復活、金次郎
「ねえ、どうしたら、友達ってできるの?」
少年は彼を見つめる。
校庭から子供の声が届くが、少年の周りには誰もいなかった。
「卒業するまでに100人の友達なんかできないよ」
少年は彼に投げかねる。
スマホを取り出し、登録しているIDを見る。
一人だけだった。
いつも一緒にいた親友。
二人の共通点は、図書館で本を読むことだった。
でも、その親友は先月転校してしまった。
「さみしいな~」
でも、クラスメイトに無視されているわけではない。
少年はすぐに図書館に閉じこもってしまうのだ。
そこが自分の居場所のように。
「みんなに声をかけてごらん」
彼は少年に優しく言った。
少年はうつむき、モジモジする。
「恥ずかしいよ」
「ナオト君に微笑んでごらん」
彼はアドバイスした。
彼はすべての生徒を把握していた。
ナオトは明るく、好奇心がおうせいだ。
ナオトは少年を興味深げに見つめていた。
少年はにっこり笑う。
その視線の先にナオトがいる。
「こっちに来いよ」
ナオトが少年を呼んだ。
少年がナオトの方に駆けだす。
突然、少年は立ち止まり、振り返る。
大きな声で叫んだ。
「ありがとう、金次郎」
そこには、最近見かけなくなった二宮金次郎像があった。
そこで、プロジェクターの映像が終わった。
「・・・このように、現在の学校問題の大きな2つを解決することができます。
一つは、人とのふれあい方が分からない子供が増えています。
これは、一人でゲームやネットを一人で楽しんでいるからでしょう。
これを手助けるのが」
レーザーポインターを持った長身の男が間を作った。
「我が社の金次郎です。
金次郎は最新AIを搭載し、全校生徒の情報を有しているので、
このように具体的な対策案を提示できます」
学校関係者、教育委員らは浮かない表情だ。
教育委員の一人が指摘する。
「それにしても、2000万円は高いでしょう。
それなら、カウンセラーを増やした方がまだ安い」
「カウンセリング機能だけではございません。
この金次郎は」
長身の男が合図すると、新たな映像が始まった。
「金次郎が金太郎モードに移行します」
校庭に刃物を持った男が現れる。
そして、生徒を追い回す。
男は女の子に刃物を振り下ろした。
ガッチッ。
金次郎は走り出し、いつも持っている本で刃物を受け止めた。
そして、背負ったマキを1本取り、男を打ちすえた。
「暴漢に対し、警備も可能です」
出席者の表情が変わっていく。
「乗用車程度なら受け止めることも可能です。
また、AEDも搭載しており、緊急救命も対応できます」
出席者は皆うなづいた。
落ちたな、と長身の男は思った。