05
町の市場に着いて驚いたのはシュリの顔の広さと、慕われ方である。
少し歩けば、店の店主たちが持って行きなと色々と渡してくるし、子供は、また遊んでくれよとせがんでくるのだ。
その歩きようはアイドル……、いや、シュリの場合は城主、もしくは騎士制度の残っている町の騎士団長と言ったところか。
しばらく歩き回った後、休憩する為にシュリのおススメの店に入ることにした。
「旅人のあんたから見て、うちの町はどうだい?」
「いい所です。人々に活気があって衣食住に事欠かず、住むには適していると思います。少なくとも私が今まで回った町では、そうでない所もありましたからね」
「なら、いっそこの町で暮らしてみたらどうだい?なんならうちに就職しちまいなよ!仕事も食事も寝床もあるんだからよ!」
少し困ったような笑顔でナバリは答える。
「旅が終わったら、それも良いかもしれない」
それはきっと自分に向けた言葉なのだろう。
その笑顔からは寂しさ……、諦めだろうか?そういった後ろ向きな感情が見え隠れする。
旅の終わりそれは、彼にとってどのような意味を持つのだろうか?
昨日、彼の言っていた目的地はもしかすると、彼の旅の終わりではなく、通過点に過ぎないのかもしれない。
少し間が空いた所に、店員が注文していた紅茶を運んできた。
「この町では、みんなこうやって紅茶を飲むのですか?」
「そうだな。大体、みんなこうやって飲んでいるよ」
紅茶と共に運ばれてきたのは、ジャムである。どうやら、町ではロシアンティーが親しまれているらしい。
紅茶を飲みながら、また、他愛ない会話を始める。先程までの気まずさを紅茶と共に甘く流していくように。