始まりは雪の中で
「__別れましょう」
雪が降る公園の駐車場に停まる一台の車の中で
助手席に座る俺に向けて彼女はそう言った。
「あ?何て言ったいま?」
「もう、貴方との関係が疲れたの別れましょうって言ったの。」
聞き間違いであって欲しいと俺に彼女は冷たく言い放つ。
なぜだろう……
確かに俺は表のお天道さんに顔向けできるような綺麗な仕事はしてねぇが、愛した女に不満を抱かせるようなことはしてねぇと思ったんだけどな。
「俺のどこが悪かったんだ?治せるようなら治すぞ。」
「貴方は悪くないとは思うのよ。でも、別れたいの。」
まったくもって意味がわからないが、俺の彼女である鬼源 姫華が別れたいと言うならば…それが本望と言うのならば従おう。
「そうか……別れるか。」
「・・・うん。」
思ったよりデかいショックを受けて軽い目まいに襲われたが何とかこらえ、懐に入れてた小さな箱を取り出した。
「別れることになって意味もなくしちまったけど、これを受け取ってくれ。」
今日は姫華と俺がつき合って丁度3年目の夜。
そしてフられて意味が無くなったが、俺が決意して買った姫華へのプレゼントは……
「えっ……これって」
箱を受け取った姫華が開けると、そこにはシンプルだが美しい指輪が一つあった。
そう、婚約指輪だ。
俺は姫華が指輪を確認したところを見届けて車から出た。
「え……あっ、まっ」バタンッ!
姫華が何か言いかけたが、聞きに戻る気はない。
公園の中、白息を吐いて歩いてく。
最後に見た彼女の涙の意味を考えながら