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歌の旅人はエンジンを奏でる  作者: 秋月諏訪
第一詩
1/7

プロローグ

「さて、今日はここで良いかな?」


 旅人はおもむろに、石畳の歩道の上にバイクのサイドスタンドを下す。


 かなりの距離を走ってきたのであろう、バイクには泥が跳ね乾いて固まっているし、旅人の着ているマントにも埃と排気ガスを浴びたような汚れが目立つ。


 彼は止めたバイクの後部座席に括りつけられた大きめのバックを取り出す。


 そんな旅人を遠巻きに眺めるもの、足を止めず歩き去って行くもなど、歩道を歩く人々が、各々、様子をうかがっているようだ。


 バックから出てきたのは、中華鍋を二つ合わせたような形状の金属製の物で、表面には窪みがいくつかあるが、落として出来たような凹みではなく、意図的に凹ませられているのだろう、その形はまるで円盤型のUFOのようだ。


 まさかここで料理でも始めようというのか?

 いくら田舎者でも人が行きかう路上で、料理など常識が無いどころではない。

 UFOのような物を取り出したバックを路上に置き、自分の膝の上へとそれを載せる。


 彼は手を数度、グー、パーと動かすと、膝の上のそれを叩き出す。


 その見た目からは想像できないような音色が鳴り響く、それはまるでハープやピアノのような弦楽器の澄んだ音と耳を突くような固い打楽器特有の音が同時に鳴りだしたのだ。

 メロディーとリズムを窪み叩くことで表現している。

 包みこんでくれるような優しさの中に、見え隠れする情熱を表現する音を奏でる物。彼が取り出したのは中華鍋なければ、もちろんUFOでもない。それはハングドラムと呼ばれる楽器であった。


 演奏する彼の周りは徐々に人が集まり始めた。彼はそれを待っていましたとばかりに、魔法により火の玉を自分の周りに浮かせる。

 魔法を使った際に彼の被っていたフードが外れ、その中に隠されていた銀髪が現れた。

 彼の銀髪が音色に合わせ七色に色を変える火の玉を映し、演奏の神秘性を際立たせる。


 パフォーマンスも相まってか、道行く人々は彼の目の前に置かれたバックに続々とお金を投げ入れていく。

 彼の演奏が終わる頃には歩道に人だかりが出来ており、人々は彼に対して、割れんばかりの称賛を送った。

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