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100話目 生徒会長の悩み

小町が悶々と葛藤するだけのお話です。

六月も半ばとなり、すっかり梅雨入りし、窓の外では雨がシトシト降り続けている。湿度も高く、不快指数も高くなりがちなジメジメとした天候が続いて苛立つ人も多くなるこの季節。それは、元気な小学生と言えども例外ではなかった。


開礼小学校の生徒会室で、夏の行事関係の会議を行っている生徒会役員の面々が察してしまうほど、生徒会長様はご機嫌斜めであった。


「聖会長?体調が優れないなら、保健室行きませんか?」


心配そうに声を掛けたのは、書記の五年生(みなと)南子(みなこ)。愛称はストレートに一切捻りなく〝みなみな〟である。大きな三つ編みポニーテールがトレードマークである。


「ありがとみなみな。身体は悪くないから心配しないで」


「それにしては……深刻そうな顔だぞ?」


現生徒会唯一の男子。副会長で六年生の山上(やまがみ)晃馬(こうま)も、様子のおかしな小町を気にしていた。サッカー部にも所属していて、ストライカーで身長が既に170センチ近くあり、成績も優秀な非の打ち所のない美少年である。


「心配するなと……言った」


言った傍から気遣われ、小町のイラッと指数が上昇した。因みに、晃馬くんは女子に凄くモテる。開礼小学校内で一番モテる男の子である。その彼をぞんざいに扱う女子は極めて稀である。小町が彼をそう扱うのは、周りが言うほどの魅力を晃馬に感じていないからである。規格外な兄を基準に男性を評価してしまっているからなのであった。


「え、えっと……会長、悩み事なら、誰かに相談した方が」


おっかな吃驚、別の角度から尋ねたのは庶務で四年生の笹原(ささはら)綺羅(きら)。少し気弱な文学系眼鏡少女である。


「相談……相談かぁ~……誰に相談すべきか……先ず、それが問題なのよぉ……」


目下、小町を悩ませる二つの問題。


一つは新任教師との水面下での対決。これに関しては剣が前任の校長とのコネを活用して、現校長に教頭、学年主任からの指導(パワハラじゃね?)が効を為しているのか膠着状態である。このまま卒業まで現状維持出来ればよいと小町は考えている。


だが、剣に相談したことで、思いがけずも学校側……少なくとも生徒には問題を表面化させずに一応、対策してもらえてしまった。それはそれで、剣に相談する以外、自分が何も行動しないままに事が済んでしまったので、小町にとっては無力感を噛み締める事になり、不本意であった。


もう一つの問題こそが難題。理解はした。理解はしたのだが……それでも理解に苦しんだのだ!実の姉同士が、愛しあっているとゆう現実に!それはまぁ、口出ししたって当人達の心の問題なのだから仕方がない。だが……世間バレだけは不味いのだ!特に、小町の同級生は思春期真っ盛りである。こんな話、火種が見付かるだけで一気呵成に燃え広がるのは目に見えている!そうなったときの、他人の目が怖いのだ!


「中学デビュー……しちゃおっかな~?」


小町の唐突な発言に、生徒会役員達は仰天した!


「だ、駄目です!グレたらいけません聖会長!」


「そうだぞ!不真面目は小町さんに似合わない!」


「ほ……本当に、どうしたのですか……?」


学校での、生徒会長としての小町は職務に対して真面目に取り組むのは勿論の事、不正や理不尽な暴力を許さない正義そのもので、多くの生徒、特に下級生からの信頼を集めている。その強い責任感から不真面目な生徒……特に掃除の時間に巫山戯る男子等に口うるさくなって、ほんの少し煙たがられたりしているのは御愛敬である。


「ちょ……驚き過ぎよ貴方達……髪を明るい色に染めてみるのも悪くないかな~と思っただけだってば……」


決して弱音を吐くつもりではなかったが、小町が精神的ストレスを抱え、問題の解決策が見付からない現状、気晴らしが必要だったのである。どうして気晴らしが髪を染めるとゆう発想に至ったのかと説明すると、それは遥の存在である。


家族になった当時から遥は髪を染め、目付きの悪いメイクをしていて不良そのものだったことから小町は苦手意識を持っていたのだが、一緒に生活しているうちに、その認識は徐々に変化していった。遥は言葉遣いが乱暴ではあるものの、実際に物理的暴力を振るう事はなく、何よりも実鳥から絶対的に信頼されていたのである。そして最近、メイドカフェでバイトをしている事が発覚し、不良の皮を被っていただけの妹思いの優しいお姉さんだと判明したことで、小町の遥に対する見方は大きく変わっていた。多少の戸惑いはあったものの、今では家族の中で一番常識的な感覚を有していて、良識的な判断が出来る人であると信頼を寄せているのである。


その遥に憧れ髪を染めてみようと考えてみたりしたのは、小町がまだ大人ぶって背伸びしがちな子供であるが故の発想であった。本人にそれを指摘したとしても、全力で否定するだけであろうが。


兎も角、特に大きな意味を込めての呟きではなかったのだが……


「絶対駄目です!そんなキラツヤキューティクルな黒髪を脱色したり染色したりするなんて……国家的損失です!」


「みなみな!?私の髪は国宝や世界遺産じゃないよ!」


「自覚して下さい会長!黒髪ストレートは日本乙女の憧れなんです!私なんてこうして束ねてないと……ぶわーって、広がってモコモコになっちゃうんですよ!私がどれだけ羨ましいと思っているか……」


「モコモコ……それはそれで可愛いんじゃないかと思う」


「今の時期とか湿気吸っちゃって大変なんですからね!てゆうか私の髪はどうでもいいんです!」


自分でふった癖に……とてもジットリした目で小町は訴えた!


「ま、まぁ……その……何が言いたかったかと言えば、綺麗な黒髪に憧れる女子は多いとゆう事です。聖会長の好感度にも間違いなく関わっていると思われますので……」


「そりゃ、私だって自分の髪が嫌いって訳じゃないのよ。でも、イメージ変えたいなぁって思う事も有ったりする訳なのよ……私の姉さん達って、基本不真面目に見られる人が多いんだけど、皆私よりずっと芯が強いんだよね」


小町は姉達に比べて、自分が劣っていることを嫌と言うほど自覚している。特に、精神面に於いて。その内半数の兄と姉達とは実年齢以上の開き(前世分)が実際にあるので致し方ないのだが、小町自身は知らない事なので、これもまたどうしようもないのであった。


「あの、会長。会長って、お姉さん達に引け目でもあるんですか?違ってたらスミマセン!」


別に謝る必要もないのだけれど、そんなに私、苛立ってるように見えていたのかと、小町は綺羅を脅えさせないように、意識して優しい声で応えた。


「そんなに畏まらなくてもいいわよ。あながち、間違ってもいないし……」


「それなら……敢えて逆のアプローチでイメチェンしてみたらどうでしょうか?」


「逆?例えば?」


「えっと……髪を染めるのって中高生以上のイメージがあるので、小学生らしくというか……ちょっとしたオシャレぐらいなら、今日明日にでも試せますし……」


「オシャレ……その発想はしてなかったわね。綺麗系よりも可愛い系で、かぁ……」


真面目な生徒会長とはいえ、小町も女子であるので、綺麗な服を着ればテンションも上がるし、アクセサリー等にも興味が無い訳ではない。しかし、使う機会の少ない物に貴重なお小遣い(月二千円)を裂くには気が引けてしまっているのであった。お金は貯めておいて、ここぞ(舞浜)で使う主義なのである!


「ウチの学校は校則あまり厳しくありませんし……カチューシャとかリボンを着けても問題ないかと……」


「実際な話、ギャルぶって遊んでるような格好の娘もいるからねー。聖会長には、あんな不真面目娘にはなってほしくありません!」


みなみなには、小町を崇拝している節がある。それ故、生徒会の仕事を積極的にこなしてくれているのであるが……理想に押し込めようとするきらいもあるので、小町は珠に、人選ミスったかなぁ?と、思わずにいられない時があった。


「安心して。もし、不真面目になる事があったとしても……悪事を働く度胸はないから……」


聖家の、光の教育の賜物である。小町には、光を怒らせるような事は、絶対に出来ないのであった……


「それなら宜しいのですが……聖会長は地がとても良いので、あまり盛りすぎるのはオススメ致しません。素材の良さを生かすべく、ワンポイントのアクセントを加える程度に抑えるべきだと具申致します!」


「わ、私もそう思います!……いえ、髪の色を変えても似合うとは思いますけど……」


「二人とも、ありがと。あまり、突拍子もないことを呟くべきじゃなかったわね……私もまだまだ自分に甘いみたいね……」


悩みは一切解決していないのであるが、自分の何気ない言葉に、ここまで真剣に考えてくれる仲間がいてくれる事には、素直に感謝するしかなかった。


「……女子が三人寄ると、姦しいって本当だなぁ~……会話に加わる隙が見つからない」


机に突っ伏し、愚痴る晃馬くん。これでも、生徒会室の外では本当に人気者なのであるが……


「何してるのよ副会長?林間学校の打ち合わせ始めるわよ!」


そして、何時の間にやら機嫌を直した小町の進行によって、本日の会議が漸く再開されたのであった。とても、理不尽であった……




会議を終えて下校しようと室内の片付けていると、雨が一際勢いを増していた。夏本番前に、まるでゲリラ豪雨である。


「か……傘が、無い!?」


下駄箱の傘差しに、登校時に差しておいた小町の傘が……無くなっていた。しかも、他の傘も一本も無い!


愕然とする小町。南子と綺羅は先に帰してしまったので、傘を借りる事も出来ない。普段は折り畳みの置き傘をしているのだが、昨日使って、今日は朝から雨が降っていたので持ってきていなかった……


「聖、傘無いのか?俺ので良ければ……」


傘が無くなっていて困っているところに、差し伸べられる美男子からの救いの傘。その優しさに思わずトキメク場面である。普通の女子であったなら……


「は?山上、サッカー部のストライカーでしょ?アンタに風邪なんてひかれたら私がサッカー部の連中やアンタのファンに恨まれるでしょうが!馬鹿言ってないでさっさと帰りなさい!」


晃馬が小町に好意を持っているとは欠片も思わない、とっても硬派イケメンな返答であった。


「いや、それを言ったら、女の子を傘も無しに帰らせるとか、俺の方が非難されそうなんだけど……」


互いに譲れず、二人の間に微妙な空気が流れる。そして、小町の方が耐えきれなくなり、豪雨の中へと踏み出していった。あっと言う間に、全身ずぶ濡れである。


「これで、傘を借りる意味もないわね。解ったらさっさと……どうして目を反らしてるのよ?」


「み……見れる訳が無いだろ!?自分がどうなってるか……よく考えてくれっ!」


全身ずぶ濡れ→服がぴったり肌に貼り付く→小町ちゃんは女の子→最近とても発育が宜しい→小学生男子には強刺激。


小町は自身のやらかしに気付くと、羞恥心から顔を真っ赤に変色させて、自制出来ずに叫びを上げた!


「ひゃ……?あ………う、みぎゃあぁぁぁ!?」


そして、そのまま逃げるように駆け出していったのだった……


後に残された晃馬くんは、明日以降、小町と顔を会わせるの気不味いなぁ……と思いつつ、思わぬラッキーに遭遇してしまった幸せに、胸の動悸がしばらく止まらなかったのであった。


「やっぱり、可愛いトコあるんだよな……」


その呟きは、雨音に掻き消されて、誰の耳に届く事もなかった。


一方、恥ずかしさを吹き飛ばさんと全力疾走していた小町であったが、校門を飛び出したところで、犬に吠えられ驚き飛び退き……硬直した。その犬の顔を、小町はよ~く知っていた。ちゃんと犬用レインコートを着用してお散歩しているその犬は、上機嫌で尻尾をフリフリして小町に身を寄せてきた。……何を言わずとも、小町にそこまで気を許す犬は、その辺を散歩していて不自然ではない犬の中で、たった一匹しかいない。


「小町……何してんだよお前……」


そして、こんな雨の中でも律儀に散歩をさせる飼い主も、小町は一人しか知らなかった……今、とても会いたくなかった……兄である。


「に……兄さん……これは、その……」


しどろもどろに言い訳し始めた小町に、剣は「なんか、見栄でも張ったんだろうなぁ……」と呆れた顔をすると、ショルダーバッグからタオルを取り出して小町の頭にフワッと載せると、少しだけ乱暴にゴシゴシと雨水を吸い込んだ髪を拭うのであった。


「ちょっ……痛いってば!」


「馬~鹿!この程度のお仕置きに文句言うなっての!傘が無いなら職員室で電話でも借りて、俺でも誰でも呼べばいいじゃないか。ホラ、さっさと帰るぞ!」


剣は有無を言わさず、これ以上雨に濡らすまいと小町の肩を抱き寄せ、傘の中から逃さない!


「は、恥ずかしいってば!」


「五月蝿い、黙れ。愚痴を言う暇あるなら、さっさと帰って風呂に入れ」


剣にとって、小町の羞恥心なんて、小町の健康と比べれば取るに足らない些事である。なので、むずがる小町を逃さぬように、その肩をしっかりと抱き締めていた。


「……兄さんの、過保護……」


兄との相合い傘なんて、同級生に見られたら悶絶物の恥ずかしさではあるが……その反面、普段、自分から剣に甘えられない小町にとってこの状況は、少し……かなり嬉しくもあった。


(そういえば……兄さんと下校するのって……)


六歳年の差がある剣とは、小町は一緒に下校した事が無かった。


ほんの少し特別な帰り道。小町は剣に顔を見られないように俯きながら歩を進めた。その表情には、羞恥心に加えて、ほんの少しの幸せそうな微笑みも混ざっていた。








100話達成!

慣れない話で文章浮かばず、少し時間かかってしまいました。

日曜日にアキバでエンジョイしていたのも遅延の原因だったり……

ともあれ、この作品にお付き合い下さっている読み手の皆様に感謝を申し上げます!

次回は感謝を込めて……特別編!つまり、あの方がやりたい放題します!

日曜日中には更新したいと思ってます。

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