04
昼過ぎに目が覚めた。
野宿ではないのは、何日ぶりの事だろうか?雨風凌げ、使い古されているがベットが有り、シャワーが使える。人からしたら、それだけの事でと言われてしまいそうだが、それほどの事なのだ。
獣の気配で起きることもなければ、雨にさらされることもない。快適に眠れることは喜びであると言わんばかりに、熟睡してしまったのである。
だが、そんな事を言っては入れないと、なんとかベットを脱出したのが太陽が天辺に上る、昼過ぎの事である。
部屋を出て、すぐに良い臭いが鼻腔を刺激した。
その匂いに釣られて、普段は従業員たちの休憩所にも使われているという、リビングへと向かう。リビングは位置的に厨房の裏に位置している。
「よう、寝坊助やっと起きたか。今、昼飯作ってるけど食べてくか?」
そう言っているシュリは、どう見てもソファーでくつろいでいるだけで、フライパンを振っているのはジュドである。
「お言葉に甘えさせて頂くとしよう」
「待ってな」
シュリはそのまま厨房へと入って行くと、ジュドに追加のオーダーを入れる。
戻ってきたシュリとしばらく談笑して待つっていると。
「昨晩は良く寝れたようだね」
「ええ、お陰様で久しぶりに熟睡できました」
それは良かったと言いながらジュドは、抱えていた大きな皿をテーブルに置いた。残りの数個の皿も置き終えると、二人をテーブルに着かせる。
食事中、今までナバリが旅してきた、町や村の話を聞かせ場を楽しませた。
「そういえば、この後、町を観光でもしてきたらどうかね?そんなに広くは無いが、それなりに見る所はある町だよ」
「いいね。買い出しのついでにあたしが案内してやるよ」
「それはありがたいが、君は仕込みを手伝わなくていいのかい?」
町を案内してくれるというシュリに、仕込などの仕事があるのではと気を使ったナバリに、ジュドが突然、笑い出したのだ。
「ナバリさん、こいつに料理をさせたら、私の店は今日で閉店になってしまいますよ」
食事の後、準備があると部屋へ戻ったシュリを待つ間、ガレージを借りてタイヤの空気圧を一人乗り用から二人乗り用に変更していた。
いつも後部座席は荷物で一杯なため、後部座席が空いているのは、どこか違和感に感じてしまっている。
「お待たせ」
シュリがガレージにひょこっと顔を出す。
先程まで寝起きの様にくしゃくしゃだったは綺麗にまとまっている。
「女性の身支度だし、もっと待たされるかと思っていましたが、意外と早かったですね」
「ちょっと町に行くぐらいならこんなもんだろ」
ガレージへ入ってきたので、その全身が露わとなったが、これはなかなか。
パンツスタイルのカジュアルな出で立ちであるが、顔とスラッとした体格の為だろうか、これ以上着飾る必要が無いと言えるほど、自然体でまとまっている。
口を開かなければ、前に訪れた踊り子の町のトップダンサー達にも引けを取らない見栄えだ。
「よし、じゃあ行くか」
そういうと、どこからかヘルメットを取り出し、被り始める。
それにつられるように、ナバリもグローブとヘルメットを付けた。
ガレージの外までバイクを押し出すと、エンジンをかける。セルスタートもあるが、ココはナバリの拘りで、キックスタートでエンジンに火を入れた。
ドッドッドと二気筒のエンジン独特の気持ちのいい低音が響きだす。
暖気している、うちに出し忘れていたタンデムバーを出して、自分が先に跨り、自分の肩を貸してシュリを後ろに乗せる。
そんなに気温も低くない為、エンジンはすぐに温まり、シュリが乗ったのを確認し町の中心街へ向かい走り始めた。