103話目 はるか防衛戦線!②
このシリーズ、コスプレ編だぁ……
『……対象を確認、シスター08、これより尾行を開始します』
「シスター04了解。ホシとの距離を保ちつつ、状況に変化があり次第、適宜報告せよ」
まるで、刑事ドラマのノリで本部(聖家のワゴン車内。ショッピングモールの駐車場に駐車中)から姉妹に指令を出しているのは、聖家四女の翼である。その傍らには当然、双子の片割れである希の姿が。彼女は翼が出した指令を即座にモール内に散らばっている他の姉妹へとメールを送って情報の共有化を測っている。因みに余談であるが二人とも、女怪盗やスパイさながらな全身ピッチリな光沢のあるライダースーツを纏っている。その格好で、免許を取ったばかりの原付を乗り回して来たのであった。
双子はホシこと、春乃宮都と面識がある上、強烈に目立つルックスとスタイルで歩くトラブル(メンズ)ホイホイと化してしまうので、今回は作戦本部で司令官と情報処理の役割を担当しているのであった。
「くくく、さて……始まったぁ」
「さあ、狩りの時間……ふふ」
妖しい笑いを浮かべる双子。現在車内は突っ込み不在の空間である。誰も双子を止められない……!
そして、希が操作しているタブレットパソコンの画面には、何故かモール内の防犯カメラからの映像がリアルタイムで映し出されていた……!
※ハッキングは犯罪です。良い子も悪い子も真似してはいけません!
「先ずは定番〝好きなあの娘が他の男と?〟やってみよ~」
「それでどんな反応するか……超楽しみ!」
双子は都の移動パターンを予測して、遭遇しやすいように剣と遥に指示を出したのであった。
一方その頃、都を尾行するシスター08こと、小町は……
「……あの人……急ぎすぎ!」
都はモール内を足早に移動しながら、テナントを片っ端からざっと見回し続けている。そんな都の格好は、フリルがたっぷり付いたメイド服風ゴスロリミニスカである。可愛らしさを強調しまくっている、とても気合いの入った勝負服なようだ。一刻も早く遥を見つけようと猪突猛進する都を見失わないよう、小町は怪しまれないよう注意しながら追いかけていた。
「シスター08より04へ、対象は各テナントを確認しつつ、迅速にモール北側へ移動中。……そうとう、興奮している様子です」
『04了解。引続き自身の安全を優先しつつ、追跡を続行せよ』
ごく普通に、携帯電話での通話で連絡を取り合う小町と翼。トランシーバーやインカムを使うより、よっぽど周囲に溶け込んでいる。小町の格好もまた、この場で違和感なくいられるようにセレクトされていた。黒レザーのトップスは丈が短くヘソだしルック、同じ素材のショートパンツにストッキング無しの生足。視線を隠す為にサングラス装備で、被っている茶髪のウィッグはパーマがかったポニーテール。ファンデーションやルージュでメイクもしていて……とても、ロリビッチな姿である!
恐らく、小学校の友人が擦れ違ったとしても、小町だとは気付かれないような、普段の真面目さんとは真逆の変装をしているのだった!
この格好、普段の小町なら嫌がりそうなものだが……作戦中に知り合いに声を掛けられないようにする為と、本人からの発案なのであった。困っている遥を助ける為に、やるからにはとことんやる!そんな決意も込めての姿なのであった。
『04より08へ。シスター03とブラザーは一階フードコートへ移動。ホシに現場を目撃させる。現地に先回りしてシスター07と待ち合わせを装い、合流して待機せよ』
「08了解。フードコートへ先行します」
故に悪態も吐かず、任務遂行に異を唱えず邁進するのであった。
フードコートに到着した小町は、よく捜す必要もなく、剣と遥を発見した。もう夕食時でもあるので、二人は向かい合ってラーメンを食べていた。ちゃんと楽しげに会話をしながら食事をする様子は、端から見て、ちゃんとカップルに見えると小町は思った。その二人が座る席から通路を挟んだ直線上に、実鳥が座っているのを小町は見つけたのであった。
「おまたせ……ナナ、さん」
「……そうでもないよ、ハッチ」
互いに偽名で呼びあう実鳥と小町。実鳥は元々フードコートでの待機をしていたので、気を利かせて小町の分もドーナツとタピオカドリンクを購入して待っていたのである。因みに実鳥の格好であるが……今の小町と並ぶと、違和感があるような……無いような……やっぱりある!黒いTシャツにデニム地のミニスカート。ここまでは普通なのだが……右足の膝から下と左腕全体にくたびれた包帯が巻かれ、右目に眼帯!唇はヴァイオレット!銀髪ショートのウィッグ!そして……右手は指を開いて半端に顔を隠し、その肘を左手で押さえるとゆう香ばしいポーズ!実鳥は……厨二キャラになりきっていた!
「……うん、まあハードロック好き女子に見えなくも……見えるかあっ!み……ナナさん、よくその格好で……」
「フッ……そう言うハッチこそ、ビッチな姿が似合っているじゃあないか?行動する者にこそ、新たな可能性が開かれる……」
「……マジで何言ってんの?」
小町もギャルキャラになりきり、意識的に言葉遣いを乱していた。そして、背もたれに片腕を載せて足を組んで椅子に斜めに座り、遠慮なくドーナツを口に運んだのであった。
「ん、ふわっと柔らか!美味し~」
「ふふ……名付けるならば、天上の甘露を再現せし製菓、天使の光輪。その至福の味わいで、臓腑を充たすがいい……」
「いや、ドーナツだからね?至福だけどさ」
「そうか……くく……う……ごめんなさい、もう無理です」
テーブルに額を擦り付け、厨二キャラへのなりきりを断念したシスター07こと実鳥。羞恥心が限界に達し、語彙力的にも続行不可能になってしまったのだった。そもそもどんな変装をするか思い付かず、桜に任せてしまったが為の……悲劇であった。
「だ……大丈夫!無理な喋り方しなくていい!それとなく、表情だけ作っとこう!頑張ったから!」
「うう……桜ちゃん、私にはハードル高い変装だったよ……」
手で顔を覆うように隠す実鳥。なんとなく、魔眼が疼いてあいるのを抑えているようにも見える……
「それはそれとして……こうして眺めてると、兄さん達……普通にデートしているように見える……」
「こっちがどんな変装するか伝えてないから気付いてないよね?……実の姉がデートしている姿を見るのって、なんだか不思議な気分なんだけど……こま、いや……ハッチ的にはどう?」
「どうもなにも、物心付いた時には自分家で実姉が家デートしているのが当たり前だったからなぁ~……でも、兄さんが他の女性とデートしているのを見るのは初めてかぁ……別に感慨なんて無いけど!」
それ、語るに落ちてないかなぁ?とは、実鳥は空気が読める娘なので言わなかった。改めて、小町ちゃんはいじらしくて可愛いなぁと思うのみであった。
「そっかぁ~、それはそうと……あんなオシャレしてるのに、デートでラーメン……どうなのかなぁ?」
「親密さを演出するには良いと思うけどね。麺を啜る音やスープが跳ねるのを気にする女の子っているし。それを気にしないレベルの気安い関係……とか?」
「……それも、アリなのかな~?お姉ちゃん、割りとリラックスしてるみたいだし……偽装だけど、初デートだったんじゃなかったっけ?」
作戦遂行中でありながら、二人は剣達の様子を観察して語り合っていた。無論、根が真面目で姉妹の中でも突っ込み寄りな二人であるので、周囲への警戒も忘れはしない。
「あ……我が姉を蝕む、愚昧なる闇の獣……来襲」
監視対象の発見と共に、スッと厨二設定キャラへと仕草と口調をシフトさせるシスター07……なんて、いいこなのでしょう……
そんな実鳥を、哀れむような瞳で見つめながら、小町は翼へと報告の電話をするのであった。
「シスター08より04へ。対象がフードコートに到着。客席スペースを分断する通路の柱に身を隠し、03へのストーキングを開始した模様」
『04より08へ。各員へ状況報告完了。07と共にホシの行動を監視継続せよ。尚、ホシが直接的な行動に移行した場合は自己の判断で03の保護・自己の安全確保を優先せよ。その際、ホシの確保はブラザーへ一任すること』
「08了解。……荒っぽく、ならなきゃいいけどなぁ……」
そうなったらなったで剣が簡単に制圧してしまえるのだが、それは避けるべき事態とするのが、姉妹の共通見解であった。一般人に見える形で、警察沙汰なんかの大騒ぎにしてしまっては、それこそ遥の精神に多大な負荷を与えてしまう。当然それ以外にも学校や〝29Q〟やら都の家庭にも多大な害や迷惑が伝播することになる。よって、今回この場での作戦目標は、言い逃れ出来ない証拠を撮影し、脅迫材料を入手して非物理的説得を試みる事なのである。
「しかし……06の魔導にて真形を偽りし姿に惑わされず、我が姉を瞬時に見抜くとは……あの者、心眼の使い手か?」
「ナナさん……私のお腹が捩れそうだし、居たたまれないから……ホントにヤメテ……」
実鳥ちゃんが頑張り過ぎて、小町ちゃんが先に羞恥心の限界を迎えそうだ!
「そこまで……やめて、痛い人を見る目で見ないでぇ~……演技!オール演技なんだからぁ!」
演技なのは小町も当然解っているのだが、実鳥が演じる末期的厨二病患者は辿々しくも荒削り且つ、照れも隠しきれていないのである。恥ずかしながら必死に痛い言葉を紡ぐ姿は、身内として、真性を相手にするよりも耐え難いものがあったのだ!
「……ハッチは、そんな大胆な格好でも、堂々としてるよね……」
「ん~……普段する機会が無いだけで、割りと好きなファッションかも。まあ、学校じゃあ生徒会長らしさを求められちゃうから、あんまり在校生やご地域の皆様に見られると問題がねぇ……人間って、外見が第一だから……そんな事より!見張り見張り!……って、ヲイ……」
「うわ……剣さん、大胆だなぁ……」
二人が偽装カップルに視線を向けると、剣が自分の丼から掬ったスープを、レンゲごと遥の口に突っ込んでいるところであった。
「間接キス……になるよね?あ~あ、お姉ちゃん真っ赤になっちゃって……」
「兄さんって、ああいうの素でやっちゃうトコあるのよね……まあ、わざとらしくないし、恋人っぽいはぽいけど……あ、ナナさんあっち」
「うっわ……鬼の形相だね?凄く震えてるし……血涙流してない?」
ストーカーちゃんも、当然見ていた!妬ましさと羨ましさが身を焦がし、怒りと狂気で爆発しそうだ!
「これ……ヤバくないかな?」
「遥義姉さんを助ける用意しないと……?」
小町が椅子を引いて立ち上がろうとすると同時に、小町と実鳥のケータイにメールが着信した。その内容は……
《01と09を現場に投入します。07と08はホシの行動記録を優先せよ》
翼からの指令メールであった。
01と09。その番号が指し示す者は、聖家の偉大なる長女様と、無垢で愛くるしい天使な末っ子。
果たして二人の参戦は、この一触即発な場に、何を齎すのであろうか……?
前回の遥に続き、姉妹に普段はしない格好をさせてみました。……実鳥の厨二スタイルは、やり過ぎだったかな?
次回は光さんと燕ちゃんが登場!
02と06は、もう少しお待ちください。




