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31話目 さあ遊ぼう!

本文中に○が多くなるのもアレな気がして、

和訳を多目にしました。

営利目的ではないので問題無いかもですが……

各自、小町からの指示を達成し、集合場所であるベストパートナー像前に集まった。


【世界市場】のメインストリートを入口から直進した先にあるこの銅像は、王国のシンボルキャラクターであるミッ○ーマウスと、その生みの親であるクリエイターにしてパークの創設者のウォルト氏が手を繋いでいる像である。言わば、王様と神様と表現したとて間違いではないだろう。


像越しにはお城も見えるので、当然フォトスポットである。写真を撮るには順番待ちをするのがマナーなので、小町は開園早々に王国で最も〝らしい〟記念撮影を計画したのである。


「さてと、これからどうするんだ小町?ハ○ーハントのパスは十時過ぎだけど、何か乗るか?」


「そうね、先ずは、みんなで楽しめるアトラクションへ行くとしましょう!食べ歩きしながらね」


ホットドッグをパクつきながら、小町の先導でマップ上を時計回りで進んで行く。


王国はお城前の広場を中心に、七つのエリアが円状に配置されている。エリアには其々テーマがあり、王国の入口で、ゲストの誰もが行き帰りに通る事となる【世界市場】は文字通り、様々なアイテムを取り扱うショップやレストランが並んでいる。19世紀のアメリカを彷彿とさせる建築物で、通路上には屋根もあるため、雨天時にも落ち着いて雨宿りが出来るのである。


そこから時計回りに、未開の地等をテーマにした【冒険の国】アメリカ西部劇の【開拓時代の国】動物達が暮らす田舎【小動物の郷】夢と魔法に溢れた【幻想の国】ディ○ニーアニメーションのキャラクターが住む【アニメの街】宇宙や未来をモチーフとした【明日の国】の順に配置されているのである。


小町が最初に選んだアトラクションは『ジャン○ルクルーズ』であった。ボートに乗って世界各地のジャングル巡りをする事が出来るのである。一つのボートに二十人近く乗れるため、聖家全員でも纏めて一度に楽しめるのが、小町的にツボなのである。やはり、最初はみんなで楽しみたいのだ!


開園から然程時間も経っていない為、待ち時間は十分も掛からずに乗船と相成った。


スキッパー(船長)の軽快なトークを交えつつ、ボートは南米・アフリカ・アジアの河を進んで行く。どうしてかは疑問に思ってはいけない。知らない内にワープしているんだよ、きっと。


色んな動物(ロボットだと思ってはいけない)と出会ったり、滝の裏を潜ったり、謎の遺跡で神秘現象を目撃したりして、ボートは最後に最も恐ろしいジャングル……コンクリートジャングルへと帰還したのである。上手く皮肉っているものだ。


「さて、如何でした?実鳥義姉さん」


ボートから下船して、主賓に感想を求める小町。なにしろ初めて体験した王国のアトラクションである。この感想次第で、この先の計画変更も考えねばならないのだ。


「うん!凄かったね!動物がとてもリアルだし、テレビで見るのと、実際にボートに乗って体感するのは迫力が全然違うね!とっても楽しかったあ!」


興奮冷めやらぬ実鳥に、小町は『だよね!』と満面の笑顔で応えた。期待通りに楽しんで貰えて、自分の好きな物を共感してくれて嬉しくて仕方ないのであった。


「まだまだ序の口だからね!お楽しみはこれからだよ!」


さあ、次へ行こう!と腕を突き上げる小町。しかし、たった一名ボートを降りてから物足りなさを表情から隠せていない者がいた。末っ子の燕である。桜が抱き上げ、ご機嫌伺いをしてみた。


「どうしたでありますか、燕たま。さっきまで笑ってたでありましたでしょう?ボクは燕たまの笑顔が大好きなのです!」


「さくねぇ……ぺんぺんさんが、いなかったの……」


「あぁ……ジャングルには住んでませぬからなぁ……まあ、気を取り直して、たっぷり遊ぶでありますよ!」


この時は、まだ誰も知らない事であったが、王国に南極をテーマとしたエリアが無かった事は、聖家の面々にとって幸運だったと言わざるを得ない。もし、ペンギンが集団でダンスを披露するシアタータイプのアトラクションでもあったりしたら、燕の体力が尽きるまで延々と周回させられていたかもしれないのだから……




一行は【開拓時代の国】にある『トム○ーヤ島』へと筏に乗って渡った。この島には吊り橋や樽橋、洞窟等があり、ゲストが自由に冒険して遊べる公園的な場所である。日没後にはクローズしてしまうので、ファストパスの指定時間まで遊びに来たのである。


時間的には人気の高いアトラクションに並んで乗れる余裕もあるのだが、小町は今回一時間以上の待ち時間となるアトラクションには並ばない計画を立てている。何故ならば、ディ○ニー嫌いになる大きな原因が、アトラクションの長すぎる待ち時間だからだ。


初めて来園して一番人気のアトラクションにファストパスを利用せずに並び、三時間待った挙げ句に緊急メンテナンスで結局乗れず仕舞い……なんて悲劇もあり得るのだ。初来園者と幼児連れでそんな事になったら、悲惨の一言では済ませられない。


それに、そもそも長大な待ち時間となる、マウンテンの名を冠する三つのアトラクションには身長制限がある。今の燕の身長では乗せて貰えないのだ。小町は幼児、それも妹に無駄な時間を過ごさせてまで、自分の欲を優先するような子ではないのである!


兎に角、実鳥と遥、燕を楽しませるのが目的なのである!それが小町達の目的であり、達成に向けて行動すること自体が楽しみなのである。


「ぐらんぐらん!たーのしー!」


「うわっ!?燕!危ないからあんま揺らすなー!」


燕が跳び跳ね吊り橋を揺らす。一緒に橋を渡っていた遥が燕に注意しているが……若干声に脅えが含まれている。


「遥ちゃんて、揺れ系苦手?」


「それとも高所?」


遥は見た目は不良だが、中身は割りと普通である。多分、姉妹で一番感性が常識的であろう。普段はとても強がりさんなだけなのだ。


「ねえ小町ちゃん!あのおっきい船にも乗れるんだよね?」


「はい。この島の周りを一周するマーク○ゥエイン号です!三階からの眺めは素晴らしいですよ!」


「へぇ~。あれ?カヌーに乗ってるのってお客さん?……あれはちょっと、怖くて乗れないな~」


「あれは体力必要ですからね。私も乗ったことないです」


筏にカヌーに蒸気船。島を囲う河を移動する三つの船であるが、島と【開拓時代の国】を行き来する渡し船は筏のみ、他の二つは島の周りを一周するだけである。


「桜、歩きスマホは禁止ね」


「見逃してほしいのです!王国ではレア物が沢山生息しているのであります!」


何故か、日本最高クラスの希少ポ○モン生息地である王国。USAからやって来た王国は、電子の世界では日本のモンスターに蹂躙されていたりするのだ。


各自島内を自由に冒険し、島内唯一の飲食施設のある砦にて合流した。


「あれ?剣さんと梓さんが来てませんね?」


「デート気分でのんびりしてんじゃねーか?」


関東随一のデートスポットでもありますからね。二人でいなくなれば、そう思われるのも無理からぬ。


「違いますよ。そろそろ十時を過ぎますので、二人には次のファストパスを取りに行ってもらったんです」


「……どういうこと?」


アトラクションの時間帯指定優先券であるファストパスは、発券機にチケットのQRコードをスキャンさせる事で発券される。その券を持っていれば専用列に並ぶ事が出来、少ない待ち時間でアトラクションを体験出来る便利なシステムであるが、一枚のチケットで発券出来るのは一度に一枚のみ。二枚目を発券するには二時間経過後か、一枚目の指定時間になってからなのである。


「そんな訳で、二人は一足先に島を出ました。次のアトラクションで合流します」


妹の指示に、ホイホイ従う兄と姉に、遥はつい口に出した。


「なんか……パシリだな」


「役割分担です!いいんです!二人は中学生の頃から年二回はデートしに来てるんですから!今日は経験を生かして役立ってもらうんです!」


多分に僻みも籠った口振りである。とても羨ましがっている。


「……まあ、そもそもの立案者はお兄ちゃんなので」


「もてなすのは当然でもある」


「兄様達も承知の上なのでよいではありませぬか。むしろ、大人数で来ている利点であります。少人数と大人数、どちらにもメリットとデメリットがあるのであります」


「例えば、どんな?」


「現在進行形で、ファストパスの確保がありますな。チケットさえ人数分あれば全員で行く必要はありませぬから。カウンターサービスのレストランの席取りやパレードの場所取り等、よく家族連れで疲れた親御様が一人残されていたりいなかったりであります。アトラクションの待ち時間も大勢で喋っていれば然程苦でもなかろうでしょうな」


「んじゃ、少人数の利点は?」


「行動が制約されない、ですな。偏った遊び方が出来るのであります。一日ずっと同じアトラクションを何周出来るかに挑戦してみたり、敢えて三時間待ちに並んでみたり、イベント期間限定メニューの食べ歩きをしてみたり……まあ、初心者向きの遊びではありませぬが」


桜の持論に、遥と実鳥は圧倒されるばかりである。初心者はアトラクションやパレードばかりに目が行きがちだが、王国での楽しみ方は人によって千差万別なのである。


「兄様と梓姉様は、丸一日アトラクションに乗らずとも退屈せぬそうですぞ?歩いて食べて飲んで休んでを繰り返すだけで充分楽しいそうであります」


「それは……あの二人だからじゃないかしら?場所、関係ないと思うのだけれど?」


光が至極当然な指摘をしたが、そうでもないと桜は首を振った。


「なんでも、他のデートスポットと違い、夜になってもカップルだけでなくファミリーや友達グループもいるのが良いらしいのですよ。治安もよろしいでありますし」


「治安て……」


「王国内でリアルポリスメン……」


「間違いなく見たくない光景」


「はい、そこまで!夢と魔法の王国で現実的な話は控え目に!今日は楽しい事しか考えないの!」


都合良く魔法と現実を折り合わせている隊長さんは、会話が生々しい現実側に傾く事を許さない!


その一方で、効率的に遊ぶ為にパーク内のタイムテーブルや待ち時間のデータ等を細かく下調べしていたりもするのだから……自分自身を何処まで騙せるのかが、王国を楽しむ最大のコツであるのかもしれない。所謂〝中の人なんていない〟である。


「それにしても、まだパークを半周もしていないんだよね?」


「今日は、実鳥義姉さん達にはのんびり巡ってもらう方針ですから。それでも、最終的には三~四周分の距離は歩く事になると思いますが」


三~四周と言われても、実鳥にはどの程度の距離かはパッとしない。只、小町が体力を無駄遣いしないように考えてくれている事は伝わった。


「このあともよろしくね。ガイドさん」


「おまかせを!今日は絶対満足させますから!」




まだまだ王国編は続く!


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