送することにした。文字通りの産地直送である。決してSAN値直葬ではない。


「ひょっとして……さにゃえちゃんに?」


「ああ、ついでに蕎麦も送っちまうか……七味もあっかな?」


お巫山戯全開だった要求にも、律儀に応えてしまうハルにゃん。可愛がられる訳である。


「ほう、友達へのお土産かのう?」


「違うよ、おじーちゃん。さにゃえちゃんは、はるるんの雇い主さんだよ」


「雇い主?アルバイトしとるんかい?……それにしちゃ、フレンドリーな呼び方だなあ?」


「……正しく言い直すと、さにゃえメイ」


「梓ストーップ!それ以上は言わせん!」


バイト内容を特定されそうな三文字目を言わすまいと、遥は両手で梓の口を塞ぎ、背後に回り込み羽交い締めにした。


そして、小声で。


「解るよな?お前らにも二年以上隠してたんだから、どうしてほしいか解るよな?」


梓も遥にだけ聞こえるように。


「ん~、やっぱり、羞恥心キャパオーバー?」


「当然だろ!お前らにバレた時でも凄ぇハズかったのに、()()()な身内にバレるとか、どうなるか考えろっての!」


「……何気に身内にディスられた……でもさ、人の口に戸は立てられないって言うよね?……私ばかり気にしてて、いいのかな?」


「え?」


ハルにゃんは油断していた!ここには、愉快犯である双子も、メイドであることは寧ろ誇りでステータス!と豪語しそうなネットアイドルもいなくて。お調子者な梓を抑えてしまえば、自重を心掛けている光と、真面目で人の嫌がる事を言い触らしたりしない小町と、無邪気な末っ子の燕しか……無邪気って、なんだったっけ?


「るかねぇ、めいどさんなの!かぁいいの!」


……無邪気、アンサー。るかねぇは腰が砕けた!


「あら、遥ちゃんメイドカフェで働いてるの?ハイカラねぇ」


「儂らん家の近くにはないからなぁ。テレビで見たことはあるが……遥ちゃんも、モエ、モエ……とかやるんかい?」


面白嬉しそうに興味津々で訊ねる勇吾に、ハルにゃんは何かを失った哀しみと、誤魔化し笑いの混ざった涙をこぼしながら返答した。


「あは、は……そう、ですね……お仕事……ですから……」


「るかねぇ、どこかいたい?」


腰砕けでしゃがんだままの遥を心配して、燕が遥の頭をナデナデする。原因キミだけどね!


一方、元凶は「トイレ行ってきます」と断わった義姉と妹に強制連行され、物陰で詰問されていた。


「梓姉さん……悪意じゃないんだろうけどさぁ……」


「あれじゃ、遥が気の毒でしょう……?」


「いや~はは……あんなにダメージあるとは想定外で……」


「まぁ、私達にバレた時点で観念しておくべきではあったと思うけどね……そんなに恥ずかしいなら……それはソレとして!駄目でしょ!このままじゃ遥義姉さんのテンションがおかしくなっちゃうから!」


「梓、まさかと思うけど……()()()何をするかって事を、忘れてないでしょうね?」


「……」


ひゅるり~……白々しく響く口笛。


「え、マジ?」


これでもかってジト目で睨む小町。


「いやはや、意識しないようにしてたら、完っ全に忘れちゃってたよ!」


「……らしいと言えば、梓らしいけど……」


光は、あきれ果てて叱る気力も削がれた様子である。


「ちゃんとはるるんには謝るってば。でもさ、今のところ大問題でも……ないでしょ?結果論だけど」


「ん……確かに勘づかれてはいなさそうだけど……」


「そうね、過ぎたことは仕方ないし……これ以後、遥の機嫌が拗れないようにフォローしましょう。主役が萎びていたら目も当てられないし……何より、実鳥ちゃんに申し訳立たないもの」


「初めての実鳥義姉さん立案のサプライズなんだから、上手く成功させてあげないと……しっかりしてよね!梓姉さん」


梓に、凄く据わった目で念押しする小町。


「こまたん……素顔でその顔……似非不良なはるるんより、ずっとヤンキーの素質があるね!」


「そんな評価は嬉しくない!……全く梓姉さんは……糠に釘だよ」


「小町は張りつめすぎだけど、梓は余裕ありすぎよねぇ……本当、同じ母親から産まれたのにどうしてこうなったのか……」


「へ?おねーちゃんとつばぞみほどじゃないでしょ?」


マッハでブーメランされ、光は返す言葉もなく、近くの壁にしなだれた……


聖家でのDNAネタは高確率で自爆になる……小町は迂闊に遺伝子の悪戯には触れないようにしようと決意したのであった。




帰り道。光達は再度松本に立ち寄り、ショッピングモールで夕食の食材を買い出しするのであった。


「アネさん、今から帰って料理するんじゃ、かなり遅くなるんじゃないっすか?」


「それなら心配無用よ。今夜はバーベキューだから。手間なんて切って刺して焼くだけだもの」


「その為に、兄さんを置いて来たんです」


「火起こし要員か……て、最初からその予定?聞いてねー!」


「まあまあ、大勢で楽しく騒ぐのにうってつけでしょ?おじーちゃん達に楽しんでもらおうって企画だから、ね?」


その祖父母は、燕を連れてモール内を別行動している。


「あぁ……じいさん達へのサプライズか?いや、アタシには言っとけよ!」


「いや、はるるんはボロをだすと連鎖するイメージがあるので」


「私にバレてから……速かったわねぇ……」


そう、その日の内に、剣、翼、希、小町にも猫耳メイドのバイトがバレた前科があったのだ。


「遥義姉さん、私は……言われるまで知らなかったから……」


遥を慰めるように、遥の背中をサスサスなでる小町。


「あぁ……小町はいい子だなぁ……」


お返しに頭をナデナデ。


だが、ハルにゃんは、まだ知らない……燕以外の全員が仕掛人であることを!


「さ~てと、野菜は家にいっぱいあったから、肉だよね、肉!それと魚介!はるるん何食べたい?」


「まぁ、バーベキューなら……厚みのある肉かなぁ。そんなに高くなくていいけど」


「遠慮することないわよ?ヒレの塊いっちゃいましょう!こんな時ぐらい贅沢しないと!」


「美味しい物は、どんどん入れるよ~。ばめたんの好きなソーセージとぉ、ベーコンとぉ、ハムも厚切りで焼いちゃおう~」


「海老は車海老だよね。イカも定番だし、ホタテも欲しいなー。サザエは……無さそうだね」


片っ端からカートに商品を積み上げてゆく姉妹に、遥は圧倒されるばかりである。育ちの違いが如実に表れている。


「いや……そんなに買うんすか?」


「遥、家には育ち盛りが大勢いるのよ?お金なら心配いらないわ。お父さんのカードを持ってきてるから!」


「そーゆー問題じゃないっす……」


「まあまあ、はるるんも多少の贅沢には慣れておかないと!お金は使い途があってこそ意味があるんだから!」


「遥義姉さん。これは有意義なことで無駄遣いじゃないんだから、楽しまないと損だよ?遠慮してたって、私達が食べたい物を選ぶだけなんだから」


遥が躊躇している間にも、カートの籠は食材で満ちてゆく。とうとう一台では足りず、小町が二台目を持ってきた。


「バーベキューのデザートには、焼きマシュマロが定番よね」


「それ、チョコフォンデュにしちゃおっか?」


「ちょっ……二人ともデザートは……まぁ、少しならいいかな」


「……駄目だ、ついてけね……」


結局、遥はメインとなる食材を選ぶことが出来ず、ペットボトルのジュースや、味付けに使う調味料等を選ぶのが限界であった。……高級食材に手を伸ばせる性分になるには先が長いようである。



一方その頃の森岡家では、剣が庭でコンロや鉄網の設置準備を終えていた。


「後は、火起こしすればいいだけだな……と」


一言「○ラ!」と唱えるだけで着火完了。一家に一人、いると便利な魔法使いである。


次いで、既に準備済みの飯盒を石組の即席釜戸で火にかける。家の中には電気炊飯器が当然あるが……雰囲気が大事なのである!


「兄様ー、ただいまなのであります!」


「「おにいちゃんただいまー」」


「おう、お帰り」


桜達三人が帰宅した。午後からは桜がカメラマンとなり、双子がトリオス・ジェミニィのブログ等に載せたり、物販用のプライベート写真を撮影したりしていたのである。なので、双子はコスプレではなく、ゆったりしたサイズのTシャツとデニムのショートパンツな初夏の装いである。


桜も()()()()()()()()はしていない。普段の眼鏡に、頭にバンダナを鉢巻きして、チェック柄の長袖の裾をジーンズに押し込めているとゆう、女子力皆無なヲタクスタイルをしている。ある意味、コスプレなのかもしれない……


「俺はてっきり、桜は時報さんのコスプレをしているかと思っていた。カメラマンだし、あの作品好きだろ?」


「好きではありますが……ボクはお腹が出ていませんので止めておきました。似せられないコスプレはしたくない主義なのであります!」


ぐわっ!と拳を握り掲げる桜。瞳に炎が灯っている。


「リスペクトぱなーい」


「安易な性別変更は敵?」


「イエス・アイ・ドゥー!なのであります!メインキャラが男性しかいないからって、ジェンダーバランスでリメイク作品で性別変えちゃうとか、ホントに悩み抜いた末の判断で、原作越える自信あるんだろうなっ!て話であります!」


「神話かな?」


「星座だね?」


「アレには、突っ込み所が多すぎるのであります!特にジェンダーバランス的にとか!作品の世界観と設定を知らん訳でもあるまいに……よりによってアンドロメダさんをですか!一番女性に近い外見のキャラを女性化するとか……意外性に乏しいではありませぬか?とゆうか……それを決めた方に他作品のリメイクやらせたら、理屈的にセー○ー戦士が男性化されるのです!ゆーはくでは○馬辺りが女性にされてしまうのです!魁!○塾なんて作品の根幹から破壊されてしまうのです!」


「二次創作や、パロディなら問題無いけどねぇ」


「ライセンス作品となるとねぇ」


「そこ大事。既に公式で良作なスピンオフやら外伝が沢山作られておりますし、原作者自ら正統続編も継続中。リメイクがずっこけたところで大先生は痛くも痒くもなく、寧ろ原作が再評価されると目論んでいるのではと疑いたくなるのであります。固定ファンは今更いなくなったりしませぬし。まあ、そちらの思惑は想像でしかありませぬのでこの辺りで……ボクが特に心配しているのは、不死鳥兄さんの扱いであります」


「確かに……妹にストレスで暴力振るう兄な構図」


「そんな不死鳥兄さんは見たくない……」


「ボク達的に、大問題なのであります……」


「そんな兄、死ねばいいだけだな……」


剣がボソッと呟いた。


「だよね、おにーちゃんはそう思うよね」


「如何なる理由でも、妹への暴力否定がスタンスだし」


「メディアミックスとリメイクは、原作リスペクト大事!設定改変は計画的に!であります!」




さて、星座なリメイク作品はどんなストーリーになるのでしょうね?

フルCG劇場版で蠍座さんが意味なく女性化されたのは苦い記憶……

あれ?もし冥界までいったら冥王様が?

面白かったら素直に頭を下げますが、そもそも見る気が失せちゃうんですよね……と

次回はBBQパーリィ!です!

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