エピローグ
「ここは……」
目を覚ますと、白いものが見えた。
「あ、目を覚まされたのですね。良かった」
白いものが看護師の着ている白衣だと気付くのに、十秒ちょっとかかる。
なぜここにいるのか思い出そうとするも、目を覚ます直前の記憶がなく、妙に頭が痛い。
随分と長い時間どこかを歩き回っていた気がするが、どうにも思い出せない。
くらくらする頭でボーっと天井を見つめながら、俺は看護師に聞いた。
「何で俺、病院にいるんですかね? 全然記憶がないんですけど」
「えーと、驚かないで聞いてほしいのだけど、あなたの乗っていた飛行機が事故に遭ったのよ。着陸直前に操縦が聞かなくなって、そのまま墜落。かなり大きな事故で、あなたともう一人――小さな女の子以外は全員亡くなられて……。まあ今はそこら辺のことは気にしないで、安静にしててね。今はもう大丈夫だけど、一時は本当に危なかったんだから。話しはまた後で、先生が来た時にしましょう」
何やら忙しそうな看護師は、そう言うと足早に病室を出て行った。
静かになった部屋の中を、ぐるりと見まわしてみる。どうやら一人部屋のようだ。俺以外には誰も患者がいない。
小さくため息をつき、目を閉じてベッドに深く凭れる。
しばらくすると、ドアが開く音が聞こえた。音につられて目を開けると、松葉づえをついた一人の少女が歩いてくるのが見えた。
白いドレスを着た、金髪の美少女。背丈からするとまだ十歳にもなっていないように見える。
ぼんやりとする頭で彼女を眺めていると、少女が言った。
「その顔だと、お主もあの館でのことを忘れているようじゃの」
少女の可愛らしさとはそぐわない、変な口調と大人びた声。
なぜか懐かしい気持ちになるも、彼女のことは全く記憶にない。こんな美少女、もし知り合っていたら忘れるなんてあるはずないのに。
「別に気にせんでよいぞ。ヨスガの奴も忘れておったからの。今更驚きはせん。ただ、最後の最後、一番良い所をヨスガに持っていかれてしまったからの。少々出しゃばらせてもらっておる」
何の話をしているのかさっぱり分からない。
しかし、最後まで聞くべきだと本能が告げていた。
「まあ何じゃ。結果としてお主の策がうまくいったからこそ、こうして儂とヨスガは蘇ることができた。気に食わぬところもありはしたが、最後まで儂らを助けるために全力を尽くしていたことに関しては――礼を言っておくべきじゃろう」
金髪の美少女は、それはそれは素敵な笑顔で言った。
「霧切ミスト。私のことを信じてくれて、本当に有難う」
如何だったでしょうか? 『三途の館』というタイトルの割には本編で一度しかその名前が出ませんでしたね。三途の館がどんなものかはこれで皆さん分かっていただけたと思いますし、舞台はそのままにキャラを変えてやってみるのも面白いと思うのですが――どうでしょう?
それはともかく完結です。感想とかメッセージとか送ってくれるとすごく嬉しいです。




