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最強種族だが慢心せずに知識と技を極めてハーレムを作ろう 作者:月夜 涙(るい)
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第一話:女騎士の特訓は少々厳しい

 強い雄になり、可愛い子を孕ませる。
 その夢を叶えるために、俺は母さんの拷問のような修行を受けると決めた。
 母さんはそのことがよほどうれしいのかニコニコと笑っている。

「では、さっそく修行の開始です」
「えっ、今から? 冗談だろ、もう深夜なんだけど」
「何を言っているんですか? 剣を極める”だけ”で十年はかかります。たった四年で最強にならないといけないのに、無駄な時間が一秒でもあると思っているんですか」
「その、俺にも心の準備というものか」
「思い立ったら吉日。他は全部凶日です。それに、オルクが心変わりしたら最悪ですからね。ささ、修行、修行」

 母さんの言うことも一理ある。

「わかった、じゃあ練習用の剣を」
「何を言っているんですか?」
「だって、剣を教えてくれるんじゃ」
「あなたの体力と精神力と集中力で私の剣の修行なんて自殺行為ですよ。まずは土台作りです。この日のために、お母さん、いろいろと昔の知り合いに用意してもらったんです。これを飲んでください」

 怪しげな薬を渡される。
 何かを聞きたいが、母さんの有無を言わさない様子を見て諦める。
 薬を飲み干すと、ぽかぽかしてくる。

「それは、疲れや苦しさを感じなくなる薬です。オルクはヘタレなので、ちょっときついトレーニングをすると、すぐに根をあげてしまいます。安心してください。本当にダメなところまで行けば止めますから、さあ、すべての基本はランニングです。走りますよ」
「おっ、おう」

 そうして、怪しげな薬でおかしなテンションになったまま、俺は母さんと村の周りを走り始めた。

 ◇

 疲れを感じないというのは本当らしい。
 三時間ぐらい走り続けているのに疲れも苦しさをもない。
 ただ、全身に痛みを感じる。疲れや苦しさはなくても無理をし続けた体が壊れている。

「そろそろ、限界ですね。【リジェネ】」

 母さんが魔法を使う。
 さきほどから、一定時間ごとに魔法をかけてくれていた。

「オルク、トレーニングというのは、体に負荷を与えて壊して、負荷に適応するように修復することを言います。だから、体が壊れる前に、疲れた、しんどいと、やめてしまわないよう薬で苦痛を感じなくしました。そして、体の修復なんて待ってられないので、自己治癒力を強化する魔法で、壊れた端から治します。これが、フォーランド王家に伝わる秘密特訓法。どんなもやしも、三日三晩、走り続けさえすれば、鍛えられた兵士並の体力になります」
「三日も走るのかよ!?」

 文句を言う俺の口に、母さんが笑顔で怪しげな団子を突っ込んでくる。
 それは、くっそ甘くて、だけど食べると妙に力が湧く。

「ええ、三日三晩は体力づくりです。ついでに精神を限界まで追い詰めて心を鍛えます。一睡もさせませんよ♪」
「いや、ふつうにそろそろ眠いんだが」
「……そうですか。なら」

 背筋が冷たくなる。心臓が爆発したのかのような音を立てて暴れる。怖い、死ぬ、殺される。
 千本の剣を背中に突き立てられたような、巨大なドラゴンが口を開いて追いかけてきているような、確実な死のビジョンがいくつも頭に浮かぶ。

 気が付けば眠気なんて吹き飛び、悲鳴をあげて、足が全力で動く、死にたくない、とにかく逃げないと。
 そんな俺の横に母さんが平然と並ぶ。

「目が覚めましたか?」
「母さん、何をした?」
「ただ、殺気を放っただけですよ。ふふっ、久しぶりですね。母さんの殺気はすごいでしょ? 眠気なんて一瞬で吹き飛びますよ。眠りそうになったり、足を止めようとしたら、こうしてあげますからね」

 怖いわ!
 母さんはいつもだだ甘だが、俺を鍛えるときだけは厳しくなる。心の底から、俺のためにはこれが最善だと考えているのだろう。

 むちゃくちゃやっているが、理屈は正しい気がする。
 こうなれば、やけだ。
 三日三晩、薬を飲んでハイになりながら、壊れる体を無理やり魔法で治して走り続けてやる。

 ◇

 二日たった。もう、テンションがおかしい。薬のせいだけじゃない。
 ランナーズハイを数十倍やばくした感じだ。
 村の周りを走り続ける俺たちを、村のみんなはいぶかし気に見ていた。

「さて、薬で疲れを感じなくとも、体を魔法で癒しても、そろそろ気持ちが折れかけてくるころですね。殺気をぶつけても、心が麻痺しちゃって効きません。わりと限界が近いですね」
「そらっ、そうだろ!? 二日だぞ!」
「あら、突っ込みできる元気があるのは驚きです。はい、お団子食べて」
「……きっちり、一時間に一度与えるこの団子はなんなんだ」
「自己治癒力を魔法で強化しても、肉体を作る材料がないとどうにもならないですからね。体が喜ぶ各種栄養たっぷり、ついでに水分も補給できる、とある大賢者が作ってくれた完全食ですよ」
「大賢者って、どこからそんなの手に入れてるんだ」
「私のお師匠様で、今は子供の成長を肴に盛り上がる飲み仲間です」

 母さんには昔からなぞの付き合いがあった。
 この人はただものじゃない。この無茶な修行も効果は出ているし。
 二日走り続けただけで、身体能力が一回り上昇しているし、体力がつき続けている気がする。

 というか、走り始めたときと比べて走るペースが二倍ぐらいになっているような……母さんのことだ。俺の成長に合わせてペースを上げさせてるのだろう。

「まあ、雑談は置いといて。気持ちが折れかけてるのは最悪ですね。どれだけ効率のいいトレーニングも、やる気がなければ効果ガタ落ちです。やる気を出してください。今すぐ」
「できるかっ!? 薬で疲れなくても、もう飽きたよ。走り続けるだけって苦痛だよ。それに殺気ぶつけられすぎて、もう死んでもいいかなって思ってるよ」
「ふう、しょうがないですね。こういうときは声だしです。いいですか、あなたの目標を思い出してください。そして目標を叫ぶのです。目標を口に出すことでやる気がでます」
「ここに来ていきなり根性論!?」

 今までのトレーニングは不思議と理屈が通っていたのに、戸惑ってしまう。

「精神論も大事です。さあ、オルク。どうしてあなたは強くなりたいんですか? その初心を思い出してください。さあ、私の掛け声に合わせて、あなたの心の叫びを解き放つのです」

 俺の目標。
 そんなのは決まっている。
 初めて会った他種族の可愛い少女たち。
 あの子たちを見たとき、俺の世界は変わった。
 エルフの耳をしゃぶり、キツネ耳少女のしっぽに顔を埋めてくんかくんか、水精族を抱きしめて、黒翼族の羽に包まれる。
 そして、みんなと……。

「では、行きますよ。1、2、はい」
「やりたい!」

 あんな可愛い女の子たちとやりたい。
 毎日愛し合いたい。

「いいですね。テンポをあげますよ」

 気持ちが前に向いてきた気がする。

「1、2」
「やりたい!!」
「1、2」
「やりたい!!」
「1、2」
「やりたい!!」

 走るのが楽しくなってきた。
 力が湧いてくる。
 この一歩一歩があの子たちと愛し合うのに繋がっていると思うと、飽きたとか苦しいとか、もうどうでもよくなっていく。

「その意気です! 1、2」
「やりたいっ!!」
「1、2」
「やりたいっ!!」
「1、2」
「やりたいっ!!」

 俺はひたすら夢を叫ぶ。
 脳内には、夢を叶えた理想の俺の姿が浮かぶ。
 これなら、あと一日ぐらい余裕で耐えられそうだ。

「ああ、お父さんにも今のオルクを見せてあげたいです……私の教育は間違っていなかった」

 母さんがうれし泣きしている。ちょっとだけ照れくさくなった。

 ◇

 そうして、三日目が終わる。

「よく耐えました。これでオルクは最低限修行に耐えうる体力と精神力を手に入れましたね。普通ならこれだけの体力を作るのに三か月はかかりますよ」

 その言葉が耳に入ると同時に崩れ落ちる。
 薬と回復魔術があっても心が疲れ切っていた。
 今は、ひたすら寝たい。

「ふふっ、今はゆっくり眠ってください。一時間三十分ほど」
「いやっ!? 短いよね!?」
「気を全身に緩やかに流しつつ経絡秘孔を刺激することで、一時間三十分の睡眠も、六時間相当にできます。四年しかないので、睡眠も効率よくしないと」

 この人、鬼だ。
 このペースで四年も鍛えたら俺はどうなってしまうのだろうか。
 俺の意識が遠のいていき、瞼が落ちた。
 母さんが俺を持ち上げた。きっとベッドまで運んでいくのだろう。

 ◇

 ベッドで横になっていると、体に暖かい何かが流れてくる。
 これが母さんの言う気を流すという作業だろう。
 気持ちいい。
 しばらくして、人の気配が増えた。父さんだ。

「ヤット、オルク、ツヨクナル、キメタカ」
「ええ、張り切ってくれています。本当に地獄の耐久マラソンをクリアできるとは。さすがは私たちの子です」
「ウム、ツヨクナル。ヨカッタ、コレイジョウ、オソクナルト、マニアワナクナル」
「ですね……この子に流れる血の力をいつまで押さえつけられるかわかりません。今のうちに力を制御するための力を身に付けないと」
「ツヨスギルチカラ、ミヲホロボス。コノコハ、ツヨスギタ。エヴォル・オーク、チカラ、フウインスル、シカナカッタ」

 いったい、何を言っているんだ。
 俺は弱いからこそ、人間の技術を身に付けようとしているのに。

「笑っちゃいますよね。暴走する五歳の子供に魔王と勇者が二人がかりで圧倒されたんですから。この子にすべてを話してあげたい。あなたはちゃんとお父さんの強い力を受け継いでいるって」
「オルク、オレタチノコ、イツカ、チカラ、トキハナチ、ツカイコナス」
「ええ、きっとそう。その日が楽しみです。それと二人きりのときぐらい、そのわざとらしいオークなまり止めませんか? 会話が聞き取り辛いです」
「いや、普段からやっとかないとボロでるだろ? 昔の俺のこと知っている奴って多いしさ。せっかく変装してるのに声とか口調でばれるのってあほらしい。今はしがないオークの村の族長だ。……そうじゃないといけない」
「だから、二人きりのときだけです」

 そうして、父さんと母さんが横でいちゃいちゃし始める。
 今のでこれが夢だと確信した。
 魔王と勇者とか、父さんが流暢に話すとか、こんなことが現実なわけがない。
 夢の中で、寝るというのはおかしいがとにかく寝よう。
 明日も母さんの拷問のような特訓が待っている。
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